我が家のおひなさま・雛(ひな) その1 7014字
我が家のおひなさま。
それは紛れもなく。
俺の妹、雛のことである。
小さくて神聖で、みんなに愛されて。
いつの間にか家に現れて、澄ましたお顔で場所を占拠する。
憎たらしいアイツの事だ。
◆
雛と俺は九つも離れてるのに、年子みたいに喧嘩ばかりする。
ついさっきも俺達は、どっちが先に風呂に入るかで揉めた。
「年齢順なら兄である俺が優先だろ。それに俺は烏の行水。上がるのも早いのだから、ここは譲りなさい」
俺が文字通り上から目線で言うと、妹も負けじと、
「ぜったいヤダ! おにぃが入った後のお湯って、脂がぷかぷかしてるし、変なウェーブした毛が浮いてるもん! 汚いからヤダ!」
こう言って引かない。
おいおい。生理現象、特に陰毛はライン超えだろ……常考。
兄のデリケートなゾーンを土足で踏みにじる妹につい腹が立ってしまい、
「なんだよ。お前だって、脱衣かごにぱんつ脱いで入れっぱなしじゃないか。次に風呂入って、それを見なきゃいけない、俺の身にもなれよ!」
売り言葉に買い言葉。
俺の方も、年甲斐なく妹に言い過ぎてしまう。
俺は19の大学生。
雛は10才、今年で小学5年生。
年齢、学歴、身長、体重、人生経験。
どこをどう比べても俺は大人、妹はこどもだ。
俺達は例えるなら、オオタニと少年野球のガキ。
端から勝負にならないし、正面切って喧嘩する年差でもない。
──なのに。
こう毎度、雛とバチってしまうのはなぜだろう?
妹は怒ると、俺をキッと睨み付ける。
頬を膨らませ、顔を赤らめ、拳をギュッと握り、内股になる。
絶対に勝てるはずのない兄に、立ち向かう闘志。
小さいのがいっちょ前に反抗して、大きいやつに勝とうとする無謀な姿。
正直に言う。……可愛くてたまらない。
さて。
俺にぱんつを責められた妹は、とうとう泣き出した。
元はと言えば、お前が先に、俺のぼんぼりにあかりをつけたのが悪い。……俺は悪くない。
「おにぃのバカぁ……! なんで、そんなひどいこと、言うんだよぉ……っ!」
雛のぱんつへの突っ込みが、存外柔い部分を傷付けちまったらしい。
たとえ小学生だろうと4年生にもなれば下着への言及はハラスメントだ。
身近な家族間であったとしても軽率にすべき話題じゃない。
雛は嗚咽して、円らな瞳に溜め涙を滲ませた。
ギュッと握った拳がぷるぷる震え、内股が加速して膝同士がごっつんこする。
強者に立ち向かう闘志が一転、敗北を悟って恐怖に変わり、恐怖を持て余した脳が保身に迫られ引き起こす回避動作、『泣く』。
雛は泣く事で、俺にけんかの一時休戦を申し入れてきた。
え? 『敗北を認めた』の間違いじゃないかって?
それはこの後の展開を見て貰えれば分かる。
「ああっ! 泣くなよ、雛。ごめんな、兄ちゃん言い過ぎた!」
敗北したのは俺の方だった。
隠さずに言おう。俺は妹の涙に弱い。雛がこの世に生まれて此の方、勝てた事がない。よわよわのざーこだ。
「ばかぁぁ……! おにぃの、ばかぁぁぁ……!」
雛は俺にしがみつき、胸板に顔を埋めて、うぇんうぇん泣き始めた。
妹は昔っからこうなんだ。兄への抱き癖がある。俺にしがみつくと安心するらしい。兄妹ふたりっきりで留守番する期間が長かったせいだろうか……。
そして俺の方も、それを快く思っちまってる。
結局さ。
俺が雛に意地悪しちまう理由は、九つも離れた妹に、構って貰いたい、それだけなのかもしれない。
◆
その後、雛は、仕事から帰宅した母さんにチクって、俺は説教、雛は先にお風呂、という結果に終わった。
これで兄妹風呂戦争は4勝239敗か。雛にはだいぶ水をあけられたな……。
などと、バックグラウンドで思考したくなるほど、今日の母さんのお説教はいつにも増してしつこかった。
居間に正座させられて、クドクドと説服される。あーあ。
「あんたはもう大学生でしょ! どうして妹に優しくしてやれないの!」
「だって」
立場が逆転して、今度は俺が圧倒的強者にやり込められる側になった。
俺は19の大学生。母は47歳の会社員。
この一家は母さんの稼ぎだけが頼りだから、俺が逆らえるはずもない。
……さっきの雛の気持ち、今ならわかる。
それにしてもこのBBA、仕事のストレスを俺に転嫁してねえか?
