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死体が大好きな妹・鈴花(りんか) その1 1673字

あらすじ


 高校生のお兄ちゃんのことが大好きな鈴花りんかちゃん(8才)は、ちょっぴり変わった女の子。

 1年前に起きたとある出来事がきっかけで、鈴花りんかちゃんは生き物が動かなくなった姿に興味が湧いてきて止まらなくなってしまいます。

 ある夜、お兄ちゃんが買い物に行こうとするのを見かけた鈴花りんかちゃんは、嫌がるお兄ちゃんにお願いして、一緒に付いて行こうとします。

 鈴花りんかちゃんは、お兄ちゃんと買い物に行けるのでしょうか……?


本編開始です↓

 妹さえいればいい。

 ……と、布団の中で身悶えしたのも遠い記憶だ。

 今の俺はといえば、ただ妹と離れたい。とにかく離れて暮らしたい。

 それだけを願い、妹との惨憺たる日々に耐えている。

 とにかく俺は、妹と距離を置くべきなのだ。

 今すぐ家を出よう。……ちょっとそこまで買い物に。

 自室で固く決心した俺は。

 隣の部屋(でいったい何をやっているのか知れないが別にこちらから関わりたくもない妹)の鈴花に気取られないよう、そろりそろりと抜き足差し足で廊下を抜け、階段を下り、玄関まで辿り着いた。

 あとは靴を履き、ドアを静かに開けるだけ。

 そう安堵した瞬間を狙って、鈴花はやって来る。


「お兄ちゃん、出かけるの!?」

「うわ、りんか!?」


 背後から急に肩を叩かれる。いつの間に俺の背中を取ったコイツ!?


「死体! 死体はあるの!?」


 これだ……。

 鈴花の口癖、『死体』。

 俺が妹を避ける最大の理由。

 同じ血を分けた兄妹。ほぼ同じ環境で育った家族であるくせに。

 いつの頃からか妹は『死体』に魅せられ、なにか発言すると、まず口を衝くのは「死体」という二文字だった。

 どうしてこうなった……。


「……死体はないよ。ちょっと近所の24時間営業スーパー、ガンギマリストアまで買い物に行くだけだよ」

「わぁ、すごい説明口調! ねぇ、一緒に行っていーい!? 一緒に行っちゃだめ?」


 鈴花は普通の女の子のようにはしゃぎ、俺への同行を何とかこぎつけようとする。

 確かに、妹は見た目だけなら、ごく普通だ。

 普通の黒髪。普通のセミロング。普通の顔。……俺とは違って母さん似な点と、女子小学生ブランドを加味すると、概ね『可愛い』寄りではあるが。

 普通の背丈。普通の体重。普通の胸。

 普通のスタイル。普通の足のサイズ。

 内面さえ知らなければ、東京駅の雑踏にでも紛れたら絶対に見つかりっこない、いたって普通の女の子。それが妹の鈴花だ。

 本当に、この『死体』さえなけりゃあなぁ……。

 などと自分の心に向かって愚痴を吐いても、事態は一向に好転しない。それは分かってはいるのだが。


「もう夜遅いから危ないよ……。付いてきちゃ、ダメ」


 俺はズボンのケツの左ポケットからスマートフォンを取り出し、待ち受け画面を鈴花に見せた。

 時刻は午後10時半を過ぎている。子供は既に寝ている時間だ。


「え~!? じゃあ、おかーさんに聞いてくるから! まだ行かないでよー!」


 どういう理屈で俺がその動議に賛成したと思ったのか疑問だが、鈴花は玄関を駆け出し居間へ走った。

 俺が鈴花を苦手な理由その2が、この『おかーさんに聞くからー』である。

 昔っから母さんは鈴花に甘い。俺への扱いの何倍も、何十倍も甘い。これが同性優遇政策か……。おのれ……。

 俺がそろそろ諦めて、下駄箱から鈴花のお気に入りの運動靴を取り出し、たたきに並べ始めていると。


「いいってー! おかーさん、お兄ちゃんと一緒に行ってもいいってー!」


 ああそうね。そうだろうね。と、完全に予想通りの返事が返ってくる。

 まったく何て親だ……。俺と同行するとはいえ、年頃の娘に夜間外出を許可するなどと……。娘が可愛くないのか?

 鈴花は俺が並べた靴をんしょ、んしょ、と両足に装着すると。

 上目遣いで、俺の手を取り両手で握ってくる。


「わたしね、お兄ちゃんと一緒にお買い物できてうれしい! えへ~っ! はやく行こっ!」


 …………俺の妹は、普通に可愛い。

 それは、分かりきっているんだ。

 ……ただちょっと、頭のネジが地平線の彼方までブッ飛んで、どっか海の底にでも迷い込んじまっただけなんだ。

 俺は鈴花に手を握られたまま、もう片方の手で玄関のドアを開き……。

 と、その前に、一応両親に出かけの挨拶をしておかなきゃな。


「……じゃ、行ってくるから」

「お兄ちゃんとお買い物してくるね! おとーさん、おかーさん!」


 俺たち兄妹は写真の中で寄り添い笑う、若い頃の父さんと母さんに微笑み返すと。


「それじゃ死体を探しに、いざ夜の街へ、れっつごー!」

「だから死体はないって……。買い物するだけだからな……」


 俺たちは死体を探しに……じゃなかった、適当に食料品と日用雑貨を補充しに、週末夜の繁華街へと繰り出した。


つづけたい

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