会合で一緒だったという目の前の人、誰だっけ?ってことあるよね。
あれから、数日が過ぎました。その間にいろいろ問題もありました。例えば小山さんと中田さんに「はあ?あれからずっと、どうやって神様を呼ぶか考えていたのに?」「何故すぐに言ってくれないの?」と怒られ、叱られました。
伯母さんからも、伯父さんからも話は伝わっていなかったこともあり、2人で合計2時間ぐらい、グチグチ言われました。
後は、伯父さんにも叱られました。「悪い神様が来たのに、その報告はなしなのか?」って、伯父さんには洗いざらい説明することになり、根掘り葉掘り質問され、結局、私が邪なるもののものになれ?と言われたことも、説明しました。伯父さんと伯母さんだけに。
そして、今日は伯母さんは諸事情でお休みです。何かあったらすぐに電話を寄こすようにと、伯父さんと伯母さんからは、携帯番号を渡されました。そんな日に限って、新しい神様が昼前から6人に以前来た神様一人もやってきて、ワイワイ語り合っています。布袋のおじさま(おじいちゃん)を先頭に、大黒様、恵比寿様、毘沙門様、寿老様、弁才様、福禄様の7神様です。弁才様は胸は少しあるので、女の人だと思いますが、私から見ると、恵比寿様が女性に見えるのですよね。
主にしゃべり方が、お姉様な感じで、「あたしは」みたいな?お化粧もされているようです。でも、怖い感じとかそういうのありません。ちょっと声が野太いですけど。
一方で、弁才様は、一言で言えば男前のスーツ姿です。月組とか星組とか、ああいうのがある歌劇団の男役のような感じで、凜凜しいです。はい。
しゃべり方も、「ちょっと君、オーダー頼んでもいいかな?」キリ(キラリ)って、感じでしょうか?
他は、中高年サラリーマンみたいな感じです。もっと、詳しくですか?そういわれても、弁才様のキャラクターが濃くて、目立たないのです。別々に来られたならきっといろいろ気が付くところがありそうなんですけど。
この7人は仲良しなのか、会合を時々しているみたいです。普段は神域でやっている見たいですけど、今回は布袋様が童のいるお店があると皆に話し、ここでやることになったみたいなのです。そういえば、童がいると神様繋がりがあることがばれちゃうんですよ。だから、これからもどんどん神様がやってくることが確定しています。面倒なことがなければ良いのですが……。昔言っていた隠すとかはもう出来ません。
私は、来店された直後、布袋様を手招きして会合が終わったら、ご相談したいことがあるから時間を作ってくださいと、お願いしました。
「ほう?」
と目を細めた後で、
「童が増えた原因か何かかのう?」
と、あごに手を当てます。
「構わんよ。後で少し時間を作ろう。」
と快く相談に応じてくれました。
七福神の皆さまは、結構な量のケーキや軽食を注文してくれました。まこ、ぬいの妹2人の接客を気に入って貰えたのも大きなポイントみたいです。それに、ミイを大黒様が気に入って撫でていました。
カリトは相変わらず私の側から離れませんが、最近は踏み台を使っての、お皿荒い担当を任せています。クイナは、料理担当です。コーヒー担当だと、味が天気などで変わることに気がつきました。だから、味の影響が少ない料理担当になりました。
完全に、このお店は子供カフェあおばです。良いのか悪いのか、4人の童が入ってからというもの、タバコを吸うお客さんもいなくなりました。でも、常連さんはそれでも来てくれます。有り難いことです。心配なのは、2人ほど借りているので、慣れてしまうと、帰ってしまった時に、苦労しそうということです。
会合が終わったのは、午後2時半頃でした。お客さんが少ない時間帯でちょうどよかったです。
「ありがとうございました。」
と4人の神様が帰っていきました。そして、残ったのは3人の神様です。男前弁才様と、おね恵比寿様と布袋様でした。カウンター席に三人はやってくると、
弁才様が、
「それで、布袋から聞いたんだが、何か相談があるそうじゃないか?よければ僕たちにも聞かせて貰えないかい?お姉さん。」
と、本当に歌劇団の男役の人みたいに、滑舌のよい通る声で私に聞いてきました。両手を少し広げる仕草は必要なんでしょうか?
