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休日というのは、休めていないようでも休めているものです。

「ハッ。」

羽織っていた少し厚手のタオルケットを、バサッという音が聞こえるほどの勢いで捲って目が覚めました。昨夜は、ミイと午前0時頃まで、夏に海に行こうかという話をしていました。だから、海の夢を見たようです。私は恐る恐る現場を見ます。よかった。セーフです。

しかし、私の右足元にそれなりの染みが出来ていました。

その一カ所だけではなく、もう一カ所ありましたが、誰の失敗なのかは、名誉のために言いません。そして、今日の天気は雨です。時間も時間なので、その2人を起こして、着替えさせ、汚れた衣類とシーツは洗濯しました。布団は、除菌スプレーをしてから部屋干しです。今日は土曜だし、布団乾燥機でも買いに行こうかな?ていうか、なんで私の布団と、敷き布団と布団の間でするかな~、と思いながら、ふとハナさんのことが気になりました。


心配になった私は、ハナさんの部屋に行ったのは秘密です。どうもハナさんは、眠っている訳では無いようで、その心配はありませんでした。神様は仕組みが違うのかもしれません。何となくそんなふうに納得して、朝食の準備です。そろそろ2人も起きてくるはずです。

「おはようございますですー。お姉様。」

「おはよう。オーナー。顔、洗った、ごはん。」

と残りの2人が起きてきたところで、朝食です。何か言いましたか?名誉はどこ行った?いや、この2人が後に起きてきたとは限らないでしょう。それに名前は出していませんから、もしかしたら真似をしているのかもしれません。ウチには変化が出来る子もいるんですから……。


まあ、そんな感じで、お休みだというのにちょっとしたアクシデントに見舞われた朝を終えて、買い物にというところで、問題に気が付きました。まず、今日の4人の中には、家に残りたいという子がいない気がします。それなのに4人乗りの軽自動車では1人は必ず残らないといけません。

もう一つは、眠っているハナさんを置いて出かけるというのはいろいろ問題があります。目が覚めたらどうなるか?もし何かあったときに誰もいないのは心配です。


私は、伯母さんに電話をして、車を借りようかとおもったところで、クイナが

「私、残る。」

と言い出しました。

「どうして?大丈夫?」

と訊ねると、

「私、主、守る。大丈夫。」

と立派な一言。クイナは今は私の下に付いていますが、あくまで仮で、借りものなのです。ハナさんのお遣い童ですから、残って守りたいようです。私は、許可を出しました。

一方で、カリトは私に付いてくるようです。

「カリトは残らなくて良いの?」

と聞くと、

「僕は、付いてく」

と言いました。

「付いてくるのはいいけど、勝手に離れたらダメだからね。」

と私は、釘を刺します。

「分かってるよ。」

と、カリトは少しはにかんで答えるのでした。こんな4日間でこんな純粋にはにかむカリトの顔は初めてでした。誰か来ても、外には出ないこと、電話がなっても出ないことと、お昼までには帰ってくるとクイナとミイに言い残して、私は買い物と問屋さん巡りに出かけるのでした。


いつもの、取引先は、今日は土曜日ですから、まこを接待する事務員さんはお休みです。まこは、残念そうな顔をしていましたが、いつも担当する事務員さんとは別の、若いお姉さんがまことぬいを歓迎してくれました。ただ、カリトはその歓迎に目もくれず、私の横にちょこんと座って、私と社長さんの話を聞いていました。

ぬいは、まこが新しいお菓子を貰う度に、自分も貰っては、こっちに戻ってきていました。この子は、食い意地が張っているので、まこの4倍の早さで、まこの3倍ぐらいの量を食べます。

「これも食べるですー」

「いいよーいいよー。」

と言われて、そこにぬいが「あ、私も」といって食べに行くのです。それが、終わったら、戻ってきて、商談を聞いています。

まあ、結局ちょろちょろ煩いので、

「ぬい。お菓子食べたいならあっちにいなさい。もう食べないなら、ここでじっとしていて。」

と私に言われると、しぶしぶあちらの席に移っていきました。

「カリトは良いの?」

と聞くと、

「僕は、食べません。」

と言って私と社長さんの材料や金額の話をひたすら聞いていました。

それにしても、ちらりと横を見たときのあの2人の食べっぷり大丈夫でしょうか?

