直からのプレゼント
今日は、朝から弟君神様こと直君と対面しています。穢れを祓う神様らしいけど、見た目は普通の小学校高学年ぐらいの少し童顔で生意気そうな少年です。ちょっと可愛い感じ。何度も言うけど、私は決してショタじゃないからね。絶対、本当だよ。どっちかというと、一号おじさま (ミチさん)の方がタイプなんだからねって、いやそういう意味じゃないから、どっちか、2択と言・わ・れ・た・ら・だからね。
ごほん。まあ、それはこっちに置きます。ちょっと、そこのあなた、置いたものを覗かないでください。こらっ戻そうとしない。って、使ってみたかっただけです。すみません。今ちょっとテンションがおかしいのです。これが神力にあてられるということだと思います。
目の前の直君は、今日はコーヒーでは無くオレンジジュースです。前回初めて飲んだアメリカンのコーヒーは砂糖を入れても苦かったらしい。背伸びしちゃうその辺りがまたいい・・ごほん、ごほん。正気を保て、ショウキ、しょうき。
それで、今日は謝罪を受けた後で、直君の話を聞いているのです。こんな形だけど、直君は古くからいる神様の一人で凄い神力の使い手らしいのです。だから、全国どこにでも瞬時に飛んでいけるらしいのですよ。しかも、どの神様とも連絡がすぐに取れるとか。すご~いと思うでしょう。お仕事も楽勝じゃんと……でも、それがそうじゃないらしいのです。それはどうしてかって?
直君曰く、
「俗世でもスマートフォンとか携帯電話ってあるだろ。」
私は「はい。」と答えます。以下直君、私の順です。
「あれ便利だよな。」「はいそうですね。」「この店が電話で注文を受ける店だとするよ。携帯電話で受けるんだ注文を。」「はい」「年中無休で絶対に着信拒否は出来ない仕事だとすると、どうよ?」「それは流石に嫌ですね」「そうだろう?その状況」「でも今はここで休んでいるじゃないですか?」「そう見えるだろう。俺の手を見て。」「はい?」私は直君のつきだした右手を見ます。「何か見えないか?」「う~ん……みえな……おや?」よくよく見ると、手のひらとか、腕から何か湯気のような光の粒のようなものが出ているようです。
「はい何か光のようなものが出ています。」と私が言うと、
「よしっ」といって、今度は反対の腕も見せられました。今度は右とは違って何か光が戻ってきているように見えます。
「おれは、今この瞬間も多くの願いを聞いて、それを叶えるために神力を使って、おれの一部をそこに飛ばしている訳さ。そして、叶えたら戻すを繰り返す。ただ、神力を通すにも定期的に道の整備が必要なんだ。だから、飛び回っているというわけさ」
「ほう、おぬしもなかなかやりますな~」と、私がニヤニヤ答えると。
直君は「なんだ?それ」と冷めた目つきで見られてしまいました。うっ。そんな冷たい目も可愛い。一人っ子じゃ無く、こんな弟が欲しかったのです。
私は、カウンターから出て直君の側に行き、頭を強く撫でて……。
「おい止めろよ……」
「はっ、いかん。」
何故か、直君を見ると止め処なく愛でてしまいたい欲求に駆られてしまいます。
「お前の前で神力を見せるのは止めた方が良いな。お前の目つきが怖くなるよ。」
どうも、私は直君の神力に当てられたようです。私は、少ししょぼんとして、キッチン側に戻ります。
「そうだ。直君に質問しても良いですか?」
「なおくん?って何だよ。」
「えっ?ミチさんが直っていましたけど、違いましたか?」
「いや間違ってはいないけど。そういう意味じゃなく、何で君なんだよ。」
そう言われて私は、カウンター越しに直君を見る。どうみても直君だと思うが?
