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episode10

「セロシアからの伝言聞かせて。」

「わかった。」


続けてセロシアからの伝言を言った。


「『どうやらカデンはもう『再臨』の内容を発見したらしいぞ。それと旋風団からカデン、トウジ、ヒナツが西の森林にいる奴との戦闘に参加する。タイラントからも結構上位プレイヤーが参戦するみたいだからすごい戦闘が見れそうだぞ。』だってさ。」

「ハルは参加しないの?」


セロシアの言っていた参加者にハルの名前がないことにラクは引っかかった。


「ああ、私ってどっちかっていうと生産職だからね。戦闘はあまりしないから今回のもパスしたんだ。」

「今回のも?」

「東の【泳龍ナツハ】。あれもパスしたんだよ。まぁでもあの時はそもそもインできなかったからパスしたとは一概には言えないけどね。」


どうやらハルは、鍛冶職として楽しんでいるようで、戦闘に参加するのは人数不足の時か、暇な時ぐらいらしい。

そう考えると最初にあったときにハルがいたのは、単に暇だったからっということになる・・・・

そんなことを考えていると、入り口の障子が横にスライドし、黒いノンスリーブのロングベストを着た女性、ハルと同じ『旋風団』のヒナツが入ってきた。


「ハルと・・・・・お姉ちゃん。」


ヒナツはハルと同じタイミングで知り合い、その時からなぜか姉でもないのに「お姉ちゃん」と呼ばれている。

あれから会っていなかったのだが、相変わらずお姉ちゃんと呼んでくることに苦笑した。


「それで今日は何の用だ?・・・・・・ってあれだったな。できてるぞ。」


ハルがそういうと、部屋のすみに置いてあった一本の薙刀を持ってきた。


「一応注文通りのものに仕上がっているはずだが・・・・西の森での戦闘で試してみて感想聞かせて。」

「わかった。」


ヒナツはハルから薙刀を受け取ると、インベントリにしまってラクのもとに歩いてきた。


「お姉ちゃん久しぶり。」

「お、お久しぶりです・・・・・」


ヒナツがあまりしゃべらない方なので会話がすぐに途絶え、あたりは静寂に包まれた。



一体何を話せばいいのか・・・・・・


あまり話していないので何の話題を振ればいいのかわからない。


日曜のこと?

今まで経験したこと?

それともお姉ちゃんと呼ぶ理由?


だがどれを選んでもどれも長くは続かない。

ラクは仕方なく、目でハルに助けてほしいと訴えかけた。

・・・・が、当のハルは仕草でファイト!と表現すると、ゆっくりと歩いて奥に引っ込んでいってしまっ

た。

じー・・・・・・・


ヒナツからの目線を感じる。


早くなんとかしないと・・・・・・・


「えっと・・・・・ヒナツさんこれから用事とかあるんじゃないんですか?」


とりあえず話題作り!


ラクはあの静寂の時間を再び作らないためにそんなことを聞いてみた。


「とくにない。今日は武器取りに来ただけだし。」


・・・・・・・・・・・


会話が途絶えた。


と思ってラクが話題を考えていると、ヒナツから話を振ってきた。


「お姉ちゃん。この後用事ある?」

「この後?・・・・・とくにはないんですけど・・・・・」


それ聞いたヒナツは唇をかすかに動かして微笑むと、ラクの手をひぱって「鍛冶屋:シュン」を出て行った。



ラクの手を引いてぐんぐんと街の中心に向かって歩いて行くヒナツはうれしそうな表情だった。

それにしても周囲の目線も痛いがなによりヒナツがラクの手を強く握って引っ張ってるのが痛い。

ゲームの中なので骨が折れる等の心配はないのだが、現実だったら関節ぐらいは外れてもおかしくはなかった。

そのまま街を歩き、ヒナツが足を止めたのは、トウジの経営する『サフィニア喫茶店』の前だった。

そしてラクの手を放すことなく中に入っていくと、窓際のテーブル席に向かい合うように座った。

ずっと握られていた右手がようやく解放され、少し痛みの残る手首をさすっていると、店主であるガタイのいい男性トウジがやってきた。


「いらっしゃい。久しぶりですねラクさん。元気そうで何よりです。」

「お久しぶりです。トウジさんこそお元気そうで。」

「トウジいつもの。二つお願い。」

「了解。しばしお待ちください。」


ヒナツのオーダーを受けたトウジは、カウンターに戻ると、壁に空いた穴から奥に注文をあい、コーヒーを二杯入れ、女性店員がカウンターに置いていったクッキーの入った皿とコップ二つを御盆にのせてラクたちのもとに運んできた。


「お待たせしました。コーヒーとクッキー、二名分です。」


そういって運ばれてきたコーヒーは相変わらずの再現度だけあって香ばしい香りが漂い、クッキーはきれいな焼き目と食欲をそそる香りで現実世界ではない筈なのにおなかが鳴った気がした。

