episode14
「それで、どうするの?」
【ナツハ】のほうを見てため息をついたカデンに対し、アキレアは自信ありげにそう聞いた。
カデンが【ハアラシ】をラクが使役していると想定して近接戦闘型のプレイヤーの大部分を送ったのだが、それはアキレアにとって想定内のことだった。
そもそも【ナツハ】は、遠距離からの攻撃を主体として攻撃するのが最もダメージを与えやすいのだが、そのためにこの場に弓使い、盾役ばかりを残した。
盾役が守り、弓使いが攻撃するために。
そして近接戦闘型はできる限りそっちに攻撃がいかないようにターゲットをとるために攻撃をする。
だが、時間までに倒せる確率は極めて低い。
なにせ、【蛇龍ハアラシ】との戦闘でさえ、3時間以上かかったのだ。
制限時間が決まっている中、それまでに【ハアラシ】よりすこし少ない【ナツハ】のHPを削り切るのは不可能だ。
しかし、【ハアラシ】戦のために送り込んだプレイヤーがいればそれは可能だったかもしれない。
【激流島】で【ナツハ】と最も多く対面し、先ほどプレイヤーが来る間に特性、攻撃、ステータスを十分に確認したアキレアだからこそ思いついた作戦だった。
そしてそれらがうまくいくと想像し、ある場所に箱を隠したのだった。
カデンはため息をもう一度つくと、アキレアに向けてもう一度剣を突き出し、問いかけた。
「なぁ…もしお前がこの場でやられたら、あの【ナツハ】はどうなるんだ?」
「それはわからないなぁ。どうなるんだろ」
「おい、真面目に答えろよ……」
「ほんとだよ!お姉ちゃんはそのあたり確認したと思うけど……私は気にならなかったし」
「はぁ……まぁいいか」
カデンは両手の剣を一度鞘に納めると、インベントリから赤色楕円の木の実を取り出し、しゃがんでそれをアキレアの顔の上で握りつぶした。
ブシュっという弾けたような音がして、拳の隙間から赤い液体が滴り始め、カデンはその液体をアキレアの口の中に1、2滴落とした。
「っ!!まさか……」
アキレアは自分が口に含んだその液体が、木の実の正体を悟って目を大きく開いた。
それからアキレアに効力がで始めたことを確認したカデンはゆっくりと立ち上がり、握っていた木の実を捨てて手を拭いた。
それからアキレアをにやりと笑いながら見下ろした。
「お察しの通り、【キノエの実】だよ。効くだろ?」
「ほんと……だよ…体が全く動かないや……」
カデンがアキレアに飲ませた液体が入っていた木の実、【キノアの実】は、【東の森林エリア】で取れる木の実の一つだ。
楕円型の赤い木の実で、その果汁は強力な麻痺効果を持っている。
ひとたびそれを飲めば、10分。
つまり【ハアラシ】の麻痺攻撃と同じ時間だけ動けなくなる。
これは普段はMOBに対して使ったり、麻痺効果を逆転させて麻痺解除のアイテムを作るときに使ったりするが、当然プレイヤー相手にも有効だ。
「そこで見てな。俺らは【ナツハ】と戦ってくるから」
カデンはそういうと、アキレアのもとを去り、【泳龍ナツハ】の元へと走っていった。
それを見たアキレアは必死に動こうとするが、麻痺のせいで思った通りに動かず、立ち上がることができなかった。
「あー。これはもう持たないかなぁ……」
どうにか体を横に向けたアキレアは、【ナツハ】とプレイヤーの戦闘を眺めてていた。
時間まで持ちこたえることを祈って……
「っ!!氷塊来るぞ!!盾隊用意!!」
近接戦闘型プレイヤーの一人、【ナツハ】の顔の側面まで高く跳んでいたプレイヤーが【ナツハ】と向き合うように展開しているプレイヤーたちに向けて叫んだ。
【ナツハ】のわずかに開いている口のなかでいくつもの氷塊が形成されおり、口の中からは冷気が漏れ出していた。
そして大きく口を開き、バシュンっという音を出して氷塊はプレイヤー達めがけて一直線に飛んでいった。
その数10個。2メートルほどの円錐の氷塊が広範囲に広がって飛んでいった。
プレイヤー達はそれに対応するため、盾役が前に出て【身体強化:ディフェンス】を発動。
一列に並び、持ちこたえるために少しかがんで盾を前に突き出した。
「くるぞ!!負けるなよ!!」
「はっ!そっちこそ!!」
そしてすぐに氷塊がプレイヤーたちを襲った。
ある氷塊は手前の地面に突き刺さり、ある氷塊は盾もろともプレイヤーを吹き飛ばし、ある氷塊は盾に負けて砕け散った。
地面に突き刺さった氷塊はその場で砕け散り、粉々になった氷と円錐に掘られた穴を創り出していた。
吹き飛ばされたプレイヤーは全員そのまま光の粒子となって消滅した。
しのいだプレイヤーたちも多かれ少なかれ貫通ダメージを受けており、第二次攻撃が来たら防ぐことは不可能な状態だった。
「くそ!威力が高すぎる!!急いでくれ!!」
大ダメージを受けたトウジ達が片膝をつき、盾を支えにしているのをみたゼラが、後方に控えるプレイヤーたちに向けて叫んだ。
その相手は後方に控えるプレイヤーたちを指揮するギンヨウ。
そしてそれを含めた弓使いのプレイヤーの集団だ。
彼らは横位置に並び、矢を引いて弓を構え、狙いを【ナツハ】に定めていた。
ギンヨウは同じように弓を引きながら、ゼラに、前衛にいるプレイヤーまで聞こえるような音量で叫んだ。
「待たせたな!弓兵全員、準備が整った!」
一体アキレアは箱をどこに隠したのか。
ラクはどうなっているのか、【ナツハ】はどうなるのか
次回は【ナツハ】戦をお送りいたします
それではまた次回!
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