「ちょっとぉ、弁ちゃん、あおちゃんが困っているじゃないのよ。」
と、おね恵比寿様が、男前弁才様をやんわりと諭しています。
そうそう私の名前は、あおばではありませんけど、面倒なのでスルーします。
そこに一歩遅れて布袋様が、やってきて、
「すまないのう。こやつらが、先ほどの話を聞いてしもうて、嬢ちゃんが困るかもしれんんから帰るようにいったんじゃが、この始末じゃ。本当にすまない。嬢ちゃん。」
と、頭を下げられます。
「いえ、大丈夫です。むしろ、沢山の神様に相談した方が分かるかも知れませんし……」
と私が恐縮しながら答えると、
「あら、なかなか話が分かる良い子じゃない。良いわ、何でも言って。」
と、おね恵比寿様は椅子に座ります。
「内容にもよるがな。知恵なら僕でも、貸せるだろう。」
と男前弁才様もおね恵比寿様の左に座ります。
「お主らは、本当に謙遜を知らぬのぅ。」
と目頭を押さえて、布袋様が男前弁財天様の左に座ります。
私は、とりあえずアイスコーヒーを3人にサービスして、ハナさんの話をします。
「今うちの店にいる。この二人の童はハナさんという神様から借りた神様です。」
と、私はクイナとカリトを私の側に連れてきます。
「そうなの?だから?」
「よく分からないな?それがどうかしたのか?」
「そうか?それはなおびの遣わしたものではないのじゃな」
と3人の神様が反応します。私は、他の二人の神様の質問には答えずに、布袋様に
「はいそうです。」
と答えます。
「何よ。ほっちゃんどういうこと。教えてよ。ずる~い。」
「僕たちにも理解できるように、教えてくれないかな?お姉さん。」
と二人の外野神様に言われますが、布袋様は
「お主らは、勝手に残ったんじゃろ。静かに聞いておればよい。すまぬなお嬢ちゃん。続けてくれ」
と布袋様は、二人頭をパン、パンと叩き、私に続きを促します。
「それで、実を言えばこの二人の遣えていた本来の神様が、実は今、奥の部屋で何日も眠っているのです――」
と私が、一呼吸おいて続きを喋る前に、おね恵比寿様が
「あら、休暇?良いわね?ハナって誰?弁ちゃんだれだと思う?」
というと、男前弁才様が、髪をかき上げて、
「ちょっと、静かにしないか、恵比寿君。何日もは僕たちも寝たりしないだろう。」
と言いました。
「そうじゃな、その神が眠った原因は何じゃ?」
と布袋様は言いました。
「それは――」「元神様に、やられたんだ。」
と私が喋る前に、ぬいが悲しそうに答えました。私がそれに補足する前に、
「元神様って何?」「神がやったのか?」
と、二人の神様が立ち上がります。それを、布袋様が神力を出してか、抑えます。二人の神様は座ります。私は、ぬいに喋らないようにと目線で合図を送ります。
「邪なるものというのはご存じですか?」
と神様三人に聞きます。
「よこしまなる?そんな子いたかしら?」
とおね恵比寿様。
「邪なるものと言えば、神々の病だね。厄介な病気だよ。」
と、男前弁才様。
「それに、やられたか?」
と布袋様。
「ハナさんは、邪なるものになりかけの豊穣の神様を、介錯するはずでした。でも、――」
「「大方、邪が途中で神を乗っ取った(の)か?」」と布袋様と( )の弁才様の声が重なります。
私は、頷きます。それを見て、おね恵比寿様が
「ちょっと、私も何となくそんな気がしていたわよ。って言うかみんなずるい~。私も混ぜてぇ。」
って面倒くさい神様です。
「お腹を黒い手で殴られて、からずっと気を失ったままなのです。何か、目を覚ます方法はありませんか?」
と私が訊ねると、突然おね恵比寿様が、
「それは、難しいわよ。」
と答えました。私が、おね恵比寿様……恵比寿様の顔を見ると真剣な顔になっていました。私はゴクリと唾を飲みます。
