episode10
投稿予定だったものに変更しました
【泳龍ナツハ】とアキレアと対峙するプレイヤーたちは、一度作戦を考えるためにカデン達を中心に囲むように集まっていた。
【ナツハ】と本気のアキレアをどうやって倒すか。
それを考えるために……。
「――で、何か策でもあるのか?」
トウジが早速眉をひそめながらカデンに聞いた。
カデンは首を横に振り、苦笑いをしながら言った。
「それが……実はないんだよ」
「は?」
「まずは【ナツハ】の特性を思い出してくれ。あれとほぼ同系統のアキレアが並んだんじゃ、まず人数が足りないんだ」
「なるほどな……でも方法がないことはないんだろう?」
「ん?ああ、確かにないことはないんだが……」
カデンはそういうと、ウィンドウを開き、チャットからあるプレイヤーを選択し、ボイスチャット機能を使ってある人物に回線をつなげた。
そして程なくしてその人物の声が聞こえた。
『貴殿から訪ねてくるとは珍しいな。何用だ?』
「いきなり本題ですが、頼みたいことがあるんです」
『頼み事?もしや我々の前に佇む【ナツハ】とアキレア殿についてか?』
「はい」
『承知した。そちらに行くからしばし待たれよ』
そういうとその人物は一方的に回線を切った。
それからすぐにプレイヤーをかき分けてやってきた。
まず現れたのは通話の相手だった侍のような恰好をした長い黒髪を後ろで縛ったギンヨウ。その後ろについて行くような形で、赤い防具を身にまとった赤髪の男性、ゼラとチャイナドレスのような防具を身にまとったピンク色の髪の女性アオイ、そして鳥の羽が付いた茶色い帽子をかぶった黄緑色の髪のユリが歩いて来た。
「カデン殿。あれについてのことだろう?なら我々も助太刀しよう」
まだカデンは何も説明していないのだが言いたいことは把握したらしい。
カデンはギンヨウの言葉にうなずくと、すぐに作戦会議を再開した。
アキレアは剣をもう一度地面に突き刺して【ナツハ】の足に腰かけて、カデン達が話し終わるのを待っていた。
もちろんこの隙をついて【ナツハ】に一掃してもらうという方法もあった。
しかしそれではアキレアが楽しめない。
高木P|(目の前で楽しそうに話してるゼラ)にイベントの運営側に引きずり込まれ、みんなとワイワイと話すこともできずに一周年記念イベントを楽しまなければならないうえ、参加する全プレイヤーが敵。
制限時間まで全力で箱を守らなければならない。
正直それだけだったら間違いなくアキレアは負けていたし、全速力で逃げるだけで全く楽しめない。
だがいまは頼もしい相方とラクがいる。
そのおかげで【ナツハ】とともにプレイヤーたちと戦うという誰も味わうことのできない体験ができている。
ならこの時間、全力で戦った方が楽しいに決まっている。
だから攻撃しない。
思いっきり暴れて、思いっきり楽しみたいから。
箱のことなんてどうでもいい。
あんなものを守りながら戦ったら実力を発揮できない。
だから事前に隠しておいたのだ。
だからアキレアはカデン達の準備が整うまで、ただただ座ってじっと待ち続けた。
それから数分後、作戦が決まり、準備が整ったカデン達は改めてアキレアと対峙した。
だが、それとは別に、アキレアを避けるように迂回しながら走っていく集団がいた。
その集団は低レベルプレイヤーと、ヒナツとユリだった。
アキレアはその集団を一瞥すると、カデン達に向かって問いかけた。
「ねぇ、あの集団って?」
「おまえがそんなやつを従えてると、もしかしたらラクは【ハアラシ】を従えてる可能性が出てきたんだよ。だから【ハアラシ】との戦闘に備えて、というより迅速にラクから箱を奪う要員として送ったんだよ」
「あっさり答えてくれたけど、そんなこと仲間の私に教えてよかったの?」
「安心しろ。ここにいるのは本物の実力を持つプレイヤーばかりだ。お前にラクに教えさせる時間なんて与えるかよ」
「ふーん。まぁいっか。始めよ!」




