episode15
カデン達は二つの集団に分かれ、ギンヨウのいる集団は城を出て再び【蛇龍ハアラシ】のもとに向かっていた。
一つはカデン、アキレアを含めた高アタッカーの少数先鋭集団。
もう一つギンヨウを含めた遠距離攻撃、トウジを含めた盾役、そして中アタッカーの大集団。
ちなみに先に向かったゼラ、アオイ、ヒナツは前者に合流する。
古い石畳の道を後者の大集団が進み、とぐろを巻いてこちらを見る【ハアラシ】の前にたどり着いた。
後方集団は城の入り口で待機している。
後方に控えるカデンは、自分の提示した作戦を改めて思い出した。
【ベイリーツ古城内】第二回アタック前
「まず最初に言うが、二回目のアタックは捨てる。」
「どういうことでござるか?残り二回しかない攻撃のうち一回を放棄するとは。納得の説明を求める。」
「わかってます。そもそも【泳龍ナツハ】同様、敵の情報が少なすぎるんです。とぐろを巻いて行間に取るべき行動、突然仕掛けてくる猛攻撃、状態異常の効果範囲。数え上げたらきりがありません。だから第二回は勝ちに行くのではなく情報収集を目的として戦います。」
それを聞き、ギンヨウな納得したのか、ニィッと笑って腰に手を当てた。
「納得だ。カデン殿のいう通り二度目は情報収集を目的とする。それとユリ、聞こえているのだろう?一応おぬしの意見を聞けせてくれ。」
ギンヨウは天井のあたりを見上げてそういうと、その返答はチャットで帰ってきた。
『カデンさんの作戦はもっともだと思います。そこで私からはそれをするために布陣を提示します。まずとぐろを巻いている間を第一段階、猛攻撃以降の確定コンボを第二段階と呼称します。そして第一段階では、あの防御の限界を測定します。蛇のとぐろとは防御態勢だという説があります。そうだと仮定した場合、限界があるはずです。』
ピロン
文字制限を超えたためか、二通目に続いていた。
『よって第一段階ではできるだけ多くのプレイヤーで攻撃をしてほしいのです。しかし全員で攻撃すると第二段階に入った時、一回目の二の舞になりかねません。そこで第二段階をゼラさん、アオイさん、アキレアさん、カデンさん、ヒナツさんと両ギルドから数人づつプレイヤーを選抜、残りを第一段階に当てます。以上』
それはほとんど捨て身の作戦であった。
第一段階から第二段階に移った場合、第一段階で攻撃していたプレイヤーはまず助からない。
そして第二段階を担当するプレイヤーは敵の行動を把握するために、できる限り敵と長時間戦う必要があり、さらに状態異常の正体も判明させなければならない。
その内容に、カデンとアキレアは苦笑いをしていた。
「なかなか・・・鬼畜な編成ですね。」
「これ以上いい編成が思いつかない現状では、ユリの作戦で行くしか無かろう。俺もかなり不安だが。というかなぜおれは第一陣なんだ?いくら弓兵とはいえ第二陣でもいいと思うのだが・・・・」
『保険。防御力を貫通できなかったら困るから。』
「ぬうぅ・・・そういうことなら致し方あるまい・・・・」
「・・・・・・・・・・ところでさ。」
アキレアがふと口を開いた。
「ぬ?どうしたのだアキレア殿?」
「ずっと気になってたんだけど・・・・ユリさんってなんで私たちの前に現れないの?」
「ああ、そのことであるか。」
そういうとギンヨウはアキレアの耳元でひそひそと話した。
「じつはユリは極度の人見知り&人恐怖症でな。昔から親しいおれでも数えるぐらいしか顔を合わせて会話をしたことがないレベルなんだ。だが、観察力はズバ向けておるのでな。こうして陰ながら討伐の作戦参謀として参加しているのだ。」
それを聞いて納得したアキレアは、カデンと一緒に第二陣に選抜するプレイヤーを選びに行った。
そして時は現在に戻る。
【都市ローレル:中央】
「攻撃開始!!」
ギンヨウの掛け声とともに、第一陣のプレイヤーたちは各々武器を構えると、次々と【身体強化:アタック】を発動して【ハアラシ】に向かっていった。
とぐろを巻いた【ハアラシ】の周囲、360度全方向からプレイヤーは休むことなく、今出せる全力で攻撃していった。
「ストライクアロー!!!」
「バインドプレス!!」
「一式:颯!!」
「クロススラッシュ!!」
様々な武器から様々な光を放って攻撃スキルが放たれていった。