私が、

「ぬい、まこ、もう止めたら。お茶請け全部食べたらご迷惑でしょう。」

と言うと、

「いえいえ、良いんですよ。」

なんて言われてますけど、きっと迷惑ですよね。だから、

「お昼ご飯残したら、3時のおやつは抜きね。」

とだけ、脅しておきました。効果は覿面でしたが、結局お土産に貰って帰ることになりました。なんか、今日はウチからでる利益より、お菓子代の方が高いんじゃないかと心配になるほど貰ってしまいました。どうも3人いたということで、多めに貰ったようです。


その後は、家の買い物です。3日分+αの自宅の食材を買いますが、今回はまこ、ぬい、カリト、クイナ、みいと私の6人分に、もしもハナさんが目覚めたらの+αが入っています。その前に安い布団乾燥機と、もうないと思いますが念のために、防水シーツを買いました。痛い出費です。


そして、食材の購入です。

二人っきりになっていた先日は、「何が食べたい?」とか質問したり、これは何?という質問に答えたりしながら、仲良く買い物をしていましたけど、今日はぬいがいた最初の頃のまこに戻っています。先にどんどん進んで、試食コーナーで何か食べて、

「お姉様、あれ美味しかったですー。」

と目をキラキラさせながら言うのです。

「そう。よかったね。」

としか、言いません。ウィンナーソーセージなんて、ウチにも冷凍庫にありますし、ちょっと今日のお値段高いですし、この商品いつものよりワンランク上ですから、買う予定はありません。どうも、今日の姿を見る限り、しっかり者のお姉さんメッキが剥がれ掛かっているような気がします。


その一方で、カリトは私の、服を掴んで離れません。

ぬいは、まこが昔の調子に戻りつつあることに、呆れているのか?楽しんでいるのか?ニヤニヤしながら、

「まこ、先に勝手に行くな。迷子になるぞ。」

と注意しています。


そして、食料品を買い揃える合間にまこは、

「お姉様、あっち良いですか?」

と、聞いてきます。まこと二人の時にいつもよっていたお菓子コーナーです。

毎回、来ると1つか2つ買うことが許されます。

「良いけど、3人1つずつだよ。それから3人でクイナの分も1つ選んでね」

と私は伝えます。妹2人はすぐに探し始めましたが、カリトはやはり動きません。

そういえば、この子は昨日からずっと私の側にいます。私は、屈んでカリトに聞きます。

「カリトもお菓子選んで。」

と言うと、カリトは

「いい。いらないよ」

と言うので、

「じゃあ、一緒に選ぼうか?」

と訊ね。頷くカリトと2人でお菓子を選ぶのでした。

ちなみに、まこは最近グミにはまっています。カリトはスナック菓子、ぬいはとにかく質より量で、大袋のバラエティーパックのウェハースチョコです。これにクイナ分の大袋に入ったケーキ風のお菓子を選びます。

後は、アイスや飲み物のコーナーを回って、ファミリーセットのアイスクリームを買って、レジに行きます。結局カリトは、ずっと私の側から離れませんでした。これって、一昨日の話の後に起きた、昨日の邪なるものが効いているんでしょうね。きっと、いろいろ恐れているような気がします。

間で、トイレに行くのにも、外で待っているというのに、「ついてきて下さい」っていうぐらいでした。結局、見た目男の子に見えるボーイッシュなぬいが、一緒について行きました。一昨日の話がなければ、もう少し違ったのかもしれません。自分に自信がなくなった上に、怖い思いをしたので、誰かに側にいて確認して欲しいのと怖いの一緒になっているのでしょう。


今日の荷物は、これまでの2倍を超え、車に戻って4人と荷物が載ると、助手席や後部座席の足下まで荷物でいっぱいでした。そして、帰り道は、ゴーというほど土砂降りの中を、恐る恐る運転して帰りました。大雨に怯えたのか?車の中では、

