episode7
陽二たちとのショッピングから一週間と数日が経過した。
PTは一週間後の土曜、5月20日に開くことを両親に言うと、両親が追加で呼びたい人たちも参加することになった。
今日は月曜日。
授業が終わり、宿梨は陽二と一緒に下校している最中だ。
いつも通ってる通学路を自転車でゆっくりと走っていた。
「ところで宿梨はイベント情報見たか?」
信号待ちをしている時、ふと陽二が前を見ながら口を開いた。
「イベント情報?何か更新されてたの?」
「ああ。一周年記念イベントが発表されたんだ」
「へぇ。――どんなの?」
そこで信号が青に変わり、二人はペダルをこぎ出した。
その間は無言。
二人はどんどん進んでいった。
そして次に信号は運悪く赤。
二人は歩道前で止まって話を再開した。
「何でも大規模イベントらしいぞ。詳細はまだだけど」
「まだ?」
「ああ、前の抽選イベントの時もそうだったんだ。詳細は当日まで未発表。明かされるのは時間と場所、参加条件だけ」
「ふーん。で、どんな内容?」
「イベント名は『花旅フェスティバル』参加条件はなし。時間は16日21時ちょうど。場所は第一の街全域。街の中ならどこでもいいだとさ。せっかくだし一緒にやないか?ほかのやつも誘って」
「いいよ。場所は?」
「あとで連絡する。じゃあな!」
信号が青になり、陽二は横断歩道を渡って右折した。
それから宿梨も歩道を渡り、まっすぐ進んでいった。
登校経路の途中にある商店街の前を通った宿梨はあることを思いつき、自転車を引いて中に入っていった。
夕方だけあって中は主婦でにぎわっていた。
辺りからは店主の活気のある声が聞こえ、主婦同士の他愛もない話がそこら中から聞こえた。
幼いころからたびたび来ている見慣れた商店街。
その中にある一見の花屋に宿梨は立ち寄った。
自転車を止めて店内に入ると、そこは様々な花の香りが漂っていた。
小さいころからよく来ている花屋。
最近はあまり来ていなかったので、すごく新鮮な気分になった。
「こんにちはー!」
店内に店員がいなかったので、その場で呼んだ。
すると奥から、すらっとした20代ぐらいの女性が歩いていた。
その女性はここの元店主の娘で、宿梨が小さいころから知っているお姉さん的な存在だった。
「はーい。って宿梨ちゃんじゃない!久ぶり!」
「お久しぶりです。元気そうで」
「もちろんよ。それより今日はどうしたの?」
「えっと……クレマチスっておいてありますか?」
それを聞いた女性は目を丸くし、フフっと笑った。
「ひょっとして『クレマチスオンライン』で?」
「はい。最近やり始めたばかりですけどね」
「そっか。――ちょっと待ってて」
そういうと、女性は再び店の奥に入っていった。
それから1,2分ほど花を観察して待っていると、女性が一つの鉢植えも持って戻ってきた。
「お待たせ」
そういってカウンターに置いた鉢植えには数本の支柱に蔓が巻き付き、その先に青い花を咲かせていた植物があった。
「これがその?」
「ええ、クレマチスよ」
「それにして宿梨ちゃんもあのゲームやってるなんて意外ね」
「……も?」
聞き捨てならない文字に反応し、宿梨は顔を上げて女性の顔を見た。
そういえば聞き覚えのあるような……。だれだっけ?
恐らくこれまで知り合ったプレイヤーの中に似たような声のプレイヤーがいたはずだ。
だがそれが誰だかわからない。
思い切って女性に聞いてみた。
「あの……ゲーム内で会いました?」
「どうしてそう思う?」
「何というか……聞き覚えが……」
「じゃあヒント。私はあなたのこと知ってるわ」
私のこと、『ラク』を知っている?
つまりどこかで会ったことがある……
どこで……
そもそもこのゲームは性別を偽れても声は偽れない。
だから女性アバターでやっていることは間違いない。
宿梨は眉間にしわを寄せ、腕を組んで考えた。
しばらくしてその光景を見て楽しんでいた女性がもう一つヒントをくれた。
「もう一つ。私の使っている武器はハンマーよ。もうわかるんじゃない?」
「ハンマーもって……私を知っている……」
ハンマーもって自分を知っている女性プレイヤーなんて一人しか知らない。
もしかして……
「そろそろ気が付いた?」
「もしかして――セロシアさん?」
答えを聞いた女性は急に真剣な顔になると、宿梨の横まで歩いて来た。
そして両手を上げ……
「正解!」
強く抱き着いて来た。
よくよく考えてみると、こういう多少強引なところとかそっくりだった。
【西 草原エリア】で会った時も、【東 森林エリア】で頼みごとをされた時も。
まぁ東の森林の頼みごとの時は『抽選クエスト』に参加させるのを防ぐためだったけど。
あれらを考えるとこの人がセロシアでもおかしくはなかった。
「いやーやっと気が付いてくれたね。もしかしてこのままわからなかったらどうしようかと思ったよ」
「と、というかなんで私のこと知ってたんですか?」
「ん?そりゃ君のご両親から。少し前にすっごいうれしそうな顔でうちに来たよ?」
あの二人は……
「でもなんでお母さんたちはお姉さんに言ったんですか?」
「ん?そりゃ私もあの人たちに『やってみて!』って言われて始めたし。初期は一緒にプレイしてたからね」
犠牲者がここにも!?
「そ、そうなんですか……」
宿梨は内心お姉さんにあやまると、クレマチスを購入した。
それからイベントに誘い、店を後にした。
これで準備は整った。
あとは今日の夜、どんなイベントが来てもいいように準備をするだけだ。
帰宅し、制服のブレザーを脱いでハンガーにかけ、机の上においてあるヘッドフォン型端末を持つと、ベッドに寝そべって装着した。
「さて、じゃあ始めますか」
宿梨はそういうと、右耳のあたりにある電源ボタンを押し、聞きなれたデジタル音声を聞きな上がら目を閉じた。
そして女子高生の宿梨から、短剣使いの新米プレイヤー「ラク」としての活動を開始した。
今回はあまりしゃべることが……
あえて言うなら新作作成中です!
それではまた次回!
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