「雛ちゃんを産んだ時、低体重で生まれてきたの、あんたは知ってるでしょ。保育器に入って、必死に呼吸する雛ちゃんを見て、あんた何て言ったか覚えてる?」
無論、覚えてる。
「俺がひなを守る。ひなが大きく育つまで、俺が傍にいて見守る」
一言一句違わずに諳んじる。
忘れるはずがない。
「──あんた、心配そうに雛ちゃんを見つめて、お母さんにそう約束したわよね。九つ年の離れたお兄ちゃんなんだから。雛ちゃんのこと、大事にしてあげなきゃ駄目じゃない」
そう言われると弱い。歯向かう余地もない。
うちの事情が事情だから、母さんがいない時は、俺が雛を守らなきゃいけないのに。
……それでも、ムカつく時はムカつくんだ。
「明日は3月3日、ひな祭り。雛ちゃんの11才のお誕生日でしょ。お母さん日曜日はお休みだから、明日は私達と雛ちゃんのお友達も呼んで、みんなで雛ちゃんのお誕生日をお祝いしてあげましょう。分かった?」
そう。明日はひな祭り。
同時に妹の誕生日でもある。
我が家の居間にも豪勢な5段飾りの雛人形がデーーンと飾られて、偉そうに鎮座ましましている。
確かひと月前に、雛が母さんとイチャコラ談笑しながら飾ってたっけ。
当然、男の俺は蚊帳の外に置かれてたわけで。
雛人形。女の子のためのお人形。アイツがいる限り、男の俺の居場所が無いったらない。
いいよな女の子って。愛されて。
母さんのお説教は依然として続いた。
主題が大幅に逸れて、今は俺の大学の出席日数について追求されている。
……正座しすぎて、そろそろ足が痺れて来たな。
成人過ぎた19歳にもなって母親に叱られる惨めな俺を、高みから涼しいお顔で、おひな様がみてる。
雛は今頃、俺に勝ち誇って鼻歌でも歌いながら、のんびり湯船に浸かってんのかな。外圧頼みのくせに……。
俺は目の前からの現実逃避に、妹の裸を思い浮かべた。
◆
ところで雛は、同い年の娘と比べると、やはり、発育が遅い方かもしれない。
先週の日曜日、妹の友達が3人ほど遊びに来た。
母さんの話だと、クラスや塾で仲良しのお友達らしい。……そういうの、俺は雛から聞いたこと無かったんだがな。
小さなお客さんがいらしてる最中に、ばったりトイレの中で鉢合わせても気まずい。
互いの不幸を避けるため、気配りできる大人の俺は、妹のお友達に挨拶に行ったんだ。よそ行きの一張羅を着て。
……女子小学生のこども相手に、なーにカッコつけてんだか、俺。
──その時。
彼女達の体格差に驚いたもんだ。
俺は今まで、妹くらいがその年齢の平均値と思い込んでいた。……そう思いたかった。
だが、友達の輪の中に入ると、雛は一段小さく、骨格も未発達な印象を受けた。
妹と一番仲がいいらしい葵ちゃんは、胸が膨らんできていて、水色のジュニアブラを着用している。
その隣の茜ちゃんは、お尻が丸みを帯びて、140サイズのデニムのホットパンツを窮屈そうに押し上げている。
もう一人の真姫ちゃんは、骨盤が横に広がって、成人女性と身長がそう変わりない。
3人のお友達と並んでいると、俺の妹は、本当に小さく、幼く見えたものだ。
きっと他の3人は、既に生理も来ているのだろう。
だが、俺の妹は?
