episode8
「……じゃあわたしそろそろご飯だから。アキレアも来るのよ?」
「はーい。じゃあカデン、また明日!」
「おう!二人ともまたな」
カデンが手を振って送ってくれているのを、視界が光に包まれながら見たラクとアキレアはログアウトした。
「――ん……っと」
宿梨はベッドから起き上がってヘッドフォン型端末を頭からとると、下校中に買ってきたクレマチスの鉢植えをもってリビングに向かった。
パタパタと階段を下りていると、自分より少し遅くログアウトしたはずの陽優がリビングに入っていくのを見た。
それから宿梨も続くようにリビングに入っていった。
「ってなにこれ!?」
リビングに入ると、所狭しと大量の贈り物が床から積み上げられていた。
小さいものは手紙から大きいものは高さ30㎝ほどの段ボール箱まで。
何が入っているかは定かではないが、とにかく大量にあった。
「これ……どうしたの?」
なんとか物と物の間に足を入れ、食卓までやってきた宿梨が鉢植えを床に置きながら言った。
大体予想はついているけど……
「ああ、これは会社の社員とかお世話になっている契約先とかからいただいたんだ。半分ぐらい」
「半分?もう半分は?」
「『タイラント』のメンバーから」
「あなたのはまだ言ってなかったと思うけど、『タイラント』って私たちの大学の同級生とか親戚で構成されてるのよ」
それは宿梨の予想の斜め上を言っていた。
前半の父親の発言は予想通りだった。
だが後半『タイラント』の事実は完全に不意打ちだった。
しかしそれなら自宅の場所を知っていてもおかしくはない。
宿梨はちらっと後ろを見た。
それからため息をつくと、自分の椅子に座った。
「あれ、どうするの?」
「あとで全部開けようよ!」
「でもそれじゃあイベント、間に合わないよ?」
「そうじゃん!――でもこれ……言い方悪いかもしれないけど邪魔じゃない?」
「まぁ……な。どうするか…」
「私たちはイベントの運営をしないといけないし……」
――チラッ
「………」
「私は8時に街で待ち合わせしてるし。――それまでに宿題とお風呂が……」
――チラッ
「……はぁ~。いいわよ。私がある程度整理しておくわ。けど時間になったら私も行くからね?」
「さすがお姉ちゃん!」
「さすが宿梨ね」
「助かるよ」
さっきからチラチラこっち見てたくせに……
完全に押し付けられてしまった。
まぁ少し中身が気になっていたのは確かなので、漁る口実ができたと思えばいっか。
「それは置いといて食べよっか」
「そうだね。もうお腹ペコペコだよ」
「いつもじゃない?」
「なんで!?」
それから大量の小包に囲まれた「クレマチス・オンライン」の一周年記念プチパーティーがはじまった。
「じゃああと頼んだからな」
「お願いね。適当にまとめててくれていいから」
「わかった」
食べ終わった後、食器を片付けて両親は出て行った。
それから少し時間を空けて陽優も食器を片付けると、手を振って颯爽と出て行った。
「さてと、どれからやろう……」
宿梨はそうつぶやくと、服の裾をまくり、右手にはさみを持つと、足元にあった手ごろなサイズの小包のまえにしゃがみ込んだ。
ベリベリベリベリ……
小包をくるんでいたガムテープをはがし、丁寧に開封していった。
まず中から出てきたのは手紙。
『このたびは「クレマチス・オンライン」リリース一周年おめでとうございます。このたびは……』
宿梨は途中まで読むと、そっと机の上に紙を置き、内容物を取り出した。
衝撃から守るクッション材をとり、中から出てきたのは一枚の色紙と紙箱だった。
色紙枠内の中央にはキャラクターのイラスト、下部にはメッセージとサインがしてあった。
そして箱の中、というよりそれは菓子箱で、中には某有名菓子店のクッキーセットが入ってた。
「次」
宿梨はそれらをそっと食卓の上に置いた。
ごみはプラと紙に分けてまとめていくことにした。
「次は……これにしよっと」
宿梨が次にとったのは確認が楽そうな小さな箱だった。
同じように梱包をとり、箱をゆっくりと開けた。
今度中に入っていたのは特注品と思われる時計だった。
金と銀の二色のパーツで構成され、植物のようなパーツのちりばめられた時計だった。
そして同じように中には手紙。
『拝啓……』
「やめとこう」
宿梨は紙をとり、文字量を見た瞬間にそっと箱の中に戻し、テーブルの上色紙たちの横に置いた。
それからもどんどん、集合時間になるまでひたすら開けていった。
その数実に35個。
時間でいうと1時間ほどだった。
カデン達との集合時間まであと30分ほど。
宿梨は10分前まで開封をしていくこと西、作業を再開した。
食器と手紙
菓子箱と手紙
グッズと手紙
手紙・手紙・手紙……。
そんななか、かなり珍しいものが出てきた。
「これって……USBメモリ?なんでこんなものが……」
それは特別変わったものでもない。
いたって普通の、どこにでも売っているものだった。
それがどうして封筒の中に?
手紙は入っていない。
これだけが入っていたのだ。
それにこういう時の贈り物で送ってくる代物だ。
何か仕掛けはあるはずだが……
「って時間じゃない!急がないと」
慌ててUSBを机に置き、宿梨は自室に走って戻っていった。
これから始まるのは何にもわかっていない一周年記念イベント。
どんな内容なのだろうか。
宿梨は少しドキドキしながら端末の電源を押した。
かすかながらファンの回る音を聞きながらゆっくりと目を閉じた。
次第に遠くなっていく意識。
そして宿梨は「クレマチス・オンライン」の世界に意識を移動させた。
なんだか花火の音がする。
お祭り騒ぎの声が音楽が聞こえる。
宿梨はゆっくりと目を開けた。
「へぇ……完全にお祭りね」
そこに広がっていたのは道沿いに立ち並ぶ屋台。
向かい同士の建物の屋根でつなげた紐からつるされている逆三角形のカラフルな布。
空中にはバルーンのようなものが浮かび、どこからはわからないが紙吹雪が上から、街のどこからか花火が打ち上げられていた。
それは正真正銘。
神社の前などで催されるあれ。
祭りと出店だった。
その光景に、賑わいにラクは圧倒されながらも、集合場所である『アマドコロ』に向かった。
まずは総合評価900PT突破ありがとうございます!
こうしてこれまでの数値を見ると、「ああ。いまって結構たくさんの方が読んでくださってるんだよなぁ」
っておもいますね。
これからもよろしくお願いします!
それではまた次回!
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