episode17
時はさかのぼり二度目のアタック開始時。
【ベイリーツ古城内】
ラクは戦闘を少し見飽きてあかりのない薄暗い城内を歩き回っていた。
何も置かれていない講堂、読めない文字で書かれた本が大量にある書庫、崩壊してはいることのできない調理室。
どこもかしこも不気味な雰囲気で、まるで西洋版お化け屋敷のようだった。
だがそんな場所をラクは平気な顔で歩いていた。
「にしてもラクは平気なのか?」
ちゃっかりついてきてラクの横を歩いているハルが突然そんなことを聞いてきた。
「何が?」
「何ってこういう何か出そうな場所だよ。怖くないのか?」
「怖くないわよ?もっと怖いもの知ってるし。」
「もっと怖いもの?」
「そ、もっと怖い者よ。」
それだけ言うと、ラクは今いる場所の近くにあった部屋の扉を開いた。
――ギイイィィィィ・・・・・
金具のきしむ音が静寂と保っていたその部屋に響き渡り、続いて何かがかさかさと動くような音がした。
「そういえば聞いてなかったけどハルさんはどうなの?」
「私?そんなの平気に決まってる!私が怖いのはむしろアキレアとかのほうだ。」
「アキレア?どうして?」
「だってよぉ。ふらっとやってきたかと思えばいきなり酷な要望の武器を作れっていうんだぜ?しかも数時間で。あれは本当に怖いわ。」
ハルは苦笑いをしながらそう言うと、部屋の中に入っていった。
「どうやら私と似たような苦労をしているみたいね・・・・」
「何か言ったか?」
「ううん。何でもない。」
聞こえないように言ったはずなのだがハルには聞こえていたようで、ラクは訂正して部屋の中に入っていった。
部屋の中には朽ち、中が隙間から見える状態になっている木箱や、埃をかぶった棚などが数個置かれていた。
壁からは水がしみ出しており、室内は少しじめじめとしていた。
「ずいぶんと長い間放置されているようなグラフィックだな。けど妙にリアルだから物色するのためらうぞ・・・これ・・・」
そういいつつもハルは落ちていた本を拾い上げた。
しかし本を手に拾い上げた途端、劣化がひどいようですぐにボロボロ崩れ落た。
「うへぇ・・・・どんだけリアルなんだよ・・・・」
それから数分間その部屋を物色したが、成果はなし。
二人はその部屋を後にし、再び廊下を歩いて行った。
コツコツコツ・・・・・
コツコツコツコツ・・・・・・
二つの足音が静かな、ところどころ損壊し、崩れ落ちている廊下に響き渡っていた。
廊下にある無数の部屋は崩壊して入れなかったり、何も置いてなかったりと、特にこれといった成果は一つもなかった。
さっきからラクは何かを探しているみたいだけど何を探しているんだろう・・・・
ハルはラクの素振りが先ほどから気になっていた。
本人は飽きたから城の中を歩いているといっているが、どう考えてもさっきから何かを探しているようにしか見えない。
見て回るだけなら部屋の中を念入りに探さなくてもいいし、注意深くあたりを見回す必要もない。
なのにどうしてか、ラクはさっきから注意深く周りを観察しているのだ。
ハルはついに我慢できなくて恐る恐るラクに聞いてみた。
「なぁ・・・・本当の目的なんなんだ?さっきから散歩というより探索に近い気がするんだが・・・」
「・・・・・・・・まぁ・・・・ばれるよね。」
そういうとラクは、インベントリを開いてアデンからの手紙を取り出し、ハルに手渡した。
それを受け取ったハルは、パラパラと紙を後ろにやってそこに書かれていることを読んでいった。
「えっと・・・・これは?」
「NPCからの手紙。東の森林で知り合った人が歴史に詳しい人でね。その人がここに着くための手掛かりとこの城のことを教えてくれたの。それでせっかくだし探してみよっかなーって。・・・・・・つき合わせてごめん。」
途中までは陽気にしゃべっていたが、途中からうつむいてしまったハルに申し訳なく思い、しまいには弱弱しい声で謝った。
「・・・・・・・ど・・・・」
「・・・・ど?」
「どうして早く言ってくれなかったんだ!?」
「・・・・・・・・・・・ん?」
ラクはハルのいうことが少し理解できず、疑問の目で首を傾げた。
「どうしてそのことを早く言ってくれなかったんだ!?私こういう物大好きなんだよ!」
そう言うハルの目はものすごくキラキラして見えた。
というより少年がヒーローを見たときのように目を大きく見開いてきらきらと輝いていた。
「えっと・・・・・つまり・・・」
「早く探しに行こうぜ!!どんなものかな?楽しみだ!!」
この状況とハルの変化というダブルパンチで理解が追い付いていないラクの手を引いて、ハルは勢いよく廊下を走っていった。
タンタンタンタンタン・・・・・
ハルの履いている底に金属の入っている靴が軽快な音を鳴らし、ハルがラクの手を引いて思いっきり走っていた。
どんどん廊下を進んでいる中、何かを察知したのか、ハルが急に立ち止まった。
「どうしたの?」
「し!・・・・何か聞こえない?」
ハルは目を閉じ、耳を澄ましてさっき聞こえた音をもう一度聞き取った。
「・・・やっぱり。もどってきたんだ。」
「戻ってきた?・・・・・それってカデン達がってこと?」
「そう、たぶん戻ってきたんだ。勝ったからか、それとも負けたから転移して戻ってきたのか、どっちかはわからないけど。・・・・・とにかく行ってみよう。」
そういうハルは、さっきの少年のようではなく、いつものハルに戻っていた。
それから二人は足早に廊下を進み、エントランスにやってきた。