「う~ん、直ちゃんじゃないし?直ちゃんが良かった?」
直君は肩をすくめて諦めたような表情で、ぶっきらぼうな感じで、
「ああ、もう良いよ。で何?」と言います。
「何か態度わるくない?私変な事いいましたか?」
「それは神力が抜けたら分かる。後で泣け!で、何だよ。」
「まあ、良いか。あのですね。クシさんはどんな人なんですか。」
私は真剣に直君に質問すると、直君も表情を変えて答えます。
「ああ、クッシーのことか?慈愛とか恋愛の神として見る人が多いよな。でも、あいつは結構ずぼらで気分屋だ。計算高いところもあって、まああいつを一人にすると、いろいろ問題があるんだよ。そして、一人逃げ出すのがうまいから、姐御――ハナが捕まえる担当になってる。一度逃げ出すと、3日ぐらい帰らないからなあいつ。」
何か嫌な話を聞いた気がします。
「これってウチの店に来ると、3日ぐらい居座るってことですよね?」
すると、直君は目をそらして、一言。
「そういや、お前のことをあいつは知っているようだったけど。」
話を変えやがりましたよ。この少年、私は平静を装って答えます。
「はい、私がここに来て最初に接客したお客さん第一号です。」
と言うと、直君が?マークを頭に浮かべて質問する。
「確か、ミッチーがここのお客第一号じゃなかったか?モウがそう言ってたような?」
「それは、新装開店してからの第一号ですよ。その前、祖母の代に初めて接客したのが、クシさんです。子供の頃のことなので、来られた時は忘れてましたけど。」
と私が伝えます。
「ははーん。それでか……ふむふむ。」
何か直君が薄ら笑いを浮かべています。
「そうだ。じゃあ、あいつが来る前に、一つ対策を用意しておこう。ちょっと面白そうだし…」
たいさく、大作、対策?対策か?面白そうというのが気になりますが、何かくれるようです。
「対策?」
私の疑問系に、直君は悪ガキのような笑みを浮かべます。
「ああ、あいつはあんたと此処がやたらお気に入りだからな。仕事をさぼって足を運んでくるはずなんだ。しかも、あんたはあいつに甘そうだから、あいつには勝てないかもしれねえ。たぶん、今回はたいそうご執心のようだから、姐御が来るまで、最長一週間は無理だろう。そんなに居座られると困るだろう?」
もちろん、そんなのは困るので、私は強くうなずきます。
「そこで、対策を用意する。これは、俺の持つ力でね。」
直君は、自分の両手をおにぎりを握るような形で握ります。1秒か2秒ほど光が手の間から漏れたあと、手を、開くとそこにはシルバーのネックレスがありました。ネックレスの先端には細長く丸みを帯びた水色の石がはめ込まれています。ガラスとも、宝石とも違いその石の中には、小さな光の粒がゆらゆらと漂っているように見えました。
「これをやるよ。身につけておくといい。クッシーが、来て居座りそうならそれを、強く握って帰って欲しいと願えば良い。それだけで、いいことがあるからよ。仕事の時は外すなよ。それから、力が発動した段階からそれはお前のものになるから。俺が権限を戻さない限りな。それを忘れるなよ。」
私にネックレスを渡すと、コーヒーならぬ、ジュースブレイクを終えた直君は、お金をカウンターに置くと、そう言いながら立ち上がります。
そんな帰宅モードの直君を、私は呼び止めます。
「ちょっと待って?」
直君は、こちらに振り返らずに、右手を挙げて、「お礼もおつりもいらねえよ。」と言っています。
「そうじゃなくて、オレンジジュースとフルーツサンドのセットは600円じゃなくて750円です。150円足りません。」
と私が言うと、直君はずっこけていました。ちょっと涙目で恥ずかしそうに150円をカウンターに置くと、逃げ出すように、去って行きました。うんこれはこれで、ごちそうさまでした。
私は神様から、加護のネックレス(水色)を手に入れた。テレテテッテテ-。
効果:駄女神がお店に居座るのを防ぐ。
ステータス
攻撃力・0
防御力・0
神力 ・100
神力抵抗・100
備考:弟からのプレゼント。
って――「はっ!」私は何を、左手を腰に当て、右手でネックレスを頭の上にぴーんと掲げた姿勢で、私は我に返りました。私は一体何を、弟って……。誰もいないお店だったことが、幸いしましたが、それでも赤面し、直君が言ったとおり、恥ずかしさに涙目になるのでした。それから、言っときますけど、ステータスとか、私には見えないですから、これは学生時代にオタク研究会だった元同僚が、こんなことを言ったな~って感じで考えただけですから~~~。シクシク。
どうも直が来ると、テンションがおかしくなるようです。これが、強い神力のなす技なのかもしれません。良いですかみなさん。私はショタではありません。断じて絶対に。これは、神力のせいです。そこで笑ってる読者共!、あなたも直の前に立てばそうなるんだからね。はいはい、じゃないから……。
この流れも、神力の影響なのだと気が付くまでにさらに1時間掛かりました。どうも、神様から浴びる神力は多く晒された後に、急に減少するとその反動も起きるようです。皆さん、もし神様と会話をすることがあったなら、気をつけて下さいね。
そんな具合で、その日から私は、加護のネックレス(水色・仮)を、仕事中は身につけることにしました。直君は結構優しいな何て思ったりもしてね。そして、もしクシさんがやって来ても、すぐに使えるように。ただ、接客業ですから実際にはベストの下に隠れるようにしました。外れて落ちたり、食べ物の中に入ったら大変です。
でも、私はこの後の流れを全く理解していませんでした。直君が言った言葉の意味も、ちょっと前にハナさんが教えてくれた神様に関する話の意味も、これが分かっていたらきっと私は……