episode8
四人はゼラの指さした方向に向かって森林の中を進んでいた。
岩巨人のいた場所から歩き始めて10分ほど経ったのだが、いまだそれらしき建造物は見つかっていない。
おまけに奥に行くにつれて木の幹に苔がびっしりと生えたものや、枝に絡まったツタといったものが増えていき、徐々に密林と化している気がした。
「ねぇ。本当にこっちなの?全然それらしきものが見当たらないんだけど。」
ふとラクは本当にこっちで合っているのかが心配になった。
しかしそんなものは、アキレアの前向きな発言によってあっさりかき消されてしまった。
「大丈夫だよ!周りもだんだん密林みたいな風景になってきたしさ。こういう誰も来てなさそうな場所ほど何かあるのがこのゲームの特徴だしさ!」
相当やりこんでいるだけあってアキレアの言葉には説得力がある。
そのおかげで少し安心することができたラクはアキレアに向かって微笑んだ。
「ありがと。安心できたよ。」
「へへへ。どういたしまして。あ、お礼はシチューでいいからね。」
「それ最近作ったじゃん。」
「いいの!いつでも食べたいの!」
そういうとアキレアはタッタッタと軽い足取りで草木を分けて先に進んでいった。
しかし、少し進んだ先で立ち止まると、Uターンして慌てた様子で戻ってきた。
「どうしたの?」
「あった。あったよ!お城!」
「本当?見つかったの?」
「いいから来て!」
アキレアはラクの腕を掴んで無理やり引っ張っていった。
枝から垂れ下がるツタを払いながら、所々に生えた草を踏み潰しながら小走りに進んでいった。
そして連れていかれた先、そこには円を描くように巨大な断層が起き、その内側が丸々きれいに下に沈んでいる場所だった。
「ほら!下見て!」
アキレアはその断層でできた50メートルほどの深さのあろう崖の上から斜め下を指した。
ラクはアキレアの指差す先を目で追うと、その先にあったのは辛うじて石畳と家屋の跡が残り、そこら中から見たことのない草木の生えている街らしき場所と、その手前には半壊した西洋風の城があった。
「これって・・・・・街だよね?」
「うん。たぶんね。でも今までいろんな場所に行ったけどこんな場所は見たことないよ?」
するとその会話に割り込むようにアオイとゼラが歩み寄ってきた。
「それはそうよ。ここにしかない場所だし。」
「その通りだ。・・・・・しかしラクの探していた城がこれだとすると・・・・・・・」
「ん?これだとなにか問題があるの?」
なぜか急に真剣な眼差しになってぶつぶつと言い出したゼラの言葉に、ラクとアキレアは首を傾げた。
「アキレアはわかるんじゃないか?」
「え?私が?・・・・・・・う~ん・・・・」
いきなり振られた上に知っているといわれ、思い当たることがなにかないかと考え始めた。
眉間にしわを寄せて真剣に考えているが、全然思いつかないアキレアにアオイがヒントをくれた。
「東でのことを思い出して。こういう場所あったでしょ?」
「東・・・・・東・・・・・・あ!!激流島!!」
「正解。あそこも似たような感じで壊れた建造物があったろ?」
「うん。確か・・・・・」
「【オレアンダー要塞】」
「そう!それ!」
アキレア達はその場所について盛り上がっていた。
しかしラクはその場所を知らないので、一人取り残されたような寂しさを感じ、三人の会話に割り込んだ。
「ちょっと!私にも教えてよ。その・・・オランダ何とか要塞?について教えてよ。」
「【オレアンダー要塞】な。」
「そう。それについて。」
「それについては私から説明するよ!」
そういってアキレアは説明をし始めた。
「【オレアンダー要塞】っていうのはね、東の沖合にある『激流島』っていうエリアにある場所なの。ここと同じで壊れた大きい建造物があって潮風の浸食を受けていた場所なの。」
「そうなんだ。っでそこには何があったの?」
「それはほら、もうお姉ちゃん知ってるよ。何がいたか。」
ラクはここ最近の情報の中から『激流島』についてのことを記憶の中から探し始めた。
そして一つだけ、何がいるかを書いたアデンの手紙があったことを思い出した。
その手紙をインベントリから取り出し、該当する部分の書かれているページを開いて黙読した。
そして理解した。
「何がいたかって・・・・・・【泳龍ナツハ】・・・がいたってこと?」
