episode12
ヒナツの大胆な下り方によって目を回し、魂が抜けかけているラクをお姫様抱っこの状態で抱え、幸せそうな顔をしているところを城の内部から2人のプレイヤーがのぞいていた。
「・・・・・・・・なぁカデン。」
「・・・・・なんだトウジ。」
「あれ・・・・・どういう状況だ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「おい。カデン?」
「・・・・俺にもさっぱりわからん!」
それからヒナツ達が城に向かって歩いてくるまでの間、二人はひそひそとどういう状況なのか話し合ったそうだ。
「・・・・・・・・・。」
単刀直入に言ってヒナツは困っていた。
お姉ちゃんが・・・・ラクがこんな状態なので、風通しの良い場所に寝かせてあげたいという気持ちがある。
しかしそうなるとまた跳んで移動することになるので今より余計悪化する可能性もある。
でもこのあたりで寝かせると数十分後に始まる戦闘に巻き込まれる可能性もある。
「・・・・もしかしたら城の中にいい場所あるかも・・・・・・」
そう考えたヒナツはラクを抱えたその状態のまま、城に向かって歩いて行った。
【状態異常:気絶 残り0分12秒】
・・・・・・5,4,3,2,1、0
「ん・・・・・・・ん?」
次に光が戻ってきた視界に何やら見慣れない天井が移っていることに疑問を感じた。
色褪せてはいるが、この状態からでも天井に描かれている絵が理解できた。
金髪の女性と騎士が握手をし、その周りにいる騎士と金髪の人々が喜んでいる絵。
部分的にはがれてしまっているので、詳しくはわからないが、これがあの騎士が言っていた大切なものなのだろうか。
ラクは体を起こし、あたりを見回した。
豪華な装飾のされた机や椅子、台の上に置かれた丸い花瓶には花はなく、その周りに何かのくずのようなものが落ちていた。
床は丸と四角を等間隔で並べ、重ねたようなデザインのじゅうたんが隅々まで敷かれており、場所によって変色、劣化していた。
「ここって・・・・・」
ヒュウウウウゥゥゥゥゥ
突如視界の右端にあったあけ放たれた窓からさわやかな、冷たい風が流れ込み、ラクの紙をかき回した。
ラクは一度外のをみるために寝かせられていたベッドから降り、窓際までゆっくり歩いて行った。
絨毯の下は木でできているようで、歩くたびに
ギィ・・・・・・ギィ・・・・・
という床のきしむ音が聞こえ、いつ抜けてもおかしくはない状態だった。
慎重に、ゆっくりと窓際にたどり着いたラクは、外に広がる光景に圧倒された。
まるで窓から続き、どこまでも続いてそうな幅の広い石畳、左右にある建物の土台から生える見たことのない草木、木々の間から差し込む淡い光。
そこには自然と人工物のがれきや石畳がおりなす一枚の絵画のような景色があった。
「ここって・・・・・もしかして城の中?」
ぽつりとこぼしたその言葉はすぐに可動部分の錆びた扉の開く音でかき消された。
ギイイィィィィィ――――ガチャン
外から扉を開け、この空間に入ってきたのは黒に赤のラインが入った装備と二本の片手剣を背中に背負っているプレイヤー、カデンだった。
「お!起きたか。」
「カデン。・・・・・ねぇここってあの場所よね?今日蛇と戦う場所でしょ?」
カデンはラクの横に来ると、窓のふちに両手を置いて外の景色を見た。
「そうだよ。さっき分かったことだけどここは【古代森林エリア:都市ローレル】にある城、【ベイリーツ古城】って場所だ。」
「ふーんそうなんだ。そういえば仮スポーン地点の確認はできたの?」
「ああ、ちゃんとあったぞ。ゼラたちもさっき到着したしこれで準備万端だ。」
そういうとカデンは窓から離れ、扉に向かって歩いて行った。
「どこいくの?」
「最後の作戦会議。それが終わったらこの正面で対峙するから避難―――」
「ここから見てる。もし危険だと感じたら逃げるから安心して。」
「・・・・・・・わかった。気をつけろよ。」
「そっちこそ。」
それを聞いたカデンは緊張が解けたような表情でこの部屋を後にした。
【戦闘開始まで残り30分】
カデンと到着したギンヨウの収集によって現在、【ベイリーツ城】の正面城門の前に参加した全プレイヤーが集まっていた。
その集団の大半は『タイラント』と『旋風団』のメンバーだが、一部他ギルドやソロプレイヤーもいる。
