episode4
三人は薄暗く、ひんやりとしている地下通路を、ランタンのあかりで照らし、静寂を保ていたその空間に三つの足音を響かせてゆっくりと進んでいた。
そのまましばらく無言で進んでいると、依然として薄暗いが、開けた空間にたどり着いた。
そこは4畳ほどの空間で、突き当りの壁には錆びついている鉄製の両開きの扉があった。
前を歩いていたアキレアは、ランタンを床に置くと、扉を引いた。
するとギイイイィィィという不気味な音を鳴らし、その扉はあっさりと開いた。
「あれ?開いた……。ま、いっか。奥へ進もう!」
アキレアはそれだけ言うと、置いていたランタンを拾い上げてスッと中に入っていった。
「…もうすこし警戒しようよ……」
それを見ていたハルは小さな声でつぶやくと、中を覗き込んでから恐る恐る中には入っていった。
そしてハルはラクについて行く形で中に入っていった。
扉の奥には、湿度の高い広々とした空間が広がっていた。
どこからか水の滴る音が聞こえた。
その音は静かなその空間に響き渡り、まるでラクたちの恐怖心を掻き立てようとしているようだった。
しかしそれは無意味と言わざるを得なかった。
しかし、それは無意味なことだった。
「こういうところって何かあるような気がするんだよね。ねね!手分けして探そうよ!」
「お、いいな。いよいよ宝探しって感じになってきたな!」
「ならアキレアの言う通り、手分けして探しましょう。――といっても私ランタンとか持ってないからどうやって探せば…」
「あ、それなら私のあげるよ。何個か持ってきたから」
そういうと、ハルは手に持っていたランタンをラクの手に握らせ、インベントリからもう一つ取り出し、火をともして奥に歩いて行った。
「さ、私達も探しましょうか」
「はーい!」
アキレアは元気に返事をすると、ランタンをブンブンと振り回して奥に走っていった。
「――いま一番危険なのってどう考えてもアキレアよね……私も気をつけよ…」
アキレアの無邪気な行動を見て苦笑いをし、ラクはランタンで足元を照らしながら壁沿いを歩いて行った。
それから数分が立ち、次第にその暗闇に目が慣れてきたころ、ラクは室内を調べつくして入口の扉の前に戻ってきていた。
結果から言うと成果はゼロ。
財宝どころか、紙切れ一つ見つからなかったのだ。
それはどうやらアキレアとハルも同じのようだった。
二人は足元を照らしながらとぼとぼと戻ってくると、ため息をついてラクを見た。
「だめだった。何一つアイテムはなかった。アキレアは?」
「私も~。なんにもなかったよ……。お姉ちゃんは?」
「私も。どうやらもう誰かが持ち出した後みたいね」
「どうしてそういえるんだ?」
「だって…扉の鍵壊されてたし」
今ラクが背も向けている入口の扉。それをアキレアが開けたとき、ラクは扉を可能な限り観察していた。そして、南京錠のようなものが取り付けられていたであろう金具がこわされていることを発見していたのだ。
なのでラクはその時点で中に何かがある確率はほぼ0に近いのではないかと考えていたのだ。
だがそれをアキレア達には言わなかった。
わくわくして歩いて行くアキレアにそんなことが言えるだろうか……。
否、ラクにはできなかった。
なぜならあまりにもアキレアが楽しそうだったから。
そんなアキレアにこのことを言うとがっかりしてしまう。
だからいわなかったのだ。
ラクは心の中でアキレアに謝っていると、アキレアが開き直ったかのように背筋を伸ばした。
「んん~……はぁ。さて、何もなかったし帰ろっか」
案外ショックは少なかったようで、すぐにいつもの無駄に元気なアキレアに戻っていた。
それに内心ほっとしたラクは、その安心が声に現れるのほ防ぐため、黙ってうなずいた。
それを見たハルは、すこし未練がましいような眼で室内を一瞥し、アキレアのほうを向いた。
「まぁ……私ももういいかな。何もなかったのは残念だけど」
「そうだよね。せめて何かあればよかったんだけど……」
「まぁここで話すのもなんですし、一度第一の街に戻りましょうか」
「そうだな、よし!行くか!」
ハルのその言葉を合図に、三人は来た道をたどり、第一の街へと戻っていった。
【西 森林エリア】
第一の街に戻るため、木々の隙間を縫うように来た道を戻っていると、ふとハルがラクに質問を持ち出した。
「なぁラクさん。一つ聞いてもいいか?」
「はい。なんでしょうか」
ラクは目の前で枝から垂れ下がるツタを切り、どんどん前に進みながら答えた。
「今更なんだが……本当に初心者か?」
「どういう意味ですか?」
「いや、なんというか最初にあった時の岩巨人との戦いのときもそうだったんだが……その…なんというか…」
ハルがうまく言葉に表せないでいると、ラクの後ろをついてきていたアキレアが代わりに言いたいことをしゃべってくれた。
「それって…動きが初心者じゃないってこと?」
「そうそれ!普通は初心者ってあんなに思いっきり走ったりしないんだよね。けどラクさんは違った。もしかしてこのゲームやる前他の作品やってた?」
「いいえ特には。というか小さい時以来ゲームとは無縁の生活をしていましたので」
「それって友達とカラオケとかゲーセンとかで遊んでたってことか?」
「いえ、ざっくり言って運動です。その中でもバスケを中心に」
「そういうことか。まぁなんとなくは理解できたよ。さ、急ごうぜ」
そこまで深く詮索することなく、ハルはこの話を打ち切り、三人は他愛もない話をしながら森を出るために道なき道をどんどん歩いて行った。
それから特に何事もなく第一の街に戻ったラクたちは、時間が時間だけにすぐにログアウトをした。
「ん……んん~~」
もう夜だけあってさすがに肌寒くなってきていた。
数時間ぶりに見る天井にどこか安心した宿梨は状態を起こし、固まった体をほぐすために背筋を伸ばしすと、ベットから降りた。
それから頭につけていたヘッドフォン型端末の電源を落とし、勉強机の上に置いた。
なんだかんだで楽しんでいるこのゲームは宿梨のこの数か月でできた深い心の傷をいやしてくれた。
なんだかんだで陽二と家族には感謝していた。
今度何かお礼でおいしいものをみんなに作ってあげよっと。
宿梨はヘッドフォン型端末に右手を乗せてながら考えていると、下から陽優が呼ぶ声が聞こえた。
「おねえちゃーん!ご飯だよー!」
「わかったー!今行く!」
宿梨は薄い上着をはおり、自室を後にした。
それからパタパタっとスリッパを鳴らしながら階段を下り、リビングに入っていった。
すると食卓を囲むように陽優と両親が椅子に座っており、宿梨に注目していた。
「お待たせ。じゃあ食べよっか」
「だね!もうお腹ペコペコだよ」
それから宿梨たちはおいしい料理に舌鼓しながら他愛もない話をしてよりを過ごしたのだった。
その頃ラクの自室では、スマホに一通にメッセージが届いていた。
送り主は陽二。
内容は……
さぁ、これで【ベイリー古城】を舞台にしたものは終わりましたが、もう少しだけ間章は続きます。
陽二(カデン)が送ってきたメッセージの内容とは何なのか?
それではまた次回!
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