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episode24

人びとの声が、足音が聞こえる。


「……ん…」


ゆっくりと目を開けると、そこは見覚えのある場所だった。

円形に広がる広場、その中央には模様の描かれた柱が置かれている。

広場を囲むように建っている建物はまるでフランスのアルザス地域圏のような印象を持っている。

そう、ここは第一の街、転移柱のある広場だ。

そしてラクはベンチで寝かされており、何かが頭の下に敷かれていた。


「おはよう、お姉ちゃん」


首を動かして街のほうを向いているラクの耳元で、落ち着いた、聞き覚えのある声が聞こえた。


「ひゃあぁ!?」


突然聞こえた声に驚いたラクはベンチから転がり落ち、腰を強く打った。


「いったぁぁ…ってヒナツさん」


あの声の正体はヒナツで、頭の下にあったのはヒナツの股だった。

ヒナツはしゃがみ込み、ラクの顔を除くように接近してきた。


「大丈夫?」

「はい…何とか。それより私、どうしてここに…?」


打った腰をさすりながら立ち上がったラクは、あたりを見回して言った。

さっきまで西の森林エリアの奥にある【ベイリーツ古城】の前にいたはずだ。

一体何が起こったのか…

ラクは顎に手を当てて考えていると、ヒナツがラクの手を掴んで歩き出した。


「え?ちょっと、ヒナツさん?」

「みんな待ってる。『アマドコロ』に行くよ」


にぎわっている大通りを進み、二人は『アマドコロ』を目指して歩いて行った。



―――ガチャ……


ヒナツはゆっくろと木製の扉を開け、『アマドコロ』の店内に入っていった。

ラクもそれに続いて入ると、そこでは大量のアイテムを店内のいたるところに積んで中身を確認しているセロシアがいた。


「セロシア。連れてきた」

「お、来たか。」


セロシアは箱の中身を確認してカウンターの上に置いてある用紙に何かを書き込むと、ヒナツとラクのもとに歩み寄ってきた。


「よ!ラク。って!戻ってきたってことはカデン達も!?やばい!急がないと!」

「セロシアそれは違う。戻ってきたのはラクと『タイラント』の数人だけ。ほかの人は戻ってきてない」

「え?そうなの?」


なぜか慌ててアイテムの数を確認しようとしていたセリシアにヒナツは補足説明をした。

それを聞いたセロシアは素っ頓狂な声で言うと、真意を確かめるようにラクの顔を見つめた。


「え?数人?ヒナツさん。カデン達はまだ戻ってきてないんですか?」

「?…正確にはカデン、ギンヨウ、ゼラ、アオイが戻ってきてない。ほかの『タイラント』のプレイヤーは戻ってきた」


ラクとセロシアは状況が理解できなくなっていた。


ラクの話だとすでにカデン達が戻ってきていることになる。

しかしヒナツの話ではカデン達数人が戻ってきてないという。


「どういうこと…?カデン達は確かに全滅したはず…」


確かに目の前で【ハアラシ】にやられて全員光の粒子となって消えた。

でもなぜ…こんなことになっているのか…


「あ!!あれか!」


ラクは一つだけあることを思い出した。

というよりは痛みのせいですっかり忘れていた。

カデン達が全滅した後、ラクは『再炎】を発動したことを。

ラクはとっさにメニューウィンドウを開き、ステータス画面から【バスターヒリカム】を選択、【再炎】のスキル詳細画面を開いた。


「……やっぱりこれか…」

「ん?ラク。どうしたんだ?」

「お姉ちゃん何かわかったの?」


スキル説明を見て納得したラクを見て、二人は左右からその画面をのぞき込んだ。

そしてそこに書かれていることを見て目を丸くした。


「おいおいおい……とんでもないスキルじゃないか!」

「同意。だけどこれは…」


そこには次のように書かれていた。


【再炎】

スキル系統:支援

発動条件:一定範囲内でフレンド2人を含めた3人以上が10秒以内に連続で死亡する

スキル内容:フレンド2人を含めた5人の復活

      自身のHPの20%分、5人のHPを回復

コスト:自身のHP100%

    その際【状態異常:裂傷】を発動する


つまりこの意見の食い違いの正体はこの【再炎】だ。

ラクがカデン達が全滅したときに発動した【再炎】によって、ラクとカデン達5人が入れ替わるように消滅とスポーンをしたのである。

そしてそのことをラクは二人に説明した。


「……なるほど。そういうことか」

「私も理解した。けどお姉ちゃん【裂傷】。痛くなかった?」

「めちゃくちゃ痛かったです。」

「だろうな。それにしてもよりによって【裂傷】かぁ……あまり何回も使えるようなスキルじゃないな。しかもコストが自身の全HPだし・・・・ラク。このことはこれ以上広めるんじゃないぞ?」

