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二人だけの休日って、サブタイはありきたり。

 今日は朝から雨模様です。これでは、洗濯物が乾きません。幸い今日は、水曜日で定休日でしたから、いつも通り洗面所や、納戸、寝室なども利用して、S字フックとカーテンレールを駆使して干していきます。

 洗濯物も2人分なので、ぬいが居るときよりも早く終わります。

まこは踏み台を使って朝食の後片付け、お皿を洗って、拭いてという作業をして、トタトタという足音が聞こえてきましたので、終わったようです。

「お姉様、終わりましたですー。」

私は、

「じゃあ、そのタオルを取って。」

と、まこに私のお手伝いもお願いします。

「はい。」

とまこは、洗濯物を渡してくれます。今日は起きてから、

「大丈夫ですかー。」

と4度も心配されました。昨夜から数えると10回を越えています。

そんな、朝の一コマを終えたら、今日も定休日の日課、買い物に向かいます。


私の頭の中では、今3つの言葉が去来しています。

最初が、ぬいのこと。どうすればまたぬいと暮らすことが出来るのか?ぬいを襲った神様から、いつまでぬいは逃げていなければいけないのでしょうか?

次に、小山さんの言葉。

「そばにいる、警察やここの従業員や、客より信用できるのか?」

という言葉です。最後に、伯父さんが、言っていた正義の味方ヒーローです。私の場合は、ヒロインかもしれません。


いつもなら、何か笑い飛ばせるネタでも考えるのですけど。でも、二人になって最初の定休日でお出かけです。もっと元気にしっかりしないと、またまこに心配されます。この子は、私が落ち込んでいるとすぐに気が付いてしまうようです。3人の時には、まこはただ天真爛漫な子供でしたけど、ぬいが居なくなってから雰囲気が少し変わった気がします。


私は自分の頬をパチンパチンと両手で軽く叩き、気合いを入れます。今日も買いものと、仕入れ先巡りをしてお昼をどこかで食べて戻ってくる予定です。今日も、ミイはお留守番です。ご飯は準備してきましたので、勝手に食べてくれます。ミイは雨が苦手で、雨に濡れている人には絶対に近寄りませんから、今日はお店側にも行かないでしょう。水道の水やペットボトルの水は大丈夫みたいです。雨の日に嫌な思い出でもあって、雨の匂いや雰囲気が嫌いなのかも知れません。


まずは、取引先を回ってまこがお菓子をごちそうになり、じゃなかった梅雨時から夏のメニューにあった豆や食材を見繕います。夏は、冷たいアイスコーヒーの方が売れるためです。冬場に売れるホットコーヒーとは違い、アイスではローストをしっかり行い渋めにしたものの方が美味しく感じます。これは、冷たいと味覚が低下することと、氷などを追加して味も薄まってしまうからでしょう。

そして、他の軽食などにも差が出てきます。ダントツで売れるのは冷たい氷系のメニューと、サラダのようなあっさりメニューです。


とは言っても、実際にあおばの夏にどんなメニューが売れるのかは、分かりません。祖母の頃とは、客層も少し違い童効果で高齢者も多いのですが、若いお客さんも結構来ますから、だから今のうちから検討している訳です。私だって、神様の相手やぬいやまこの相手ばかりしている訳では無いのです。ちゃんと、あおばのことも考えているのです。


とりあえず、夏商品の検討には麺系、サラダ系とデザート部門の新作がノミネートされ、来週から数日間限定でテストすることになりました。調理時間とか盛り付けとか、コストとか、いろいろあるんです。来年からは、今年のメニューだけでも行けるかもしれませんが。コーヒーは次回までにロースト時間を変えたものをいくつか用意して貰います。

この辺りは、専門家にお任せですって、私も喫茶店のオーナーでマスターでした。オリジナルブレンド以外は素人も同然です。


先ほど言ったように、その間まこは餌付けされていました。


さて、商談の後はウィンドウショッピングです。ショッピングセンター内をぶらぶらします。まことぬいの夏服を探したりもして過ごします。お昼にフードコートで、うどんとたこ焼きを食べて、再び少しぶらぶらしたら帰宅です。

今日まこは、夏物の花柄ワンピースと、Tシャツ、スカート、背丈が同じぬい用には、ハーフパンツ、少し大きめTシャツ、ジーンズなどを買いました。ぬいは、ボーイッシュなファッションがお好みのため、二人で考えながら選んだのです。