「お姉様、凄い雨ですー。大丈夫ですか」とまこ。

「姉貴、家に帰ったら奴がいたりしないよなぁ?」とぬい。

「……大丈夫ですよね。ね。」と本当に祈るようなカリト。

という状態にもなりました。だから、最近まこが覚えた童謡、「手のひらを太陽に」を歌わせて、合唱ながら家に帰りました。


さて、自宅に着いて土砂降りの中を荷物を4往復して家に運ぶと、ずぶ濡れになります。その間も、やっぱり1人私の側から離れたがらない子がいたので大変でした。だって、

「家に入っていて」

といっても、戻ってくる上に、私が走って荷物を車から出し、家に運ぶの往復に付いてこようとするので、邪魔なんですよ。しかも、滑って転んでるし。そういう時に、すりむいたりといった怪我はしないというのが、童のよいところです。痛みはあるようで泣いてしまいます。私の方が泣きたいんですけど。

結局、先に家に上がって、体を拭いていたまことぬいに預けました。


終わったら、着替えて、クイナに何もなかったか聞きます。最初に返ってきたのは、

「雨、怖い。」

でした。心細かったようで、ハナさんの寝ている布団に、一緒に潜っていたようです。布団が少し乱れていました。


さて、それが終わったらお昼ご飯の準備です。

今日は、インスタントラーメンに、コーンの缶詰と、もやしなどをトッピング。5袋入りが一度でなくなり、それでも足りないと予想していたぬいのスープにご飯を入れるという食べ方。これなら、大食らいでエンゲル係数が高いぬいでも満足できます。いや、小食のまこは一人分どころか、3時のおやつのために、苦しみながら食べたというのに。凄い食欲です。


お昼からは、布団乾燥機で、お布団の乾燥×3枚をしながら、自由時間です。まこはお絵かきをしています。庭の見える窓から、手入れをしていない庭の雨に濡れる草花でも書いているのでしょうか?外を見ながら、お絵かき中です。

ぬいは、家にある本を読んでいます。言葉遣いと、少しがさつなところがなければ、しっかり者で、本当に非の打ち所がないほど優秀です。豊穣の神様に遣えていたころの、イメージがこういうところで見えてきます。

クイナは、ハナさんの側で、私が先ほど教えた1人あやとりを完璧にこなしています。何が面白いのか、よく分かりませんが、気に入ったようです。ちょっとスマホで調べた、あやとりの動画も見せたら、全部覚えていました。

カリトは、先ほど転けてから、まこやぬいに、預けた辺りから、やっと1人で部屋をうろうろするようになりました。行動範囲は私が見える範囲ですけど。邪なるもの問題で、途中で終わったビデオの続きを見ています。


そして、私は、ミイと遊んでいたのですが、目が覚めたら1時間40分ぐらい時間が経過していました。寝てしまったようです。布団乾燥機の相手を変更しに行き、そろそろおやつタイムです。ぬいに急かされ、おやつを食べ、今日の夕飯は何にしようかなぁ?

「ぬいは何が食べたい」

と聞くと、「ラーメン」と答えます。それは昼のメニューです。

すると、まこが

「ウィンナーですー。」と答えます。それは、家にもまだあるから、また今度といった当て付けか、あるかどうかの確認でしょうか?

とりあえず、参考になりそうなメニューもないので、適当に考えます。

そして、考えながら部屋干しの洗濯物で薄手の乾いたものを畳みます。こういう時にクイナが役立ちます。タオルなど決まったものなら、凄い早さで綺麗に畳んでくれます。


それが終わったら、夕食の準備です。今日は結局、ウィンナーとジャガイモとにんじんの塩こしょう炒めと、生姜焼き、キャベツ添え、ご飯というメニューになりました。

まこ曰く、

「ウィンナーがないです。」

と文句を言っていました。一本丸ごと入っていて欲しかったようで、食べやすい大きさに刻んだウィンナーは、ウィンナーじゃないと言われ、食べないとまで、言っていましたが、

