episode22
ラクはカデンにお姫様抱っこの態勢で抱き上げ、【ハアラシ】の体の向こうにある出口に向かって走っていった。
【ハアラシ】の体の下をくぐり向け、行き止まりは引き返し、まるで迷路を進んでいるような感覚になった。
もし飛び越えたら【ハアラシ】に発見されても二人とも逃げ切れる自信はカデンにはない。
カデンは次第に焦り始めた。
今はひるんで動かない【ハアラシ】が動き出し、麻痺功撃をしてくるのも時間の問題だ。
その時までには何としても抜け出したい。
カデンは歯を食いしばり、ひたすら通れそうな隙間を通って出口に近づこうとしていた。
「くそ!ここもか!」
通れそうな場所はすべて通った。
しかしその先にあったのは行き止まり。
しかも【ハアラシ】が動き出したことにより、来た道はふさがってしまい、四方八方を囲まれてしまった。
「もう…あれを使うしかないのか?だけど…」
一応最後の手段はある。
だがそれは奥の手であり、【ハアラシ】を倒すのに必要になる可能性がある。
一日一回のスキル。
カデンはそれを使うことにためらっていた。
「…ねぇ…カデン」
突然カデンの服を引っ張り、ラクは話しかけた。
「私を…置いて行ってよ…ここで…カデンがやられたら…勝てる戦いも……勝てなくなるよ?」
「……!」
カデンは一瞬だけ目を見開くと、深く深呼吸をして立膝をついた。
だが一向にラクを下すような素振りはしない。
「……カデン?」
「ふざけるなよ。なんでそういう選択をするんだ?」
「でも…」
「いいから俺の腕の中でおとなしくしてな!」
カデンはそういうと、【ハアラシ】の背中に跳び乗った。
そしてそれからは背中を沿うように走り、出口に向かって走っていった。
だがこのまま順調にいくかのように思われたが、【ハアラシ】はカデン達を発見し、頭を徐々に近づけていった。
その距離はみるみる内に縮まってき、とうとうカデンの背中に【ハアラシ】の鼻先がぶつかりそうなほどの距離にまでなってしまった。
それから【ハアラシ】は大きく口を開け、ガブリと一口で二人を食べようと襲い掛かってきた。
だがそれをカデンは読んでいた。
カデンは【ハアラシ】が口を開けた瞬間、すぐに背中から飛び降り、まっすぐと出口まで続いていると思われるルートをひたすら進んでいった。
「ハァ…ハァ…さすがにきついな…」
ラクが見てわかるほどカデンは疲弊しているようだった。
段々スピードも落ちており、ラクの腕を強く握っていた手も少しづつ握るが弱くなってきていた。
そしてついに注意力すら薄れ始め、エントランスの床に突き刺さっていたがれきに足をかけ転倒してしまった。
そのせいでラクは床を数回転がり、カデンよりも少し入り口に近いところで、糸の切れた人形のようにぐったりとしていた。
「大丈夫か?……ラク」
「何とか……カデンは?」
「問題……ない!」
カデンはゆっくりと立ち上がり、素早くインベントリから青い液体の入った小瓶を取り出して一気に飲み干した。
ぷはぁ
カデンは空き瓶を投げ捨て、再びラクの元まで走っていくと、素早く抱きあげて立ち上がった。
「さぁいくぞ!」
一体先ほど飲んだものは何なのだろう。
あの青色の液体を飲んだ瞬間、カデンは先ほどの疲労が嘘だったかのように元気になり、軽々とラクを抱き上げたのだ。
だがいまそのことを聞く暇はない。
【状態異常:麻痺】のせいで体を動かすことができないラクは、カデンにすべてを任せるしかない。
そしていま青い液体のことを聞くと、集中力をそいでしまう可能性がある、
ラクはその結果、この戦いが終わってから聞くことにした。
カデンは効果の切れた【身体強化:スピード】をもう一度発動し、再び走り出そうと右足を前に出した。
だが【ハアラシ】が尻尾を鞭のように振るって二人を自身の口元まで吹き飛ばした。
「ぐぁ!……くそ!」
【ハアラシ】に食べられる瞬間、カデンはラクを手放し、前に突き飛ばした。
「ぐううぅ……」
ラクは再び地面を転がり、先ほど転がっていた場所まで戻ってきた。
どうにかカデンの様子が見えるように首を回した。
だが視界の先にあったのは、なにかを飲み込むようなしぐさをする【ハアラシ】と、その口元に転がっている一本の片手剣だけだった。