だいたい15時頃には自宅に戻り、玄関を開けると、とまこが、

「ミイ、ただいまーですー。」

と、靴を脱ぎ捨てるとミイの方へ走っていきます。

私は、

「まこ、靴!」

と注意しますが、まこは家の今の方へと走っていきました。

まこは困った子。まこだけに・・・・・・う~ん。私は、まこのぬいだ靴を綺麗に揃えてから、家に上がります。その時、家の奥からまこが

「お姉様。大変で~す。」

と、声が聞こえ、ドタバタと私の元にまこが舞い戻ってきました。まこだけに舞い戻る?だめです。完全にスランプです。

「悪い神様がまた来たですっ。」

「悪い神様!?」

「そうです。怖いくて悪い神様ですぅー。」

と、まこは私の脚に張り付きます。

ぬいの元神様、邪なるものという病気になった、神様がやってきたようです。

私の背筋にゾゾッと寒気が走ります。私は、まこを抱きあげ、ゆっくりと居間から、そっと隠れるように、店の方へ脚を踏み入れます。


確かに、店の入り口に、あのヒョロヒョロの男性が立っています。私は、まこを下ろし、小さな声で、まこに居間で待つように伝えます。

「まこはここに居て――」

すると、まこは

「嫌です。私がお姉様を守るのです。」

と、抱きついてきます。少し怯え震えているようです。私も、まこのことは言えず、ちょっと脚ががくがくぶるぶるなっていますけど。

「じゃあ、まこは何も言わないで、私の横にいて。いい?」

と強く確認すると、まこはうんと頷きました。


私達は、店ではなく、家の裏口に回ります。そこから傘を差して、外に出ます。

裏口には、庭があり、お店の横に抜け出せる通路があります。通りからは鍵が開けられない隠し通路のような裏木戸になっているので、通りからは壁に見えますが、まだ表通りにお店が多かった頃は、この裏木戸は結構使われていたそうです。

そこを抜けて、表通りに出ます。

男は、店の入り口にずっと佇んでいました。傘も差さずにびしょ濡れのスーツ姿です。

私は意を決して、話しかけます。

「き、今日、あおばはお休みですよ。か、かみさま」

噛みました。

男は、こちらの言葉には反応せず、ずっと店の中を覘いています。

「あなたの童でしたら、もうここには居ません。神域に返しました。」

すると男は、こちらを振り向き、かなしそうな笑顔を浮かべ

「そうか」と、つぶやき。消えていきました。

恐れていたのが馬鹿らしくなるほど、まこの言う悪い神様は、あっさりと去って行きました。


「諦めて、帰ったのでしょうか?」

私がつぶやくと、私の足下にしがみついたまこが答えます。

「わからないです。」

私は、まこと手を繋いで戻ります。私もまこも、何故か先ほどまで抱いていた恐怖がなかったかのように、心が晴れやかになっていました。

「ねえ、まこ」

「はい、お姉様」

「最後の雰囲気って――」

「ぬいみたいでした。」

まこが言うように、あの感じはぬいによく似ていました。言葉にするのは難しいのですが、雰囲気が似ていたのです。親子なんかで似てないのに似てるっていう雰囲気というか、仕草というか?そう、ぬいが先日神域に戻るときに、見せた顔が思い浮かびました。