「わかってます。私もこんな痛い目に何回もあいたくないですし。やむを得ない場合だけ使うようにします。」

「ならいい。さて!この話は終わり!二人とも、『サフィニア喫茶店』に行ってくれ、そこでハルたちが準備をしてるから」

「準備?何のですか?」

「それは行ってからのお楽しみ!ささ、行った行った!」


そういわれ、セロシアに店から追い出された。


「なるほど…あれを…お姉ちゃん行こう!」


ヒナツは再びラクの腕を引いて、今度は『サフィニア喫茶店』に向かって歩いて行った。



「こんにちはー」


今度はラクが扉を開け、『サフィニア喫茶店』の中に入っていった。

中に入ると、喫茶店だけあってコーヒーの香ばしい香りが漂っていた。

だが今はそれだけではなく、それ以外に様々な料理のにおいが漂っていた。


「いい香り…」

「あ、お姉ちゃんが来た!ほらはやくはやく!!」

「アキレアもここにいたんだ。ってなになになに!?」


店の厨房スペースから出てきたアキレアは、ラクの元まで走っていくと、背中を押して厨房スペースに連れて行った。


厨房の中に入ると、そこではトウジや『タイラント』のプレイヤーが立って料理をしていた。


「え?なにこれ?」

「ん?お!ラクさん!」


ラクの声できたことに気が付き、トウジはお菓子を作りながらこっちを向いた。


「待ってましたよ!アキレアから聞いてます。厨房と食材アイテムの保管庫の中にある食材を自由に使っていいですよ」

「……えっと…アキレア?」


トウジの言っていることがよくわからない。

ラクは補足セ地名を要求するようにアキレアのほうを向いた。

するとアキレアはとぼけた表情で首を傾げた。


「あれ?言ってなかった?」

「なにを?」

「お姉ちゃんにもここで料理をしてほしいってこと」

「聞いてない!なに?つまりここで料理をすればいいってこと?」

「そういうこと!」


ラクはアキレアの言い忘れに頭を抱えていると、トウジが料理を終えて歩いて来た。


「私からもお願いします。恥ずかしながらここにいるプレイヤーはそこまで料理が得意ではないんです。みんなどちらかというとお菓子作りが専門で……なのでラクさんにどうしても作ってほしいんです。おねがいします」


トウジはそういうと、深々と頭を下げた。


「へ、え、えええぇぇぇ……あの…とりあえずどうして料理をするのかを聞いてもいいですか?」

「おっと、ってん?アキレア何も説明してないのか?」

「うん。すっかり忘れてた♪」

「ヒ、ヒナツは?」

「もう知ってると思った。」

「……はぁ…もういい。では私から説明しますね。」


トウジはこれからのことを説明し始めた。


「私達『旋風団』とギンヨウさんたち『タイラント』が合同でボスに挑む時は必ず終わった後にここで打ち上げPTをするんです。それでいつもは料理を担当する人がいるんですが今回用事があってインできないそうなんです。そこで、その人の代わりにぜひラクさんに料理を作っていただけないかと……お願いします!」

「お姉ちゃん!私からもお願い!手伝うからさ!」


事情を把握したラクは受けてもいいとは思っている。

しかし一つ問題がある。


「あの……料理ってなにか特別なスキルとかは必要ないんですか?」

「はい。特には。経験さえあればリアルと同じように調理ができますよ」

「あと現実でしか料理したことないんですが……」

「その点はお任せください。リアルの食材やそれに似ているものは大体ありますので。ほしい食材があれば持ってきますよ」


それを聞いたラクは少しの間黙って考えると、笑顔でうなづいた。


「わかりました。引き受けましょう。その依頼」

「っ!!ありがとうございます」


周りのプレイヤーは安心したようで、ほっと胸をなでおろしていた。

その光景を見たラクは、武器や上着など、邪魔な装備を解除すると、調理台の前に立って必要な素材をアキレア達に言った。

そして最後に、


「なにか食べたいものがあればできる限り作りますけど……何かありますか?」


すると酒のつまみになる料理を次々と言っていくプレイヤー。

しかしトウジが「飲み会じゃないぞ!!」というと、最終的にPTプレートとそれにあうメニューということで落ち着いた。

だが、そこにアキレアが追加してきた。


「はいはいはい!姉ちゃんのあのシチューが食べたい!!」

「わかったわよ、もう…。じゃあ、トウジさん食材の準備、お願いします」

「わかりました!!」


そうしてラクの料理が始まった。



ラクが料理を初めてから役1時間が経過した。

店の机の上にはフライやサラダなどのPTに打ってつけの料理が並べられていき、ついに最後の一品シチューが完成した。

それと同時に、【ハアラシ】と戦っていたカデン達が店にやってきた。


「ちーすってこりゃすごい!」


店内に入ってきた面々は、机の上に置かれている料理の数々に驚愕していた。


「確か今回、担当が休んだはずなんだが…誰がこんなにたくさん作ったんだ?」

「それは厨房に行ったらわかるぞ。」


カデンはトウジに言われた通り、厨房をのぞき込んだ。


「ラク!?いつ戻ったんだ!?」

「大体1時間半ぐらい前かな。戦闘のとばっちりを受けてね。」

「そうなのか。それは何かその…悪かったな」

「ううん。私があんな場所にいたのが原因だし。カデンが気にすることないよ」

「……そうか」

「さ、私は少し休んでから行くから、打ち上げ始めてていいよ」


そういわれたカデンは何かを言うこともなく、うなずいて厨房を出ていった。


さあ【再炎】の正体が判明しましたね。

これで第三章思い残すことはあとわずか。

それではまた次回!


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