子供の昼寝は計画的に。
その日の夜は、まこが夕方に昼寝を取ってしまったため、遅くまで寝てくれませんでした。一方で私は、夜、10時前には気疲れもあり、ウトウト。その都度まこに
「先に寝ちゃ駄目ですー。」
と、何度も何度も起こされました。どうも、神様襲撃事件後、ぬいが居なくなってから、夜が怖いようです。本人に聞いても、
「怖くないですよー。」
といいますが、怖くなければ、自分の布団で寝てくれませんか?まこさん。
そんな、昨夜は結局深夜23時~0時頃まで、寝ては起こされ、起こされては寝ての状態でした。
そして、まこが寝静まった後に、私は目が冴えてしまいました。その結果、考え事や今日の総括を頭の中でしながら、眠くなるのを待ちました。私もそんな時代があったのでしょうか?寝付きのよい聞き分けのよい子だったはずですよね。おばあちゃん、孝行してあげられなくてゴメンね。そして、世のお母さん、お父さんご苦労様ですとか。
小山さんを神様の実験台にして、明日にはさらに二人、私の負担を軽減してくれる人が増えるはずだとか。いろいろ考えていました。後は、神様に教えたことを言って怒られるかどうかですけど、きっと大丈夫じゃないかな?
だって、神様も私のこと広めていますからね。広めすぎたらまこが消えたりとか、誰も神様が来なくなって、精神病院に入院みたいな流れもありそうですけど。私がどんな行動を取るかを、ドキュメンタリータッチで見て、楽しんでいるような気がするんですよね。あのがきんちょ神は特に。次に来たら苦いコーヒーをお見舞いしてやります。
こんな具合で、時より興奮してしまうため、さらに眠れなくなり、結局意識を手放したのは、深夜1時以降~1時半より後だと思います。
さて、朝です。今日は8時半まで眠るつもりが、7時に起こされました。(いつもは6時半起床です)これでも、30分ほどまこを抱き込んで頑張ったのですが、結局、優秀な目覚まし時計に起こされました。
今日は土曜定休日ですが、昨夜のうちに伯父さんと伯母さんの家に午後からお邪魔すると伝えました。小山さんと同じことを話すのです。
内容は割愛しますが、伯父さんと伯母さんは、それはたいそう驚かれました。そして、証拠を求められ、おじさんの家に、ネックレスを置いて、伯父さんは家に、伯母さんは店に着いてくるというイリュージョンを行い。何度か、お店と伯父さんの家を往復することになりました。
最終的に、伯父さん、伯母さんは、まこのことを「まこちゃん」から「まこさん」と呼ぶなど、おかしな状況になってしまいました。これでもだいぶマシになったのですよ。最初は、まこ様って、どこのロイヤルファミリーですか?という言い回しまで出てきたのですが、まこと二人で、必死に説得して、まこさんに収まったのです。まあ、まこは容姿や行動があれなので、一週間もすれば伯父さんも伯母さんも、元の呼び捨てまこやまこちゃんに戻ると思います。
これで、知っている相手は、小山さんと、伯父さんと、伯母さんの3人です。人数的3~5人が一番漏れにくくなる人数と聞いたことがあります。まあ、あの店には神様がいるなんて言っても、誰も信じないでしょう。
翌日から再び、いつもの日常が戻ってきました。
ぬいが居ないことを除いては……。伯母さんも復活しています。今日は、何故かフルタイムで勤務なのは、きっと二日間の穴埋めなのでしょう。
そんな慌ただしい準備も終わって、今日最初のお客さんは、直君でした。
「大変だったね。」と他人事で始まる一言に、
私は熱々のお湯に、市販のNELCAFEの粉末を多めに注いで作った特性のコーヒーをサービスで出してあげます。
「こちらは当店から全部飲んだら無料のサービスです。」
と、ニヤニヤしながら出してあげます。
おばさんは、今回、神様と理解して初対面です。そのため、
「神様なんでしょう。失礼じゃない?ねえ大丈夫?」
などとおどおどしています。まこが直君を
「神様ですー。」
と紹介したタイミングから、伯母さんの顔色は一気に真っ青になりました。今までまこは、伯母さんにも神様の話はしないようにしていましたが、今回から晴れて、他のお客さんに知られないように、伝えることは許可されました。その結果、伯母さんは真っ青になったのです。だって、そうでしょう。前回来た時には、
「学校は、お休みなの?」「学校は行かなくちゃ駄目よ。」
とか聞いていたんですよ。そんな人が、こうも変わるのです。神様の世間のイメージは、捨てたもんじゃありませんよ。
まあ、私からすれば、ただの愚痴を零すお客さんの一人です。むしろ、何度か、神様の恩恵を受けているように見せかけて、痛い目に遭っている気がします。だから、直君のためにゴールドな苦いコーヒーをわざわざ用意したのです。
「これは私の愛情表現なので、大丈夫です。」
と答えます。引きつった笑顔で、
「いや、それサービスじゃない。押し売りだよ。俺なんか悪いことした?」
と言っています。
「何もしてませんよ。全く、な~んにも。まこのこともぬいのことも、何も教えてくれませんし、二人の様子を聞いてもくれません……ほんとな~んにもしてません。」
