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episode25

「えー…では始まりの挨拶を私から…。皆の者!よく頑張ってくれた!まずは結果を報告しよう!ゼラ!あれを」

「了解」


ゼラはインベントリからいくつかの素材アイテムを取り出した。


【蛇龍の緑鱗】

【蛇龍の黒鱗】

【蛇龍の毒牙】

などなど……



つまり


「我々は【蛇龍ハアラシ】に勝利した!」


それを聞き、プレイヤーたちは歓喜にあふれた。

飛び跳ねて喜んでいる者や叫んでいる者、拍手をしている者など、喜び方は様々ではあったが、ここにいるすべてのプレイヤーが一体となった瞬間だった。


それは厨房から聞いていたラクも同じだった。

ラク自身は戦ってはいないが、あの場に居合わせ、大苦戦するプレイヤーを見た。

だからこそわかる。

どれほどすごいことなのか、どれほど大変なことなのかを。

ラクはギンヨウたちが勝ったことがうれしくなり、本来作る予定ではなかった料理を作るため、食料保管庫の中に歩いて行った。



「……そういえばあの時何が起こったか覚えてるか?」


わいわいと食事をしながら他愛もない話をしていたゼラが、思い出したかのようにカデンに聞いた。


「ふぁのふぉふぃっふぇ?」

「せめて口の中のものを飲み込んでからしゃべれよ。それぐらいまつから」


カデンはうなずくと、少しして口の中のものを飲み込んだ。


「……っで、あの時ってのは?」

「ほら、一度全滅したとき。あの後なんでかわからないけど5人だけ復活しただろ?」

「あー、あの時か。それが俺にもさっぱりわからないんだ」

「わからない?【再臨】じゃないのか?」

「そんなわけない。【再臨】は自身の復活だけができるスキルだ。そんなことができるならとっくにやって……」


カデンはそこで黙り込むと、そのまま厨房に向かって歩いて行った。


「ラク。一つ聞きたいことがあるんだが……」

「ん?なに?」


ラクはすでに保管庫から出て料理をしていた。

ボウルの中身を手でこねて混ぜていたラクはカデンの声に反応してその方を見た。


「なにやってるんだ?」

「なんとかくもう一品ね。それよりなに?聞きたいことって」

「最後の【ベイリーツ古城】の前での戦闘の時、それ達が全滅したのは知っているか?」

「うん。そこまでは見ていたから」

「なら何が起きたか知ってるか?」

「……えっと…」


なんていえばいいんだろう…


正直に言ってもいいのだが、それではだめなような気がした。


【再炎】は代償として裂傷が、自身のHPがある。

それを言うともしかしたらカデン達が抱え込んでしまうかもしれない。

だから、ラクはまだ言わないことにした。

【再炎】のことを。


「【東の森林エリア】でやったクエストでたまたま手に入れた蘇生アイテムがあったんだよ。それが5人

復活させることができるもので……その…それを使ったんだ」

ラクは適当にごまかし、【東の森林】で手に入れたことにした。

それを聞いたカデンはすっかりそうだと思い込み、納得した。


「そうだったのか……なんだか悪いな。そんな聞いたこともない貴重なアイテムを使わしたみたいで」

「気にしないで。私もあの戦いに勝ってほしかったし、それにあの時使わなかったら一生使わない気がするし」

「そうだな。でももっと前に言ってくれてもよかっただろ?」

「そ、それは……忘れてただけ!とにかく、料理もう少しでできるから店のほうでみんなと食べててよ。できたらもっていくから」

「わかった。終わったらそのままこっちで一緒に食べような」


そういうと、疑問が解決して満足したカデンは店側に戻っていった。

カデンが向こうで会話をし始めたことを確認したラクは、混ぜ終わったボウルを置いてほっと胸をなでおろした。


「あっぶな・・・カデンがアイテムの名前を聞いてこなくて助かった……もし聞かれてたらばれるのは時間の問題だったかも……」


そういうと、ラクは最後の料理、「ハンバーグ」を作る最後の過程、焼きに取り掛かった。



「お待たせ―。追加でもう一品作ったから持ってきましたよー」


ラクはハンバーグと野菜を盛りつけた大皿をもって厨房から出てきた。


「お!ラクさんが来た!こっちこっちー!」


店内がプレイヤーでにぎわっている中、戻ってきたラクを発見したハルが手を振ってきた。

その際に乗るようにハルの元まで歩いて行くと、そこには知り合いの女性プレイヤーが勢ぞろいしていた。

アオイ、セロシア、ヒナツ、ユリ、アキレア、そしてハル。

勢ぞろいしていた。


「皆さん集まっていたんですね。あ、これ追加のハンバーグです」

「お!お姉ちゃんのハンバーグ!こっちで再現できたんだ!」

「まぁ…完全に再現できているかはわからないけどね…」

「それでも作ったことに代わりはないよ!いっただっきまーす!……ん!おいしい!お姉ちゃんおいひいよ!」

「それはよかった……けどアキレア、しゃべるのは口の中のものがなくなってから!」

「……んぐ。はーい」

「ところでラクさん……」


アキレアと話していると、なぜか苦笑いをしているハルが話しかけてきた。


「どうしたんですか?」

「その……あの……なんだ…かんっぜんに忘れてたんだけど…これ…」


そういうと、ウィンドウを開き、インベントリから一振りの短刀を取り出した。

その剣の金のつばの部分が五枚の花ビラを付けた花を広げたようなデザインになっており、刀身は30センチほどの片刃の直刀、鏡のように磨かれた刃、そして持ち手の部分は赤い布が巻かれていた。