だが、しなる体に命中したスキルはすこしダメージを与えたように見えたが、それらは拗ねてダメージを通さず、役目を終えた武器を覆っていた光は弾け、粒子となって消えていった。
それからも第一陣の猛攻は続いた。
休むことなく放たれる攻撃スキル。
しかし【ハアラシ】の防御は一向に破れる気配がなかった。
いくら攻撃してもHPを減らすことはできず、すべての攻撃が硬い鱗にはじかれる。
斬撃、刺突、打撃。
どれをもってしても無理だった。
しかしそんな中、ギンヨウはあきらめず、今まで攻撃していなかった頭部に狙いを定めた。
「ストライクアロー!!!」
弓の攻撃スキルの中でも最もシンプルで威力のある技。
それが『ストライクアロー』だ。
ギンヨウの手を離れた青く輝いた矢は、一直線に【ハアラシ】の頭部向かって飛んでいった。
ドスン!!・・・・・・・
到底矢では出そうにない音を出し【ハアラシ】の頭部、頬のあたりに命中した。
するとどうだろう。
【ハアラシ】はのけぞり、HPが減ったのだ。
「総員!頭を狙え!」
プレイヤーはとぐろを巻く【ハアラシ】の胴体をよじ登り、跳び、頭部に攻撃をしていった。
みるみる減っていくHP。
そしてそれはついに100万を切った。
syrrrrrrrrr!!
文字に表現できないような声を上げ、【ハアラシ】は急に動き出した。
とぐろを巻いている状態をやめ、ぐねぐねと体をうねらせて頭部を高く持ち上げ、見下ろすような体勢になると、尾を振り回して群がるプレイヤーを吹き飛ばした。
しかしギンヨウはその攻撃を利用し、第一陣のプレイヤーに向かって叫んだ。
「第一段階が終わった!各自何が何でも後退しろ!第二陣の攻撃に巻き込まれるぞ!!」
それを聞いたプレイヤーたちは後退をするために【ハアラシ】に背を向けて走り出した。
とにかくできるだけ遠くに・・・・・
そのようなことを考えて走り出したプレイヤーだったが、その逃走を【ハアラシ】は許さなかった。
【ハアラシ】は突然かなりの速度で地面を這いずり回り始めた。
木々を倒し、建物の跡を破壊し、プレイヤーを食い殺していく。
確殺コンボの第一段階が始まったのだ。
一人、また一人と捕食され、光の粒子に代わっていく中、ギンヨウは背を向けることなく【ハアラシ】の横を走りながら矢を射っていた。
スキルは使用しないただの射撃。
だが攻撃の通る第二段階なので簡単に体に突き刺さり、わずかではあるがHPを削っていっていた。
「くそ!このままでは!」
このままでは第一陣のプレイヤーが全滅してしまう。
しかしもともと全滅を想定したのが第一陣、全員無事に撤退することを想定した第二陣。
といった感じに組んでいるのでここで第一陣が全滅しても問題はないのだ。
だがギンヨウは一人でも多く生き残ってほしかった。
三度目、最後のアタックの時に一回でも、一人でも多く攻撃に加勢できるからだ。
ギンヨウは必死に矢を放った。
逃げるプレイヤーを捕食しようとする【ハアラシ】の注意を自身に向けるため。
一本。
また一本と射っていった。
そして【ハアラシ】が6人ほどプレイヤーを食った時、ようやくターゲットがギンヨウに向けられた。
だが間に合わなかった。
いまこの場に生き残っているのはギンヨウのみ。
無事後退できたプレイヤーは0。
ギンヨウはその無様な結果に歯を食いしばり、矢筒に手を伸ばした。
「っ!!くそ!」
だが矢筒にはもう矢は入っていなかった。
いれていた50本すべてを使い切ったのだ。
「・・・・・・・・ここまでか・・・・・。だが!次こそは必ず貴様を討つ!!!」
ギンヨウは【ハアラシ】を指さしながら目を大きく見開き、怒鳴るような声でそう宣言した。
「・・・・・・・・後は頼む。カデン!」
迫る【ハアラシ】の口を前に目を閉じ、ギンヨウはぽつりとつぶやくと、食われ、光の粒子となって姿を消した。
【蛇龍ハアラシ:HP 905270/1300000】
さあ、ここで戦いは折り返し地点に!これまでの戦闘の結果は以下の通り。
第一回 全滅
第二回 第一陣全滅 第二陣攻撃開始
さてこれからどのような展開になるのか!?
それとたぶん気になっていると思うラクはどうなるのか!?
それではまた次回!!
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