俺の入浴時、脱衣かごの中に必ず放り込んである、妹の脱ぎたてぱんつ。
嫌でも視界に入ってしまうから、そこから情報を得てしまうのも、仕方のない事なのだけれど。
くるくると丸まったそれは、常にまっしろで、赤く汚れていた試しがない。
俺は男兄弟だから、こんな心配は余計の無用の大きなお世話、なんだけど。
でもなあ……。
まだ毛も生えていない、雛の幼い裸を脳裏に描きながら、俺の正座はそろそろ痺れを切らし始めていた。
◆
洗面所から妹のドライヤーの音が聞こえ始めた頃。
俺はようやく母さんのお説教から解放された。
邪念渦巻く居間からほうぼうのていで逃げ出し、痺れきった両足を引き摺るように階段を昇る。
一段、もう一段、……うぅ痛え。
なんとか自室まで辿り着く。
痺れが抜け切るまで悶絶した後、憂さ晴らしにスマホで動画でも見る事にした。
あ~あ、疲れた。なんて日だよまったく……。明日は雛の誕生日だってのに。
椅子に座ってくつろぎながら、ふと机の引き出しを眺める。
引き出しの、中に入っている物──。
……明日は必ず言うぞ。勇気を出せ、俺。
その時。
コンコン。
優しい音がドアをノックした。
「おにぃ、上がった……」
ドアを開けて入って来たのは、パジャマ姿の雛だった。
「次、入ってもいいよ……」
ショートカットの黒髪を少し湿らせ、上気した顔でそんな事を言う。
ちびの雛のくせに妙に色っぽいのは、お湯で茹だった所為だろうか。
幸い、風呂に入ってさっぱりしたお陰か、妹の機嫌は直ってるようだった。
俺は自然と微笑み、スマホの電源を消して、机の上に放った。
「……おにぃ、今何見てたの?」
「何って。ゆーちゅべ。暇潰しだよ」
ゆーちゅべ、とは広告収入で運営される動画投稿サイトの事だ。健全を標榜しておりエロ動画は即削除されてしまう。
俺に何もやましい点は無い。
なのに、雛が疑う目で俺を見つめる。
だんだん頬が膨らみ始めた。
「おにぃ、ひょっとして……。彼女さんと、らいんしてたの?」
らいん、とは手軽にメッセージを送り合えるアプリで……。いや違う、そこじゃないよな。
雛が言った、『彼女』という単語に引っかかった。
…………?
どうして、この10才の妹は、俺に彼女がいると思ってしまったんだ??? いるわけがない。
今この場でしっかり訂正しないと、今後の俺達の関係性に響くと直感した。
だから言う。きっぱりとな。
「い、いないよ、彼女なんて! 暇だから動画見てただけ。……ホントだって!」
思いの外、声がうわずって、嘘臭い言い訳に聞こえてしまった。
でもさ、妹よ。
冷静に考えてもみなさいって。
もし俺に彼女がいたら、こんな週末の夜に、実家でダラダラ過ごすなんて有り得ないだろ?
10才の雛はそんな事も分からないほど幼いのだ。
それに俺は、どちらかというと……。
「ほんとにぃ……?」
「ホント!」
雛が眉間に皺を寄せ、俺を睨みながら、じわじわ近付いてくる。
椅子に座った俺は妹から逃げられない。
立っている雛は俺を見下ろして、至近距離で睨んでいた。……なんの尋問だこれ?