それを鞘に納め、ラクにそっと手渡した。


「これは?」

「ほら…【ベイリーツ古城】に私が行った理由……」

「あ!頼んでた短剣か!」


そう、ラクは【ハアラシ】のいるあの場所に行く前、ハルの店『シュン』に行き、新しい短剣を頼んでいた。

そして本当はハルは【ベイリーツ古城】にラクにその短剣を渡しに行ったのだが、すっかり忘れていたのだ。

そしてそのまま街に戻ってきてしまったのだ。

その結果、今に至る。


「本当にごめん……でも!そのお詫びと言っては何だけど、最高の仕上がりになってるからそう簡単には

壊れないと思うよ。それと耐久治の修復は定期的に来てほしいな。最高の状態を保つためにね」


「わかりました。ありがとうございます。それとこの武器って名前はあるんですか?」

「ああ、あるぞ!【迅刀じんとう神楽かぐら】だ。」

「【神楽】…ですか。いい名前ですね」

「だろ!?戦場を俊敏に動くラクを想像して名付けたんだ!…そしていつかは装備も…」


ハルは勝手に妄想の世界に入ってニヤニヤとしていた。

その光景を苦笑してみていると、ラクの腕を引っ張ってヒナツが強く抱き着いてきた。


「だめ。この装備は変えさせない!」

「ちょっと!なんでヒナツがそれを決めるのさ!」

「これ私と対になってる。だからお姉ちゃんの装備は変えさせない!」

「……いわれてみればデザイン同じだ…。ってそんなことはいい!ラクさんの装備は絶対和風のデザインの方が似合う!」

「こっちの方が似合う」


次第に強くなっていくヒナツの拘束。

両耳から聞こえる声にしばらくの間ラクは何もせずにじっとしてたが、ついに限界に達してラクは【身体強化:アタック】を使って抜けだした。

そして笑顔で、


「二人とも…それを決めるのは私ではないのですか?」

といった。

相も変わらずその笑顔にこもっている怒りは、その場にいたプレイヤーの大半を凍らせた。

それを初めて見たヒナツとハルも同様、口を開けて固まっていた。


「そ、そうだな!私たちが勝手に決めるのはだ、だめだよな!そうだろヒナツ」

「同意……決めるのはお姉ちゃん」

「……わかってくれればそれでいいです。さ!皆さんも固まってないで」


元のラクに戻ったラクを見てほっとしたプレイヤーたちは、その場は先ほどまでのにぎやかな打ち上げ会場に一瞬で戻った。


「……っぷ…あはははははは!相変わらずラクの怒りは恐ろしいな!」


一度見たことがあるセロシアは、ずっとこらえていた笑いが限界に達し、声を出して笑いだした。


「ちょっと!セロシアさん!笑い事じゃないですよ!私着せ替え人形じゃないんですから!」

「はははは……。ふぅ。わかってるよ。でも、素体がいいんだからわからなくもないんだよね……。よし!なら今度新しい装備を作るか!」

「お!いいね!ならぜひ和風のデザインに!」

「和風の装備のお姉ちゃん……いいかも…」

「さんせーい!でもお姉ちゃん装備がなんだか男っぽい気がするからすこしひらひらさせてもいいかも!」


セロシアの提案にハル、ヒナツ、アキレアの順に意見を出していると、そこに面白がってアオイとユリが参加してきた。


「ならいつもラクを見ている私からの提案も無視できないわよね?」

「わ、私も!!私に勇気をくださったラクさんの装備のデザイン!お、お手伝いさせてください!!」


それからいつの間にか見知った顔が集まり、打ち上げの一角がラクの新装備のデザイン会議が始まっていた。


「忍者とかどうだ?」

「お、いいねぇ!さすがカデン!」

「否!ラク殿には巫女衣装が似合うと思うぞ!」

「ギンヨウ…それはあんたの趣味だろ……」

「む?ゼラもそう思わぬか?似合うと思うが……」

「……意外といいかも…」

「であるよな!」

「私は和服のデザインもいいですが、女騎士風のデザインでもいいと思いますよ?」


どうしてこうなったんだろう……


ラクはためいきをつくと、こっそりとその集団から脱出してまだ残っている料理をちょっとづつ食べていった。


「……あ、意外とハンバーグうまくできてる」


【第三章:その文字の示す先】完


次回【間章2】


さて無事に第三章を終えることができました。

個人的には満足の行く内容でしたが、人によって【ハアラシ】戦の最後を見たかった!って人もいるかもしれませんね。

ですが今回は予想を裏切り、このような形をとらせていただきました。

理由はいくつかありますが、決め手となったのは主人公であるラクが「戦っていない」ということでした。

・・・・・・さて、次回からは【間章2】をお送りいたします!

内容は・・・始まってからのお楽しみ!ということで!

それではまた次の章でお会いしましょう!

画面上部よりブックマーク、最新話下部より評価、レビューをお願いします!


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