episode10
「競争? 」
ラクは突然クリュに言われたことを反復し、首を傾げた。
するとクリュはその場でくるくると回りながら続きを言った。
「そう!競争!ここから洞窟まで競争しよ! 」
「でも私その洞窟の場所わからないよ? 」
「あ……そうだった……」
「なら私が行く途中に目印作っていくのでそれを見て走ればいいんじゃない? 」
ふと思いついたようにハリュが言うと、クリュはハリュを指さして「それだ! 」ってさけんだ。
「なら目印はわかりやすいほうがいいですね……。一度家に入りましょうか。そこで目印になりそうなものを探しましょう」
「賛成!ラクさんも行こ! 」
「え、私も? 」
「確かにラクさんに選んでもらった方がやりやすそうですね」
「でしょ!?早速行こ」
クリュはそれからラクの腕を引っ張って家のほうに歩いて行った。
〇――〇
ガチャ――という音ともに開いた扉は、薄暗い家の中に陽の光を招き入れた。
そしてその光の流れに乗るように、ラクはクリュに手を引かれて家の中に足を踏み入れた。
「は、入ってください」
「お、おじゃましまーす。――っ!!」
その家に入った瞬間、目の前に広場る光景にラクは呆然とした。
部屋の中は陽の光があまり差し込んでいない薄暗い空間で、家具は最低限の物。
中心には古く、背の低い長方形の木製テーブル、2つの丸太を切り取っただけのような円柱の椅子、部屋の端にはきれいにたたまれたいくつかの布と、古いわらでできた1つのベットが置かれていた。
どれも自分たちで作ったといった感じでいい雰囲気なのだが、問題は現状だ。
いたるところに乱雑に積まれたアイテムの数々。
ずっと使われていなかったかのように埃がたまり、天井には蜘蛛の巣が張っていた。
床の一部は朽ちて陥没しており、いまはそこに別の板を重ねて応急処置をしているようだった。
一言でいえば元空き家。
それも数年単位で使われていなかった可能性のあるその家は、いまにも壊れるのではないかという不安さえ抱かせる内装だった。
「えっと……確かこのあたりにあったかな?――あれ?ねぇクリュ。あの赤い棒ってどこにあるか知らない? 」
「ん~?あれなら前薪として使ったじゃん」
「あ、そうだった」
二人は平然とその家に入ると、いつもやっているかのように部屋の中をあさり始めた。
「ちょ、ちょっと待って」
ラクは慌てて二人に声をかけ、自身も中に入ると、床にに座っているハリュの前でしゃがみこんだ。
「二人ともいつからここに住んでるの? 」
「いつから?――えっと……正確には覚えてないですけど……30日くらいだたかな……」
「じゃぁそのぐらい前からずっとこの家に住んでるの? 」
「はい」
「そう……」
ラクはそれだけ言って立ち上がった。
正直どうすればいいのかわからない。
二人がこの家に何も気にすることなく住んでいるのは見捨ててはおけないが、掃除はできてもそれ以上のことは今のところ何もできない。
新しく家を建てる力もない。
現状は本当にどうすることもできそうにない……。
ラクは歯をかみしめ、手をぎゅっと握ると、今度はその場からクリュに話しかけた。
「ねぇクリュちゃん。競争はまた今度にしない? 」
「え~!!なんで? 」
「ほら、目印になりそうなものもないしさ、せっかく競争するなら場所も人も完璧な状態のほうがいいと思わない? 」
「でもでも……」
「クリュ? 」
「クリュちゃん? 」
「だって……お姉ちゃんと今度いつ会えるかわからないし……。さよならしたらもう会えないかもしれないじゃん……」
そういうことね……。
ラクは心の中で何かを確信すると、ギシギシと床を鳴らしながらクリュの元まで歩いて行き、その場でしゃがみこんだ。
「ねぇクリュちゃん」
「なに……? 」
「今度また遊びに来てもいい? 」
「え……? 」
「今日は用事があるからそんなに長くは一緒にいれないけど、またここにきてもいいかな? 」
クリュはそれを聞くといきなり顔を上げてラクに詰め寄ってきた。
その目にはうっすらと涙がたまっている。
「い……いつでもきて!!待ってるから!ボクたちここで待ってるから! 」
「うん。ありがと。――じゃあいこっか」
「うん!! 」
クリュは腕で涙をぬぐうと、勢いよく立ち上がって扉を通り抜けていった。
「二人ともはやくはやく~!!はやくしないと置いてっちゃうよ~! 」
「あ、クリュ待って!! 」
それに続くようにハリュも家から飛び出していった。
そしてラクも。――とまではいかないが、二人を追ってゆっくりとその家から出て、そっと扉を閉めた。
いつの間にか4章も10話目になりました。
まだまだ秘密も必要なアイテムも多いこの章。
はたしてこれからどうなることか……
それではまた次回。
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