「じゃあ、今日の夕食、まこの分をぬいが食べていいんだ?」

と言うと、喜ぶぬいに対して、まこは

「ダメですー。食べます。食べますけどぉ」

と、拗ねてました。その後はぬいと、恒例の言い合いでした。


夕食の準備をしながら、お風呂の準備。私はシャワーでも良いですけど、4人の童がいるので、お風呂は必ず準備します。

そして、ご飯を皆で食べます。食事前にはウィンナーがと言っていたまこも、ぬいと口喧嘩をしたことで忘れたようで、食事は普通に文句もなく食べていました。

その後後片付けは妹達とカリトと一緒にします。クイナは、ハナさんの様子を見に行き、それが終わったら、皆でお風呂に入ります。


そして、トイレに4人を連れて行き、寝かしつけに絵本を読みます。

今日はなかなか寝なかったので、1時間半ほど掛けて、寝かしつけ。間にもう一回2人をトイレに連れて行って、一日は終了です。


私は、いつものようにミイを連れて、愚痴タイムです。今日は疲れました。

なんか休みの日なのに、休みじゃないような気がします。仕事の日の方が楽な気がするのは気のせいでしょうか?何となく、一日が子守になっている気がします。最初の頃は、二人いると確かに大変でしたけど、ちょっと距離があり遠慮もあったので、私の時間が結構あったんですよ。食事も、3人で作ったり外食したりしてましたし。


それが、まこと二人になってからは、二人で協力するようになって、共有時間が増えましたけど、一人の時間もお互いにありました。


そして、今日のお休みは、朝から昼過ぎまでずっと、若干一名が私の側にいました。それだけではなく、実はぬいも今日は一人行動を避けている印象がありました。気が付いたら私が見える場所にいて、私がいないときはまこの側にいたのではないかと思います。

ぬいとまこは、元々性格が少し違うので、外に出歩くと、二人の距離が気が付いたら離れていることも多かったのです。今回は何度か、ぬいがまこが呼び戻していました。まあ、3人がバラバラに散らばるよりいいんですけど、自分一人の時間がないのは、ちょっと辛いかもしれません。


私は、ミイに愚痴ります。

「ミイ、私の自由時間がなくなってない?」

ミイは何も答えません。

「あの子達私の子じゃないんだけど。このまま、4人がいるのはちょっと辛いかも……」

って言ってみます。

「みいぁ」

とミイが答えます。最近ミイの言葉が分かる気がするのです。今は、だから?どうなってほしいの。って聞いている気がします。気がするだけですよ。

「どうなって欲しいと言われても、どうして欲しいんだろう私」

「ミャー」

今度は、帰って欲しい?と聞いているような。

「それは、ちょっとね。……だってミイのお世話してくれるまこも居なくなるよ?」

と私は、ミイに聞いてみます。

「にゃあ」

今度は、僕は別にどっちでもいいと言っているような気がします。

「ミャア」

だから、神域に帰しても良いじゃないかって?

「それは、やっぱり困る。」

と私は言います。

「にゃあ」

「どうしてって……」

私は、その晩、ミイとの愚痴タイムを早めに切り上げて布団に入りました。寝室に入ると、ぬいが起きていました。

「あねきぃ」

と、ちょっと泣き顔です。

「どうした?怖い夢でも見た?」

とぬいの側によると、抱きついてきました。話を聞くと、邪なるものの夢を見たようです。そして、「あねき・・・お姉様は、邪のところにいったりしないよね?」

と言うのです。いつものがさつな言葉遣いとは違って、本当に心から喋っているようでした。そして、ぬいには、邪なるものが私の耳元でささやいたあの言葉が聞こえていたようです。

「大丈夫、行かないよ。」

と私は答えるのでした。ぬいが、寝付くまで背中をトントンしながら、私は頭の中で、邪なるものが私に言った言葉と、ぬいが言った言葉の両方をリピートしていました。私は、今日一日、この子達の、世話に明け暮れたことで、この不安感を忘れていました。今日は、紛れもなく私にとって心の休養日だったのだと気が付きました。


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