「それは、どうしてだい?恵比寿君」
と弁才様が体をおね恵比寿様の方に向け、左手の平を上に向けて、前に出して答えます演技なしでは語れないようです。
「私も受けたことがあるからよ。それを。」
と、恵比寿様。
「ほう。それなら戻る方法も知っておるじゃろ?」
と布袋様。
「知っているわよ。でも、それに私達では、戻すこともできないわよ。だって、邪なるものを消さない限り、そのままですもの。」
と恵比寿様は言いました。
恵比寿様曰く、黒い力は穢れた神力のようなものだそうです。それを神様が受けた場合、神力の量が邪なるものより下回る神様の場合は、神様の意識を絡み取られ、骸(むくろ)になるそうです。上回っていれば、ただ痛いだけだそうです。
元々の意識は、邪なるものの中に入るらしいです。経験者曰く、邪なるものが行っている行動を見たり聞いたりできるとか?だから、そうなるじゃないかって予想です。
そして、布袋様と弁才様曰く、ハナさんが刈り取られたのは、神力が足りなかったためだろうということです。ハナさんは邪なるものになってしまった豊穣の神様より、少なかったのです。心配なのは、もしかするとよい神様の部分が、今回の介錯で先に消えている可能性があるという点です。
もしそうだとしたら、きっとよほど強い神様が介錯しないと、難しいらしいです。
「完全体よ。完全体。本屋さんの漫画で見たけど。玉を集めて願いを叶えるあれよ。倒すには、きっとスーパー神様にならないと無理よ。」
って、先ほどまでの真剣な顔から、一転し、おかま、ごほんごほん、おね恵比寿様が興奮した様子で、言っていました。この神、ちょっとゆりちゃんぽいところがあります。
「すまないな、お姉さん。恵比寿君はこういう残念な性格なんだ。シリアスと真面目は5分も持たない。」
と、手を少し広げたり、胸に手を当てたりしながら、オーバーアクションで、男前というかやっぱり残念に見えてきた、弁財様が言います。
それを見て、
「はぁ」
とため息をつく布袋様。布袋様は二人の神様にはもう触れずに言います。
「私が見てもどうにもならんじゃろうが、一応、その眠る神を見せて貰ってもよいかの?」
私は、3人を部屋に案内し、見て貰ったのですが、方法は見つかりませんでした。
「ヒメがこれだから、私達じゃ邪なるものを何とかするのは無理ね。」
「そうじゃの。やるには神力が足りぬ。」
「マイレディー、お役に立てなくて申し訳ない。」
と3人の神様は帰って行きました。実は3人の神様には童でも寄こそうか?と言われたのです。でも、これ以上童が増えると、困るのでお断りしました。解決策もありませんしね。食費も思ったより高く付いていますから。
ところで、ハナさんのことを、ヒメって呼ぶのはどうしてなのでしょうか?
私は、それを3人に聞いてみたのですが、
「あなたは、絶対にヒメって呼んじゃダメよ。あと聞くのもダメ。あの子、下の子にヒメって呼ばれるの嫌がってるから。」
と、ウィンクをして、
「私らは良いんじゃ。嬢ちゃんは知らぬ方が幸せじゃよ。」
と優しいおじいちゃん顔で、
「僕としても、言いたいのは山々なんだが、これも君のためだ。許しておくれ。」
って、立ち上がったり、しゃがんだりの振り付け付きで言われたのでした。
3人が去った後、まこは
「お姉様。弁天様はお兄様なのですか?それともお姉様ですか?」
と質問されました。どうも接客中に、お兄さんと呼んでくれたまえと言われたそうです。でも周りの神様はお姉様か、おばさんだろうと言われていたようです。
そして、ぬいには、
「姉貴、さっき姉貴が小さい声でいってた、おね恵比寿様って何だ?」
と質問されました。




