episode7
ラクが【北:森林エリア】の中で開けた場所にたどり着くと、そこには思いもよらない光景が広がっていた。
まず最初に目に入ったのは小さな石と木で造られた古民家。
規則的に積まれた土台の石とその上から生えているように打ち込んである支柱、外壁の木、三角屋根の質素な建物だった。
そのほかにも周りには小さな畑、2把のニワトリ型のMOBが入っている小屋、そして物干しざおが点在していた。
その光景を前にラクは口を開けて突っ立ったまましばらく動くことはなかった。
「な……ええ?誰か暮らしてるの? 」
正直こんなものがあるとは想像していなかった。
どうせまた【古石板の岩巨人】みたいなやつがいるだろうと身構えていたのがばかばかしいぐらいだ。
おまけにこの森林とのミスマッチ感といい、どうしてこんな危険な【北:森林エリア】で生活しているのかが不思議でしょうがなかった。
恐る恐るその家に近づき、コンコンっと木製のドアを数回たたいた。
……
コンコンッ
もう一度。
だが返事は一切なかった。
中で物音がしているようにも聞こえない。
「いないのかな……? 」
ラクは扉から離れると物干しざおのほうを見た。
その竿にはだれかの使っている白いタオルケットがピンと干されており、その向こうの際にはさっきまで隠れて見えていなかった切株と、その上に包まっている白色のなにかがあった。
風に吹かれてもピクリとも動かないそれは、よく見ると干されているタオルケットと似たもので、何かをくるんでいるように見えた。
しかもさらによく見るとわずかに人の足のようなものが見える。
「……」
ラクは念のため、白いローブの中で腰の短剣に右手を添えると、ゆっくりと音を立てないようにそのモノに近づいて行った。
僅かに吹く風がローブと髪をなびかせ、干されているタオルケットがひらひらと揺れている。
ニワトリ型のMOBが入っている小屋の横を通過し、物干し竿を迂回して切株の前にたどり着くと、ラクは目を丸くして剣に添えていた右手を下した。
そこにあった物体。
それはタオルケットに包まり、切株に横たわってぐっすり眠っている褐色の少女だった。
髪はショートの銀色、褐色と言ってもすこし強く日に焼けた程度の肌色で、ちいさい手や体を見るに現実だと中学か、小学3~6年生といったところだろう。
その少女はかわいらしい寝息を立て、肩を上下に動かして気持ちよさそうに眠っていた。
「子供……この子もNPCなのかな?」
プレイヤーだったらここまで無防備なことはできるだろうが、【セーフティゾーン】でもないこの空間で眠っているこの少女がNPCだった場合、相当危険なことに間違いはない。
いつ敵対MOBに襲われてもおかしくないからだ。
ラクは念のため少女が起きるまでここで休憩をすることにした。
すこし聞きたいことがあるからだ。
切株に背中を預けるように腰かけたラクは、ウィンドウを開き、インベントリから一つの箱を取り出した。
それは握りこぶし程度の大きさのもので、特に装飾をされていない灰色の箱。
それを右手で持ち、左手で軽くその箱にタッチをして少し離れた場所に放り投げた。
カシャ、カシャ、っと数回転がり、最終的には5メートルほど先で止まったその箱は、突然微弱な青い光を放ち始めた。
そしてその光の中、箱の分解と同時に4本の脚、たくましい体。
ふさふさとした毛並みにシュッとした逞しい顔の一匹の狼型のMOBが、【ハンターフェンリル】が姿を現した。
「ん~んん?ハリュ~おかえ……り? 」
突然ラクの後ろで少女のものと思われる声が聞こえた。
ラクは上体を動かして切株の上で寝ている少女を見た。
するとその少女は上体を起こし、肩にタオルケットを掛けて【ハンターフェンリル】のことをまじまじと観察していた。
それから目線は下へ。
少女をじっと見ているラクのほうに視点を移動させた。
そして二人はばっちりと目が合った。
それから少女は数回、【フェンリル】とラクのことを見ると、ニィっと歯を見せて笑って勢いよく立ち上がった。
それからタオルケットを切株にのこして跳躍。
【フェンリル】とラクの間に着地した。
「やい!狼!!これ以上この人に危害を加えるのは許さないぞ!! 」
「……はぁ!? 」
ラクは状況が呑み込めず。口を開けて少女を見ていた。
いきなりの謎の少女の登場。
予想できたでしょうか?
この少女は誰なのか。何をしているのか?
それではまた次回!
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