episode4
上空からゆっくりと、一直線におちてきた光の粒子は、地面に落ちる前に人の形を作っていった。
『転移完了。これより操作権はプレイヤー側に譲渡されます。』
最初にログインしたときと同じ声で似たようなフレーズが聞こえた。
「・・・・ん。ここは・・・・」
ラクは目を開けるとすぐに言葉を失った。
薄暗い長方形の空間、壁には何かを物語っているであろう数枚の巨大な絵画、天井には何かの戦いを描いた絵、床は円形に描かれているモザイクアートがあり、その空間の中央の天井からは巨大なシャンデリアが一つつりさげられていた。
その空間の中でラクたちを含めた5組のプレイヤーたちは背中を入口であろう扉に預けるように立っていた。
「すげーな、これ。一年ぐらいこのゲームやってるが初めて見たぞ。」
隣に立って呆然とその空間を見渡しているカデンがそういって前に歩いて行こうとした。
しかしその歩みは数メートル先で阻まれた。
「っで!なんでこんなところに透明な壁があるんだ?」
「壁?こんな広い空間に?」
「ああ、これ以上行けないようになってる。どういうことだ?」
ラクとカデンの会話に似たような会話が周りからも聞こえた。
「おい、どうなってんだ?なんで先に行けないんだ?」
「俺が知るか。」
「しかしすごい作りだな。」
「ほんとだね。うちのギルドにこの空間ほしいな。」
「・・・・・・お前ギルドに入ってたか?」
「そ、そのうち作るんだよ!」
なんか漫才みたいな会話も聞こえるが、それらを一気に黙らせる声が響いた。
『お待たせしましたぁぁぁ!』
突然その空間にこだました声にすべてのプレイヤーが肩をびくっと動かしてあたりを見回した。
『あ、ここですよ、ここ。』
その声が聞こえた方向を見ると、シャンデリアの上に立っているとにかく白い高木Pがいた。
「・・・・なにやってんだ・・・・」
「あまり見ないで・・・・・」
「あ、ああ・・・・」
あの高木Pがラクの、宿梨の父親ということを知っているカデンも改めて高木Pを見てさすがに私生活との変わりようにドン引きしていた。
隣にいるパーティーも、その隣のソロプレイヤーも冷たいまなざしであの男を見ていた。
それでも高木Pはテンションそのままで話し始めた。
『ではこれより抽選クエストを始めよう!とりあえずこれを見てくれ!』
というと、各プレイヤーの前に一枚のウィンドウが現れ、そこには五組の挑戦する順番が書かれていた。
1 46番
2 21番
3 3番
4 101番
5 57番
『それは挑戦する順番だ!そのなかで一組でも敵を倒せたら報酬を全員に進呈しよう!ではここで今回戦う敵を紹介しよう!』
パチン
指で音を鳴らすと、一番奥にあるステンドグラスに、月明かりが差し込んだ。
その月明かりは、ステンドグラスの下、今まで見えていなかった玉座を照らした。
そしてその玉座に座っている人物の姿が見えるようになった。
月明かりを反射する黒い全身甲冑。
腰に二本の片手剣、床に突き刺している巨大な両手剣。
そのすべてに竜の姿をかたどった金色の紋章が刻まれていた。
【伝承に伝わるかつての聖騎士】
それがその黒い鎧に名前だった。
その騎士はゆっくりと立ち上がると、その空間の中央まで歩いて行き、その場所で止まった。
「これを・・・・倒せばいいのか?」
『正解!この騎士を倒すことがクリア条件だ。それでは頑張ってくれ!』
そういうと高木Pは光の粒子になって消えていった。
やっとどこかにいった・・・・・
ラクは心の中で安堵したが、その安堵はすぐに警戒に変わった。
「しっかり見とけよ。いざ戦うときにパターン知っていれば有利に動けるからな。」
「わ、わかった。」
「よし!じゃあ行ってくるぜ!」
「おう、できるだけ多くの行動見せてくれよ?」
「任せろ!」
そういって一組目の5人PTが透明な壁に空いた穴から中に入っていった。
「・・・・・そんな・・・バカな・・・・・」
そういって一組目の最後の一人が消えた。
壁の外から見ていたラクたちは唖然としていた。
その騎士の強さに。
両手剣から繰り出された一発KOの薙ぎ払い。
一定以上削ったあとに繰り出される片手剣の連撃。
そして見た目に似つかわしくない驚異的なスピード。
その強さに一組目の5人PTの全員が10分と持たずに消えていった。
「うそだろ・・・・あいつら最前線で攻略してるプレイヤーだぞ・・・・それをああも圧倒的に倒すなんて・・・・・」
相当な実力を持つカデンでさえ、顔から余裕の表情が消え、いまは動揺していた。
「カデン。大丈夫?」
「あ、ああ。すこしあの騎士の強さに驚いただけだ。」
「・・・・ならいいけど。」
そんな会話をしていると、二組目のプレイヤーが中に入っていった。
「お、今度はランサーか。装備からしてラクより少し上のプレイヤーだな。」
そのプレイヤーは長身の男性で、身軽な動きで敵を攻撃する戦法だった。
一組目よりも実力は劣るはずなのに、一組目以上に接戦をし、15分間奮闘したが、あと4割というところでやられてしまった。
「おお、今度のやつはなかなか頑張ったじゃないか。」
「だな。もしかしたら一組目よりも強いんじゃないか?」
「もしかしたらそうかもな。さて、次は俺たちだ。」
「おうよ、いくぜぇぇ!!」
そういって三組目の3人PTが入っていった。
その三人が騎士と戦う光景を見て、ラクとカデンは違和感を感じていた。
「・・ねぇカデン。」
「何だ?」
「何かおかしいと思わない?」
「・・・・・やっぱラクもそう思うか?」
「うん。なんていえばいいかわからないけど・・・」
「俺も同じだ。どう説明すればいいかわからないが、三回の戦闘を見てなにかあの騎士に違和感を感じた。けどなんだ・・・・・」
「ちくしょおお!」
「できるだけパターンはだした!あとは任せるぞ!」
「うわぁぁぁぁ!」
そう叫んだ三組目のプレイヤーは消え、ついにラクとカデンの番になった。
「ク・・・ラク。」
「あ、ご、ごめん。考えるのに集中してた。」
「それでなにか思いついたか?」
「ごめん、なにも思いつかない。カデンは?」
「俺もだ。ま、とりあえず戦ってみようぜ。もし何か思いついたら教えてくれよ。」
「・・・・わかった。」
そういうと、ラクはカデンの横を歩いて壁の内側に入っていった。
【伝承に伝わるかつての聖騎士】に感じた違和感とは!?
そしてその強さにどう立ち向かうのか!?
お楽しみに!
それではまた次回!