今いるのは城の二階部分。
この高さから容易にエントランスを見渡すことができる。
そして二人がこのエントランスで見たのは、次々と倒れた状態で現れるプレイヤーたちだった。
ある者は人形のようにぐったりとしており、ある者はすぐに立ち上がって状況確認をしようとしていた。
その間にもどんどんプレイヤーは増えていき、その数は20数名にまで上った。
「これって・・・・負けたってことだよね?」
「間違いないね。ここまでほぼ同時に戻ってくるってことはきっと確殺コンボでも受けたんだと思う。」
「確殺コンボ?」
「そう。文字の通り『絶対にプレイヤーのHPを0にする連続攻撃』さ。たぶんさっきいっぺんに城から
出てきたのも同じものを受けたんだと思う。どんだけ強いんだよ全く。」
そういうとハルは手すりから身を乗り出し、二階から一階に飛び降りた。
それから戻ってきたばかりのギンヨウの元まで走っていった。
一人になったラクは、ざわついて、にぎやかになったエントランスを見回してアキレア達を探した。
しかし、見当たらない。
あれ以来戻ってくるプレイヤーもおらず、アキレア、カデン、ゼラ、アオイ、ヒナツの四人の姿は確認できなかった。
「まだ戦っているのかな・・・・それならいいんだけど・・・」
もし三度目の死を迎えていたら今頃は第一の街だ。
だが先ほどで一回目。
仮に二回目を城の探索中に迎えたとしても間隔が短すぎるし、声を聞こえたはずだ。
だがそれは確認できなかった。
「きっと・・・・まだいるんだよね。この場所に・・・・てあれは・・・」
自分の心のなかでそう結論づけていると、床に座っているトウジを発見した。
「トウジさん!」
ラクはハルと同じように二階から飛び降り、トウジのもとに走っていった。
いまどうなっているかを確認したかった。
その一心でトウジの元まで行くと、間髪入れずに聞いた。
「あの蛇はどうなりました!?」
「え、そ、それならいまカデン達が戦っていますが・・・・・」
「カデン達が?」
「ええ。二つのグループに分担して攻撃したんです。私たち、今ここにいるプレイヤーは第一陣。残りのプレイヤーは第二陣です。私たちは第一段階と呼称した敵の状態を、カデン達は第二段階と呼称した敵の攻撃に対応しつつ攻撃してるんです。」
「そう・・なんですか・・」
正直もともと次元が違う戦闘なうえに、いまだに数えるぐらいしかやっていない多人数での戦闘。
ラクは理解はできたが、具体的にはどういうものなのかを正確にイメージできないでいた。
「それで・・・・・」
ラクが眉間にしわを寄せ、より詳しく聞こうとしたとき、その言葉を明るい声が遮った。
「いやー油断しちゃったー。あ、お姉ちゃんはっけーん!」
アキレアだった。
ラクの後ろから歩いて来たアキレアは、助走をして勢いよくラクに飛び乗った。
「ア、アキレア!?どうしてここにいるの?」
「どうしてって・・・・・負けちゃったからだよ?」
「あ、そっか。じゃないとここにはいないか。」
最初はアキレアがここにいることに驚いたが、理由がちゃんとあったことで納得してしまった。
しかしラクは再び驚くことになった。
ヒナツが人だかりの向こうからふらふらと歩いて来たのだ。
「!!お姉ちゃん発見。」
ヒナツはラクを発見するなりお腹に抱き着き、ふぅっと息を吐いてその状態のまま休憩をし始めた。
「・・・・・・あの・・・・ヒナツさん?」
「少し休ませて。」
「あ、はい。」
ラクは何回かヒナツに不意打ちとばかりに接触してくることに慣れているのでどうってことはないのだが、岩巨人の時よりもエスカレートしているヒナツの行動と、突然抱き着いたアキレアの行動を見て訳が分からなくなっていた。
「えっと・・・・・ラクさん。どういう状態ですか?それ。」
そしてトウジは口をわずかに開けてラクに今の状況に事を聞いてみた。
「うーん・・・・小鳥の止まり木的な何かと間違われてるのかと・・・・・」
「は、はぁ・・・・・・・」
はっきり言ってトウジどころかラクすらもこの状況がよくわからなかった。
しかしそんなよくわからない空気は、一瞬にして消え去った。
バン!
エントランスにある大きな木製の扉。
玄関としての役割があるその扉がいきなり開け放たれたのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
差し込む日光を背にしているせいで誰かはわからない。
しかし手に持っている二本の剣、それで誰かを判明できた。
そう、二刀流を使うカデンだ。
カデンは入ってくるなり、ギンヨウの元にも、アキレアやヒナツ、ラクのもとに行くのでもなく、その場で叫んだ。
「今すぐ戦闘の準備をしてくれ!!奴がく・・・・・がぁぁぁ!!」
突然カデンは黒く、大きな影に吹き飛ばされ、正面にある階段に激突した。
宙を舞う土煙や埃とともに、カデンの物であろう光の粒子が宙を舞った。
そして続けてその黒い影は城の壁を破壊し、安全かと思われたこの場所は急変、瞬く間に第二の戦場とかした。
そう、巨大な黒い影の正体。
それは・・・・・緑と黒の鱗をもつ巨大な蛇。
「【蛇龍・・・・・ハアラシ】!!」
ヒナツがそうつぶやいたのをラクは聞き逃さなかった。
戦場は移行、ベイリーツ城に変わります。
これからどう戦うのか。
ぜひお楽しみに!
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それではまた次回!!