と嫌みったらしく私は言います。そうです、こいつは、私にネックレスをくれ、私にまことぬいというお遣いを用意してくれた神様ですが、それ以来、ここに食事と休憩には来ますが、様子も聞いてくれません。ただ、最近の自分の忙しさを、語るだけです。そして、ぬいが居なくなってからも、一週間来てくれませんでした。怒って当然です。みなさんもそう思いますよね。
直君は、頭を搔きながら
「まあ、言いたいことは分かった。その童……ぬいのこともあって、いろいろと忙しくて、それについては謝罪するよ。」
直君が、立ち上がって頭を下げます。
何か、おばさんが、私を悪者のように冷たい目で見ていて、気分が悪い。私が悪いみたいなんですけど。予想とは違う斜め上の対応に私は動揺します。
「いや、そういう話じゃ無くて、頭を上げて……なおくん、さま」
すると、ニヤニヤしながら頭を上げる、直君。
くそぉこのガキ、謀りやがったなあ。
結局私は神様に翻弄されただけでした。
「それで、今日はただ休憩という訳では無いのですよね」
「ああ、まずあの童ぬいの話だが、今は姐御の所にいる。」「あねごって」
「姐御じゃ分からないか?はな、ハナさんだよ。」
おお、OL姉さん、グラマーバディーのハナさんのところです。
「元気なんですか?」
「与えた仕事はそつなくこなしているって話だ。あいつは、お前の所に来る前にも姐御のところにいたらしい。ただ、姐御はあいつのことを知らなかったようだが、最近は姐御の飯を買ってくる担当をさせられていると言っていたな。」
ハナさんが知らないのも当然でしょう。ぬいは主の言うこと以外はまともに聞かなかったと自分でも言っていましたから、ハナさんの下につく事なんて出来なかったはずです。それよりも私は、買ってくる担当というのが気になりました。
「ご飯担当があるのですか?っていうか、童は、あっちじゃ食べないって聞きましたけど。」
童は神域では食事を取らないといっていました。
「まあ、こっちのように必須じゃ無いな。だからお遣いは外に出るものを除けば、飯を食うことはない。でも、姐御は、ジャンクフードと甘いものが好きなんだとよ。だから、外に出られない時には、遣いを使って、買いにいかせてんだと。コンビニとか、ファストフード店に、自分はそういう店には入れないから、あいつともう一人大人の担当でも付けて買わせているんだろう。童のようなお遣いなら、神力が薄い場所ない場所でも数日ぐらいは平気だからよ。」
へぇ、そんな仕事もあるんだ。
「直君も、そういう仕事を童に与えているんですか?」
「俺は、基本的にあまり飯は食わない。こことあと一カ所ぐらいしか行かない。」
まさか直君は、この店を気に入ってくれているとはちょっと意外、
「まあ、今日で気が変わったので、別の店を探そうかと思ってる。童には悪いが、今後はこっちに来られなくなるかもな。」
カウンターに置かれたのコーヒーを見ながら言いました。
私は、カウンターのコーヒーを自分で、飲み干し
「で、ご注文は……ジュースですか、ミルクですか?」
投げやりになるのでした。
私が、直君とこんなやりとりをしている間に、お客さんが数名に増えていきました。直君との神会話は、今日はお開きとなり、注文のミックスジュースと、サンドイッチを食べた直君は、「また来る」といって立ち去って行きましたが、その際に私だけに聞こえるように、「あまり広めるなよ。」と言われました。きっと、神様のことをあまり周囲に広めるなということだと思います。私は、それに頷くのでした。
それから、小山さんがお昼にやってきました。だから、伯母さんと伯父さんにも、この件を伝えていることを教えてあげました。これで、一人神様問題を抱えて苦しんだ私のようにはならないはずだと思ったのですが、小山さん的には困るようです。そうですよね。きっと私を不審者としてマークしていたはずで身辺も探っていたんじゃないでしょうか?。これから、どうするのでしょうか?
「出来れば大崎、駄目なら中田で良いから――」と、小山さんに拝み倒されたのですが、直君に釘を刺されたことを理由に、お断りしました。それより、大崎さんって誰でしょう?
その日の夕方、私は伯母さんに、叱られています。何故って?
神様に対する態度が悪かったからだそうです。問題ありませんと何度言っても、聞いてくれないのです。まこも私を庇ってくれたのに逆効果でした。
「お姉様は、神様に好かれているから大丈夫ですー。」
といっても、
「まこさんは、お姉さんの言うことを聞く童だから、そうみえるのね。ありがとうお姉さんを庇ってくれて」ってまこを笑顔で褒めた後、私には怖い顔で、
「そういうところが、読めないから、あなたはまだまだなのよ。神様のお遣いまで戴いて、ここまで言わせて――」
って、むしろヒートアップされてしまいました。もう、ここまで叱ってくれるなら、お母さんと呼んだ方が良いのかもしれません。いや、「これで怒るぐらいなら、きっと伯母さんが、お子様扱いした段階で、直君はキレていますよ。」なんて喉元まで出掛かりました。ただ、きっと伯母さんは神様のことを、まだ理解できていません。だから、今何をいっても無駄だと判断し、私はその言葉をグッと飲み込み、反省の態度という演技をすることになりました。
こうやって、何度も理不尽なことで叱られる娘は反省という演技を覚え、ついにはやさぐれていくのです。そこのお父さん、お母さん、どんなに、屁理屈でも、たまには娘・息子の意見も聞いてあげてください。