「カ…デン?」
当然返事は帰ってこない。
【ハアラシ】の口内からは光の粒子が噴き出ており、それがラクにカデンがやられてしまったことを確信させた。
そして【ハアラシ】は、まだ物足りないのかラクの元まで這ってやってくると、大きく口を開け、今度こそラクを食べようとしていた。
だがそのつかの間、予想外なことが起きた。
「まだだああああぁぁぁ!!!」
【ハアラシ】の口の中に、先ほどの光の粒子が再集結し、人型を作り、そこからカデンが現れたのだ。
それからカデンは素早くラクを拾い上げ、猛スピードでエントランスから脱出した。
「よっしゃあぁ!脱出成功!」
カデンがそう叫びながら外に出ると、そこで待っていたのはギンヨウ、ゼラ、アオイを含めた『タイラント』のメンバー計13人だった。
カデンは突然目に差し込んだ陽の光に眉を細めながら、ギンヨウの元まで走っていった。
「おお!よくぞ戻ってきてくれた!カデン!」
ギンヨウは両腕を広げて二人を迎え入れ、すぐにカデンの背中を押して集団の奥へといざなった。
それからラクに黄色の【状態異常回復ポーション】を、カデンには【高効果回復ポーション】を手渡した。
だがラクはうまく体が動かないせいで受け取ることができない。
そこでギンヨウは瓶の栓を抜き、瓶を傾けてラクの口内に流し込んだ。
それをラクは少しづつ飲んでいった。
味は何とも言い表しがたいが、強いて言うならレモン水のような、若干苦いような酸っぱいような味がした。
あまりすっぱいものが好きではないラクは少し顔をしかめてそれを飲み干した。
すると次第に体が動くようになり、【状態異常:麻痺】の表示も完全に消滅した。
上体を起こし、口からこぼれた液体をぬぐうと、ラクはゆっくりと立ち上がってギンヨウのほうを向いた。
「何かはわからないですが治してくださりありがとうございます」
「気にするでない。しかしよくぞ無事に脱出できたでござるな」
「そうだ!カデン!あの時なにしたの!?」
ギンヨウの言葉を聞いて体内でスポーンしたことを思い出したラクはカデンのほうを勢いよく振り返って質問をした。
するとカデンは背中の二本の片手剣の内【アサルトヒリカム】を引き抜いた。
「それはこの剣のおかげさ。」
「その剣…なにかあったっけ?」
「おいおいおい忘れたのか?ラクの剣にも特有のものが付いてるだろ?」
「特有の物?……私の剣にも……あ!謎のスキル!」
ラクは首を動かして今装備している両手剣【バスターヒリカム】の持ち手を見た。
「正解。おれのこの剣の場合は『再臨』ってスキルだったけど、内容は一日一回限定の蘇生スキルだったんだ。その際HPは半分、一定時間、正確には10分間は攻撃力が20%ダウンするってものだった。一度しか使えないからあまり使いたくはなかったけどな」
デメリットはあるものの、本来最寄りの街でスポーンするところをその場、死んだ場所で復活することができる。
それが『再臨』の正体だった。
「そう…なんだ……じゃあもしかしたらこの剣の『再炎』にも…」
『再炎』にも同じような蘇生スキルがあるかもしれないと思った。
もしそうだとしたら、それはそれで使い道がありそうな気がするし、死んでも元の場所に戻ってくるという手間が省けるかもしれない。
そう考えていると、ギンヨウが会話に割り込んできた。
「カデン。奴が来る。準備をするのだ。ラク殿は安全な場所に退避してほしい。」
「了解!」
「わかりました。」
二人は返事をすると、カデンは前に、ラクは城から見て右にある倒壊している建物のがれきの影に移動した。
「さて…そろそろケリをつけようではないか!皆の者!得物を構えるのだ!」
ギンヨウの勇ましい声とともに武器を構え、城から這い出てくる【ハアラシ】に向かって最後のアタックを開始した。
無事?に脱出できたカデンとラク
その先には『タイラント』の生存者
残りの人数が半分を切ったプレイヤーたちは最後のアタックを仕掛けます!
敵のHPはあと9万ほど
果たし手どうなるのか!?
それではまた次回!
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