「正解!さすがお姉ちゃん。でも正確には『激流島』に上陸したら、海から突然出てきて戦闘になったっていうべきかな。それで慌てて逃げ込んだ場所が【オレアンダー要塞】なの。わかった?」
「うん。・・・・なんとなくわかった。ってまさか!!」
ここまできてラクはゼラとアオイが言いたかったことがようやく理解できた。
「ああ、たぶんだがここにもいるぞ。【泳龍ナツハ】に匹敵する『何か』が。」
今にして思うとアデンからとんでもないクエストを引き受けてしまった・・・・・・
この状況からするに、おそらくナツハに匹敵するMOBと戦うことになる。
アキレア達が苦戦したものと同等のものとだ。
「勝てるわけがない・・・・」
ラクはつぶやいた。
絶対にクエストをクリアできない。
そう思い、このクエストを諦めようと考えていると、アオイがラクの肩に手を置いた。
「ラクは何か勘違いをしているようね。」
「勘・・・・・違い?」
果たして何を勘違いしているのだろうか。
「あ!そっか!」
どうやらアキレアも、ラクが勘違いしていることの正体がわかったようで、ポンと手をたたいてラクの前にやってきた。
「一度クエストのクリア条件思い出してみて。ほらメニューから見てみて。」
ラクは言われるがままにウィンドウからクエスト情報を開き、そこに書かれた文字を見て目を丸くした。
「あ・・・・・」
【クエスト情報】
クエスト:西の城を見つけ出せ!
目的:西の森林のどこかにある古城を見つけ出し、アデンに報告する
そう、『古城を見つけ出し、アデンに報告する』
別にそのMOBを倒さなくてもいいのだ。
今回のクエストは城を見つけて報告するだけでいい。
そしてその城はいま、ラクたちの眼下にある。
つまりこれ以上ここにいる必要はなく、ここに行くまでのルートをアデンに教えれば今回のクエストはクリアとなる。
「じゃあ戦わなくていいのね。よかった・・・・」
ラクは胸をほっとなでおろした。
しかし、ゼラの放った言葉はラクに衝撃を与えた。
「ああ、ラク『は』な。」
「こんなことだろう思って何人か『タイラント』のメンバーを第一の街に回してもらったの。私たちはここにいる奴と戦うわ。」
「そういうことだ。どうだ?アキレアも『旋風団』のメンバー誘ってやらないか?」
「え!私たちもいいの?」
「もちろんよ。むしろそうしてくれた方が討伐できる可能性が高いわ。」
「わかった!なら連絡してみる。いつやるの?」
「『タイラント』の暇なメンバーに偵察戦闘を頼むから、そうだな。来週の日曜、13時からでどうだ?」
「大丈夫。それでいいよ。集合場所は森林エリアの入り口でいい?」
「ああ。それでいいぞ。」
そうして『旋風団』と『タイラント』の一部メンバーでこのエリアの強敵MOBと共同で戦う約束をした。
「で、ラクはどうする?」
話の矛先はラクに飛んできた。
「戦いたくはないけどどんな奴か遠くから見てたいんだけど・・・・いい?」
アキレアやアオイ達が多勢を率いて挑むほどの強敵、一体どんな奴なのか。
ラクは興味を持っていた。
「わかった。なら当日に集合場所に来てくれ。」
それから少しの間、特に話す話題がなく、それぞれが城とその周辺を眺めていた。
「・・・・・そろそろ夕飯の支度しないといけないから・・・・帰りましょうか。」
「そうだな。今日の目的は達成したことだしな。戻るか。」
そうして四人は第一の街に向かってきた道を歩き出した。
「ねえねえアオイ。今日の夜ご飯って何?」
「私の好きな棒棒鶏よ。」
「あ、なら今度私の当番の時作らなくていいね。」
「それはだめ!絶対に作ってよ?私のだけでいいから。」
「あ、なら私その日シチューね!」
「なら俺は焼きそばで。」
なぜか勝手にオーダーが入っていることにラクは深くため息をついた。
「はぁ・・・・当店は勝手なオーダーは承っておりません。食べたいなら自分で作って。」
最後の一言をぶっきら棒に言うと、ラクは【身体強化:スピード】を使って全速力で走っていった。
その際、アキレアの抗議のようなものが聞こえたが、ラクは聞かなかったことにしてその場を去った。
さぁ四人が発見した場所には何がいるのか!
巨獣、城、皇、蛇・・・・・・はたまた別の何かか。
それではまた次回!
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