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練習や訓練は指導も、やるのも、読むのも、書くのも忍耐です。

さて、2人の教育・練習・訓練が始まり。私の指導が開始されます。


まずは、いらっしゃいませ、おはようございます。こんにちは。こんばんは。ご注文はお決まりですか?などなど、接客用語です。基本的に、大手のお店だと、定型文のマニュアルがあります。勤務前に、社是のように斉唱するところもありますよね?

よく使われる間違った用語は、いくつもあります。

「よろしかったでしょうか?」→「よろしいですか?」

「○○円からお預かりします」→「お預かりします。」

「○○の方になります」→「○○です。」

「分かりました」→「かしこまりました」

「すみません」→「申し訳ございません」

「とんでもございません」→「お気遣いいただき(まして)、ありがとうございます」

もちろん、謙った表現として、咄嗟に出てしまう場合はあるでしょう。

しかし、仕事でよく使う言い回しの場合は、この部分に気をつけましょう。

私も、いざその時に使えますか?と言われると、無理です。


そして、ウチのお店は、そんなマニュアルなどありません。私が接客業で覚えた言葉は一応伝えますが、同じ客商売でも、所謂チェーン店とは違いますから。このチェーン店は中央集中型の決まったスタイルのお店です。一言で言えば中央店に行こうが、港町店に行こうがほぼ同じサービスと接客態度が味わえるお店です。

自営業のお店は、店員さんの言葉遣いや接客雰囲気に合わせて、お客さんがやってきます。頑固な店主のお店もあれば、ひょうきんな店主のお店も、きめ細やかな店主のお店もあるのです。これが個人営業のお店の味でありよいところでも悪いところでもあります。


後は、その雰囲気に自分が、なじむかどうかです。馴染む店を探すのが、結構、難しいのです。殆どの人は、チェーン店の一律サービスを基準にしていますから、個人経営のサービスでアクが強いお店だと、すぐにSNSで批判する人もいるらしいのです。だから、基本はある程度覚えておかなければいけないというのが、最近の流れですから、だから指導は大事です。


そして、ここのお店のルールブックは、店主の私ではなく伯父さんにあります。怒られたら一巻の終わりで、私の所まで被害が来ます。だから、今日は完璧とは行かなくても、とにかくまこさんとぬいさんに伯父さんをおだて……じゃなかった。接客の基本を教えて、伯父さんにまこさんとぬいさんの実力と私の成長を見せつける必要があるのです。


それを現在、私は2人に必死に説いていますが、既にまこは、?マークが頭の上に出ています。

ぬいは、ハンバーグセットの箱を見せると、その時から5分ぐらいはやりますが、5分後には「本番では頑張るから、今はいいじゃん」と言い出します。


そこで、まこにはミイをお客に見立てて、いらっしゃいませの練習を、ぬいは私がスパルタのげんこつぐりぐり付きで、教えることにしました。お昼の1時(13時)から初めて、1時間でぬいは、一通りの接客手順を覚えました。相手は私です。現在はミイ相手に練習していますが、初回から、飽きたのか「ヘイ!ラッシャイ」ってどこで覚えたのか、八百屋さんか魚屋さんみたいなかけ声を出し、私のげんこつぐりぐりを受けました。


まこは、40分でいらっしゃいませとお辞儀が完璧になり、1時間40分でお水を10回中10回躓いたり、転けたり※せずに運べるようになりました。※こぼさずにではありません。


全然ダメじゃん?って言ったのは誰ですか?まこの練習は、本当に、よちよち歩きの段階からなのです。コップをプラスチックの練習用にして、乾いたぞうきんをスタンバイし、水を入れない状態からスタートして、ちゃんと20回運べたら、水を1/3入れて一番遠い席と、真ん中の席と、一番手間の席に運ぶ練習をし、それが20回成功したら、1/2にして、それが20回成功したら2/3にして行ったり来たり・・・。失敗したら自分で拭くを繰り返して貰った結果、床はぴかぴかです。


これだけでも、価値はあったのです。ポンコツって言ってゴメンね。私的には、お店の床とか、机の脚とか椅子の脚が綺麗になるだけでも、成果はありましたし、この子の成長は遅い分、上手くいくと教えた側もやったーと一緒に喜びたくなります。毎日掃除していても、定型の掃除なので、隅々はこういう時にしか綺麗になりません。まこは、こういうところで作業は遅めですが、とても丁寧です。


さて、今日の目標を達成して、まことぬいはシールを手に入れることが出来るのでしょうか?


そろそろ15時です。お願いしていた指導員がやってくるはずです。

私の指導では、今日一日では、きっとこれ以上の成長は望めません。2時間同じ指導員で、頑張れたことが凄いのです。私は、まことぬいに、休憩を伝えます。コップにお茶を3つ入れ、お菓子を載せた、お盆をまこに一番奥の席に運ぶように言います。ぬいがヒヤヒヤと見ていますが、まこは慎重に、席まで運び、お菓子とお茶を席に置きました。


その配膳したお菓子とお茶で、休憩です。

「まこさん。よく出来ました。」

と褒めると

「ありがとうですー」

と喜んでいました。いつも思うのですが、人が、成長する姿を見ると、何故か私も頑張ろうって思います。学生時代オタク研究会出身の同僚で部下のゆりちゃんが高校生バイトの新人をみて「これが若さか」って言っていた気持ちが分かります。あの子時々まともなことを言うんですよ。やっぱり、若い子の頑張りを見てると、私この若さに負けてられないと思うのです。