雛は高鳴る俺の心臓の音に、耳を澄ませた。
「…………。そっかー、よかった!」
しばらくして、疑いが解けたらしい。
雛の不安そうな顔が急にぱっと明るく変わり、いつものニコニコした笑顔が咲いた。
雛は幼く見えるなりに、笑顔が無垢で可愛い。
本心と表情が直結している気がする。それは大人の女には持ち合わせない、少女固有のパッシブスキルだ。
「おにぃに彼女さんは、まだ早いよねーっ!」
安堵して、にへへとはにかむ雛。
妹スマイルはやはり、いい。
…………。
ン? ちょっと待てよ? なんで俺の男女交際をお前が差配すんの?
「そ、それよりさっ、雛。ちゃんと石鹸で体洗ったのか? 髪にはシャンプーしたか?」
唐突すぎて不自然だが、気まずい話題の切り替えを図る。
それに。
目の前にした可愛いのはつい、からかいたくなっちまう。……悪いお兄ちゃんだね。
「……は? なに? バカにしてるの……? ちゃんと洗ってるもんっ!」
「どれどれ」
妹が本当に清潔を保っているか確かめるため、椅子から立ち上がり、雛を抱き締めた。
「ふぎゅっ……!?」
母さんは1階のキッチンだ。2階のここからじゃ声は届かない。
雛と俺とじゃ30cm以上の身長差がある。抱き締めると言うより、大人が子供に覆いかぶさる、と言った方が適切だろう。
妹が濡らして、乾かしたばかりの黒いショートカット。
そのつむじに、俺の鼻を埋める。
「……ちゃんとシャンプーしたみたいだな。いい匂いがする」
雛の生え際の、乳臭い香りを吸い込み、思ったままを伝える。
俺に抱き寄せられた妹。
俺の胸に小さな顔を埋めたまま、腕をだらんと垂らして、抵抗はしなかった。
暫くそのまま、妹と抱き合っていた。
「……ぷはぁっ! ……くるしかった」
雛の息継ぎはそれから10分ほど後だった。
妹が俺の腰に小さな腕を回して、俺を見上げた。
雛の顔は真っ赤だった。
「……彼女さんにも、こんな事してんの……?」
「だから、いないって。雛にだけだよ」
むーっと、膨れる雛。
俺達は、九つ離れた、血の繋がった実の兄妹。兄妹と呼ぶには年が開きすぎ、親子と呼ぶには近すぎる。体つきも違えば、話す話題も違う。近くて遠い、もどかしい関係。
「……おにぃ。お願いがある……」
「なに」
妹と抱き合ったまま会話する。
雛が俺を見上げて、目をうるうるさせてる。
妹が俺にお願いするだなんて、珍しい。
今、こういう体勢だしな。雛の頼みなら、何でも聞いてやりたくなる。
「おにぃ、明日は出かけて。夜まで帰って来ないでっ」
「いや、なんでだよ」
寝耳に水だった。
何でも聞くとは言ったけど、それじゃあまりに……。
だって明日は…………。
「明日、雛の誕生日だろっ。うちで、家族で、友達も呼んで、ひな祭りしよう、って前から……!」
「だからダメなのっ!」
上目遣いのまま、妹はしゃくり上げるように俺に訴えた。
俺の背中に回した小さな腕に、ギュウと力が込もる。
だから、って、なんだよ。
意味がわからなかった。
実は明日のために、ちゃんとプレゼントも買って用意してある、…………とは、今は言えない。
高価すぎず、安っぽすぎもしない、学校に毎日着けて行けるような、流行りの、小学5年生になる女の子が喜ぶような、可愛らしい髪留めを、恥を偲んで入念にリサーチして、既に買って、綺麗なラッピングをして貰って、そこの机の引き出しに隠してある、とは、今は言う事ができない。
だから今、聞くしかない。
「……俺がいたらいけない理由。聞いてもいいか?」
「うぅぅー……」