ギンヨウたちの作戦会議も終わり、これからその内容の発表が行われようとしていた。
一体どんな内容なのか。
各々は近くのプレイヤーと軽い挨拶をしたり、フレンド登録をしたりと戦闘前とは思えないほどにぎやかな雰囲気だった。
しかし、その雰囲気はアキレアとギンヨウの登場によって一気に緊迫した雰囲気に変貌した。
二人は全体が見渡せるように、崩れ落ち山となってるがぜきの上に立った。
そしてギンヨウが大きく息を吸って叫んだ。
「これから作戦を伝える!『旋風団』と他ギルド、ソロプレイヤーの参戦者は右翼から、人数の多いわれわれ『タイラント』は左翼から接近し、攻撃する。そして遊撃部隊として『タイラント』からゼラとアオイ、『旋風団』からはヒナツ殿がこれに当たる。敵の攻撃モーションの合図は『タイラント』の偵察兼司令塔のユリが高台より指示を出す!私からは以上だ!」
しゃべり方は現代語に戻っているが、一言発するたびにすさまじい気迫を放っており、さすがトップギルドのギルドマスターといった感じだった。
作戦を言い終えたギンヨウが半歩後ろに下がると、今度はアキレアが前に出た。
「みんなー今日は頑張ろう!そして何が何でも勝とう!」
すごく短いスピーチだったが、それでも十分なほどプレイヤーの闘志は燃えたのであった。
オオオオオオォォォォォォォ!!!
総勢30名の混合チーム
そのすべて・・・・とは言えないが、ほとんどが腕利きのプレイヤーであることは間違いない。
だが、東では今回と似たような構成でも『泳龍ナツハ』に苦戦したという。
・・・・・・・果たし勝てるのだろうか。
ラクが心配していると
コンコン
と扉をノックする音がした。
「?どうぞ。」
ガチャ――――ギイイイイイィィィ・・・・・・・
「まいど!『鍛冶屋:シュン』からのお届け物でーす!」
入ってきたのは今回の戦闘に参加しない筈のハルだった。
「ハルさん!?なんでここに・・・・・」
「言っただろ?日曜までに完成させるって。で、待っててもやることないからカデンに場所教えてもらってここまで来たんだ。」
「は、はぁ・・・・・」
「お、そろそろ始まるぞ!ほら、行くぞ!」
そういうとハルはラクの手を引いてその部屋を後にした。
二人は当時は豪華で煌びやかであっただろう廊下を走っていた。
行き先はハル任せ。
一体どこに行くかはわからない。
「・・・・・・あの!ハルさん。どこに行くんですか?」
「どこって上だよ!上からのほうが全体が見渡せていいだろ?」
そうして階段を何段も、何個も登って二人は屋根に近い部分にあるテラスまで来た。
吹き付ける風は服を、ローブをバタバタとたなびかせ、髪はかき乱されるほど強かった。
しかし、ハルの言う通りここからなら全体が見渡すことができた。
その景色を眺めていると、突然地鳴りが起きた。
ゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・
そこまで長く、強くない地鳴りだった。
しかし次の瞬間、地面から突き出るように巨大な蛇が姿を現した。
その蛇は体を自由にうねらし、とぐろを巻いて左右に展開する集団と対峙した。
【蛇龍ハアラシ HP1300000/1300000】
突然現れたその蛇は緑と黒の鱗がびっしりとついている体、太さは半径180センチほどで、全長は数百メートルはあろうかという巨大な蛇だった。
その蛇におびえ腰を抜かす者、戦いたくてしょうがないっと思っている者、呆然としている者。
様々な反応を示していた。
「うろたえるな!!我々なら勝てる!!」
そしてその人たちは、ギンヨウのその一言で高まる気持ちを落ち着かせ、闘志に満ちた目で【ハアラシ】と対峙した。
ギンヨウとアキレアは大きく息を吸うと、ギンヨウは自分のいる左翼メンバーに、アキレアは同じく自分のいる右翼に合図を出した。
「「作戦開始いぃいぃぃぃぃ!!!!」」
雄たけびといえるような声とともに駆けていくプレイヤー、両翼が見える範囲にいるユリ、城の上部から観戦するハルとラク。そしてハアラシ。
こうして西での壮絶な戦いが始まった。
さあ次回から始まります!
【蛇龍ハアラシ】VSプレイヤー
どういう攻防が繰り広げられるのか・・・・・
それではまた次回!
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