おやつタイムの途中で、先生はやってきました。それは、お分かりだと思いますが、伯母さんです。伯父さんの奥さんです。昔、どこかの喫茶店で働いていたハズなので、お願いしたのです。

「あら、本当に2人も子供がいるのね。」

と言われ、驚かれました。

まことぬいが私の妹であることを説明しても、

「もうそれで良いわよ。」

としか言われませんでした。既に信用を失っています。

そして、ぬいとまこに練習した自己紹介の挨拶をさせますが、

まずは、ぬいは右手を軽く挙げて、

「ぬいだ。姉貴の妹で、童だ。ふつつかだが、よろしく頼む。」

に変わりました。練習では、「姉の妹で、三女のぬいです。今日はよろしくお願いします。」でした。戸籍上24歳だと、私が説明した後に、童(子供)って本人に言われたら、私は立つ瀬がないのです。

そして、まこです。

「まこです。お姉様の妹でじしょ?…う、間違えたですー。?しじょです。きょうはおねがいしますですー。」

じしょではなく次女です。まあ、間違えて子女でよかった。

伯母さんは、私の方を向いて、ため息をつきながら一言。

「この子達本当に大人と思って良いの?犯罪に巻き込むのは勘弁してくれないかしら?」

と、本気顔で言われました。帰ると伯母さんに言われたので、必死に止めて、証明しますからと言います。もうあの手しかありません。それは、電話をするのです。警察に……。


もちろん、110番ではありませんよ。警察署の外線ダイヤルに電話します。

伯母さんが、

「どこに電話をするのよ?」と言うので、私は

「警察。」

と答えると、

「ちょっと待ちなさい。何をしたの。自首するにも、まずそれを話して……出頭するなら話を聞いてからついて行くから。」

と叫ぶように言われました。近所に聞こえるから……それに戸籍書き換えとか、犯罪なんかしてないから(私はね)。とにかく電話を掛けるのを一端止めて、言います。

「伯母さん。まことぬいのことを知っている人が、警察に居るんです。その人に説明をお願いするだけです。」

と説明し、落ち着き納得して貰うのに3分掛かりました。ぬいに水を一杯持ってきて貰って、落ち着いたところで、警察署に電話をして、小山さんか、中田さんに変わって貰います。小山さんに、「話す気になったか?」と言われたのは、仕方がありませんが、その後、説明をお願いして、伯母さんと替わってから、話が47分続いたのは予想外でした。

いろいろ脱線し、第二部研修15時15分スタート予定が、午後16時04分スタートとなりました。


伯母さんの教育は、実務的で効率的です。この店をまるで熟知しているようです。

そこで、伯母さんにたずねます。

「伯母さんってここで、働いていました?」

と質問しました。すると、頬をつねられました。

「覚えてない?小さかったし、昼間が多かったから忘れちゃったのかな?」

と、ちょっと怖い目で睨まれました。

「後で伯父さんに教えて貰うと良いわよ。」

と言われました。私のいない時間帯にお店で働いていたのでしょう。

それを覚えていないからだけでは、なさそうです。何があったのか思いださなければ、きっと酷いことが起きるのでしょう。


まことぬいの指導は、私と伯母さんの2人によって的確に行われていきます。

まこは、水やおしぼり、ちょっとした飲み物、食べ物を運ぶぐらいならできるようになりましたし、算数・数学が得意なのか、会計はすぐに覚えました。だけど、注文オーダーは文字が書けない、読めないので、無理みたいです。また、同時に複数の仕事を頼まれると、全部やろうとして失敗します。

一方で、ぬいはオーダーは全て丸暗記しています。さらに、ぬいは同時に3人が話しかけても、全部聞き分けていることに私は、気が付きました。私がそれを確認すると、聖徳太子うまやどのおうじ※もびっくり、意識すれば同時に最大17人ぐらいなら、聞き分けられるらしいのです。


※聖徳太子<現在は後名、伝記名>のこと。正しい漢字は厩戸皇子。今の学生さんは厩戸皇子で習いますので、読みは習った方で、読んで下さい。


それで、これも神力かー、それとも神何たらという立場だから、特別ぬいが優秀なのかと聞いたところ、「童上役一等わらべうわやくいっとうだぞ。それは、関係ないとは言わないけど、聞き分けるぐらい普通だろ?ちょっと私は多いけど、他の童も5~10人ぐらいはいけるぞ。この店の広さなら、普通に喋ってる声なら、聞き分けられるだろう普通。」と、言われてしまいました。とにかくお客さんの会話を盗み聴きしないようにと、しっかり言い聞かせておきました。この子、やはり忍びか何か隠密の人だったのかもしれません。謎はつきません。それから、まこは1人の話でも、うろ覚えであることは、お伝えしておきます。


さて、まこの「ですー。」は克服できませんでしたし、ぬいの汚い言葉遣いは、未だほぼ健在ですが、少しはマシになりました。喋らず、ニコニコしていれば完璧です。

そして、後30分で約束の伯父さんではなく、伯父さんとの約束のお時間です。一度、伯母さんも自宅に戻り、2人でご来店の予定です。きっと恙無く終わるでしょう。

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