雛は俺に抱きしめられたまま、視線を落とし、俺の胸板に顔をくっつけて唸り声を上げた。
幼い雛の、素直な感情。
きっと今、妹は、妹なりに勇気の欠片をかき集めて、丸めて、結晶へと昇華している最中なのだろう。
俺は妹の小さな背中を撫でながら、待った。
「……私の友達、いるよね」
「ああ。葵ちゃん、茜ちゃん、あと真姫ちゃんだっけ。先週うちに来てたな」
「あの日、おにぃと家で一緒に遊んだ後ね。学校で、みんなが言ってたんだ……。『雛ちゃんのお兄さんって、大人でカッコイイね』って…………」
学校で兄が褒められたというホットなエピソード。普通の妹なら喜ぶところだろう。自分を飾り立てる物への称賛。女性は皆そういうのが大好物だ。
だが、俺の妹は、そこに大いな不満があるようだった。
「──で? 雛は、それを聞いて、どう思ったの?」
俺のイジワルな質問。
妹は頬を大きく膨らませて、おでこまで真っ赤っ赤にしながら、しばし黙っていた。
それから、俺の胸に膨れっ面のままタックルしてきた。
「…………イヤだった……」
「……」
「……わたしね。おにぃの事、友達に言われて、すっごく、イヤな気持ちになったの……。なんでだろう? みんな、仲良しなのに……。わたし、なんでこんなに、嫌な子なんだろう…………」
雛のその言葉を聞いて、ようやく分かった。
俺の妹は、決して幼くなんかなかったんだ。
年齢なりに、いや実年齢以上に、内面は大人へと成長してたんだ。
それに気付かず、兄の俺は、ただ妹の外見だけを見て、あまつさえ他人と比べて、雛を、幼い、生理も来ないと偏って見てただけだったんだ。
恐らくその歪んだ認識には俺自身の願望も含まれていた。
妹にずっと子供いて欲しい。いつまでも俺の庇護の元、自力じゃ立てない雛のままでいて欲しい、と。
でも、真実は。
俺の妹は大人になろうとしている。なりかけている。
俺はあの日、産まれたばかりの雛を遠くで見つめて、誓ったよな?
『雛は俺が守る。雛が大人になるまで、俺が傍にいて見守る』──って。
小さかった雛。
でも今、こうしてすくすくと育ち、殻を破って、大人に羽ばたこうとしてる。
その、妹を閉じ込める殻に、俺がなっちゃ駄目だ!
「……わかった」
「!」
妹の願い。
俺はそれに応える事にした。
……皆で一緒に祝えないのは、ちょっぴり残念だけどな。
「兄ちゃんな、明日は出かけるよ。夜まで帰らない。雛は、みんなと仲良くな? お祝いされたら、ちゃんと笑って、いっぱい、いっぱい、喜ぶんだぞ」
「…………うん」
俺の声を聞きながら、妹は相変わらず、俺の胸板に突っ伏していた。
雛が聴いていたのは、俺の心音。
戸惑って高鳴ったり、安堵して落ち着いたり。
嘘偽りない俺の想いを、妹は鼓動を通して感じていた。
「ひな。ごめん、兄ちゃんな、明日は祝ってやれない。……でもな、これだけは言わせてくれ。お誕生日おめでとう、雛。俺の妹に生まれて来てくれて、ありがとう」
「ふぁ、ふぁあぁ…………」
妹の顔は見えないが、耳にはしっかり届いてるはずだ。
雛は声にならない鳴き声で、俺に返事した。
俺と妹は、母さんが階段を昇る足音が聞こえてくるまで、ずっと、ずっと、抱き合っていた。
◆
「お誕生日おめでとう、雛ちゃん」
「あ、ありがとっ」
「雛ちゃん。今日着けてる、翼モチーフの髪留め、可愛いね。誰かのプレゼント?」
「う、うんっ」
「そういえば、雛ちゃん。今日、お兄さんはどうしたの?」
「……え? えーとねっ、…………彼女にお願いされて、デートに行ってるっ」