ハルはそのクッキーを一つ摘み上げるとパクリ。

コーヒーを一口飲み、ほっと落ち着いた表情になった。

それを見たラクもクッキーをひとつ口に入れた。

サクッという音と、口の中に広がるほど良い甘さとそのあとに飲むコーヒーはとても相性が良く、どんな状況でもこれさえあれば落ち着けるような気がした。

そうしてコーヒーとクッキーを堪能していると、ヒナツがいきなり本題に入った。


「お姉ちゃん。日曜日の戦闘観戦するって聞いた。本当?」

「本当ですよ。どんな敵なのか見てみたいってのもありますけど、カデン達が本気で戦うところを見てみたいってのもあります。」

「・・・・・なら私が守る。絶対に傷つけさせない!」


そういうヒナツの目には、並々ならぬ決意と闘志がこもっているように感じた。


・・・・・・今度こそ・・・・・・


少し間をあけてヒナツはボソッとそういった気がした。

しかしラクはあえてそのことについて言及しなかった。

ネット上でプライベートに踏み込むのはタブーだからだ。

それにあまり聞いてもいいことじゃないような、そんな気がした。


「・・・・・・・わかりました。ではヒナツさんお願いします。」


ヒナツは目を輝かせ、鋭い目つきから一変、子どものように、嬉しそうに目を輝かせた。


ガタッ!


ヒナツは勢いよく立ち上がり一言、「任せて。」というと、足早に喫茶店を出て行った。

その際、トウジとウィンドウを通してしっかり二人分精算して出て行った。


「全く・・・・ヒナツは相変わらずわかりやすいなぁ・・・」


トウジはコーヒーの入ったカップを一つ持ってこっちにやってくると、そういってラクの向かい、ヒナツの座っていた席に座った。


「あれはどう考えてもあれを取りに行ったな・・・・・」

「あれって何ですか?」

「そうか・・・まだラクさんは知りませんでしたね。ヒナツは本気を出すときに絶対に装備するアイテム

があるんですよ。一人で突っ込んでいってタゲを独占しそうなほど攻撃する。そのせいでついたあだ名が【鬼】。あれでもうちのPTのカデンと並ぶ主力なんです。」


もう言葉を聞くだけで鬼が目に浮かびそうだった。

あのミステリアスなヒナツが鬼となる瞬間。


「・・・・・・全く想像できない・・・」

「はっはっはっはっは!まあそうでしょうね。なんせあの性格ですから。無理もないでしょう。」

「まぁ当日は皆さんの邪魔にならない場所から見ていますのでヒナツさんに守ってもらうということはないでしょう。」

「いや、そうでもないですよ。」


トウジの目は穏やかなものから一変、戦闘時に見せる真剣な眼差しになった。


「というと?」

「今日ログインしたらアキレアから連絡が来てたんです。日曜の戦闘について。そこに敵の情報が書いてありました。聞きますか?」


ラクはコクっ首を上下に動かしてうなずいた。


「強敵と戦うときは何回かの偵察をして行動を把握してから挑むのですが、昨日出た第一陣が瞬殺されたそうです。強制転移で戻ってきた本人たちによると、そのMOBは蛇だったと。鱗は刃を全然通さない上に一撃が重い攻撃を連発してきた。だと。」


ラクはそれを聞いて、アデンの翻訳したものの中に蛇について書いたものがあることを思い出した。


大いなる森にすむ眷属は蛇のごとし


陸上にいる二足、または四足歩行の龍のことをさし、それ以外は龍ではないと当時は考えていたのだろう。

これは泳龍ナツハが巨獣と呼ばれていたことが裏付けている。

仮におれのこの推測が正しいとすると気を付けてくれ。

「泳龍ナツハ」と同等の龍がその森にいることになる。



もしこのことが本当なら、あの場所にいるは蛇ではなく龍、アデンの推測は正しかったということになる。


「どうしたんですか?そんな怖い顔になって。」

「え、いえ・・・何でもないです。」


どうやらラクは無意識のうちに顔をこわばらせているようだった。


「まぁ、蛇のことは心配しなくても大丈夫ですよ。ナツハの時もなんだかんだ言って数回リベンジして勝てましたので。」


そういうと、当時はカップに残っていたコーヒーを一気に飲むと、立ち上がってカウンターに歩いて行った。


「まぁそういうわけで、今は安心してゆっくりしていってください。」


それからラクは、10分程度くつろいだのち店を後にし、そのままログアウトした。


そして日曜日、刻々と約束の時間に近づいていくなか、ログインしたラクは集合場所の森林エリア入り口のセーフティゾーンに向かってゆっくりと歩いて行った。


祝総PV数5万回突破!

本当にありがとうございます!

・・・・・・さて、ついに次回から舞台は完全に西の森林エリアのあの場所のなります。

果たしてどんなことが起きるのか!?

必見です!

それではまた次回!

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