「ねえ、まこ。」

私は、なんとなく疑問に思ったことを口にします。

「はい?なんですか?」

「まこは、どこから生まれてきたの?」

「まこは、神様が集めたおねがい?から生まれてきたそうですー。」

「おねがい。」

「まこも、よく分からないのです。でも、最初の神様が言っていました。」

「最初の神様って?まこのお父さんかお母さんってこと?」

「う~ん。わかりません。最初の神様は、まこが生まれてすぐいなくなったのです。だからまこもよく覚えてないです。」

まこは、頭の上にはてなマークをのせたように、少し考えるそぶりをしています。

「そう、ゴメンね。変な質問しちゃって。」

まこは、「大丈夫ですー。」と元気に答え、持っている子供の傘を、高く掲げ、右足を軸にしてくるりと一回転しました。

「でも、お願いから生まれてきたと、言われたことは覚えていたんだー」

と聞くと、

「まこと、最初の神様が会ったのは、その一階だけですー。だから覚えているんですー。」

とはにかんだ笑顔を見せてくれました。きっと今のまこにとっては、大事な想い出なのでしょう。

私はその時、ふと誰かの視線を感じたような気がして、周りを見渡しました。

「気のせいかな。」

私達は、開けっぴろげたままの裏木戸を、閉めて裏口に戻るのでした。



その日の夜。私は、まこと二人でこれからのことを話しました。

「まこ、もしも私と離ればなれになったらどうする?」

「まこは、その首飾りがある間は、お姉様から離れません。ぬいよりお姉さんですから!」

エッヘンというそぶりを見せます。

「それでも、このお店が無くなって、私が居なくなったら。」

「お店なくなっちゃうんですか?お姉様?」

眉間にしわを寄せトーンを下げて、まこが聞いてきました。

「その予定は無いんだけど、もしもよ、もしも。」

「それでも、まこはお姉様について行きますですー。お姉様が嫌がってもついて行きます。」

再びまこはエッヘンというそぶりを見せます。

「でも、ついてこられない場所ならどうするの?」

「まこは、童ですから、ぬいもそうですけど、お姉様が呼べばまこの神力でひとっ飛びです。」

それは、知りませんでした。

「それじゃあ、ぬいも今呼び出せば、ここに戻ってこられるの?」

「ぬいの神力が十分なら戻ってこられるですー」

「もし十分じゃなかったら?」

「飛んだ後に弱って消えるらしいですー。でも、今のまこならお姉様がどこに居ても、お姉様の所に行けるぐらい神力があるのですー。だから大丈夫です。」

「氏神だったっけ?それが神力の素よね?」

「まこも、よく知らないです。」

とまこが首を傾げます。まこには詳しい内容は分からないようです。こういう時にはぬいの方がよく知っているのですよね。

「そっか。それで、話の続きだけど、神様の話は他の人にしても大丈夫なのか?まこは知ってる?」

まこは首を反対にひねって答えます。

「知らないです。でも、このお店に来る神様もまこもお姉様が好きです。お姉様は、面白い人ですと、他の神様も言っていました。だから、お姉様が決めれば良いと思います。」

面白い人というのは、どういう意味でしょうか?そして、他の神様って誰ですか?ハナさんですか、クシさんですか?直君ですか?

そして、まこさん。面白くなるなら話しても、問題ないってことですか?なんて、突っ込めません。きっとまこは意味が分かっていないのです。

「ねえ、まこ神様で私達の世界では特別なのよ。まこもそうだけど。だから、そんなに簡単に決めて良い話じゃないと思うけど。」

まこは、再び首を反対にひねって答えます。

「まこの世界では、特別じゃないです。普通ですー。神様からみたらお姉様の方が面白いですよ?だから、お姉様に会った神様は、お姉様のお店を皆に紹介しているです。」

へっ?今さらっと、変なこと言ってませんでしたか?

「まこさん。ちょっとそれはどういう――」

「お姉様は面白い人です?」

「そうじゃなくて?お店を紹介って?」

「直神様は、10の神様に、あおばがお薦めって言ったみたいです。ハナ様はちょっと前に4神様に紹介したそうです。でも、お姉様が神様とお友達?なのは言っていないです。あと、モウさんはお遣い連合の会合で皆に話したそうです。でも、近くの神様じゃ無い人もいるので、皆さんが来られるのは、早くてとおか?から、はんとし?、遅くて400年~1000年ぐらいっていってました。」

私は、

「ハハハ」と乾いた笑い声を出すことしか出来ませんでした。

少なくとも既に14柱の神様がやってくる可能性があります。1000年以内ですけど。

これで私の翌日の予定が決まりました。そして、神様が私をどう思っているのかも、何となく分かったような気がします。以前ハナさんも言っていましたが、結局は面白い珍獣がいる的なポジションになっているような気がします。

その話はいつ聞いたのと聞くと、

モウさんと直君は一緒になり、相席した日が1日だけあり、その時に話したそうです。そういえば、直君は、学校はという伯母さんから逃げて、カウンターから移動したことがありました。あのときだと思います。ハナさんが話したのは、いつだったか覚えていませんでした。


もう一つ気になったのは、まこが何故こういう話を覚えていられるのかですが、

「お姉様に関する良い、お話は全部覚えているのです。」

エッヘンと3度目の胸を張っていました。

それから、さらにまこは嬉しそうに続けます。

「直神様とモウさんは、もし今すぐに全部の神様とお遣いが来たら、絶対にこの店の常連になって、童とかが増える神スポットになるぞって言っていましたので、童はまことぬいが居るので、いりませんと言っておいたですー。」

と、付け加えられました。私は思わず頭を抱えました。これ以上の神様は、出来ればご遠慮戴きたいのです。まこはそれを見て、

「お姉様、もっと童が必要でしたか?」

と聞いてきました。私は、

「いいえ、断ってくれてありがとう。」

まこがニコニコして「はい」と答えました。


まだ、私は伯父さんや伯母さんのいう意味を十分に理解した訳でもありません。況してや小山さんの言うように頼る相手を、神様以外に求めるべきなのかも、ハッキリと分かりません。だけど、まこが言う神様の私に対する扱い?を考えると、伯父さんと伯母さんになら話しても良いのかも知れないと、考えている自分がいました。


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