episode12 東:森林エリア北 VSハンターウルフ1
より強い関係になったラクとダリアは当初の目的の【ハンターウルフ】を討伐するため、その群れを探して東の森林の北側に来ていた。
気温の高かった東側とは打って変わって北側は冷たい風が木々の間を抜ける、すこし肌寒い森になっていた。
寒さをしのげる装備ではないラクは、冷たい風が腕や足に当たって、少し寒さを感じていた。
「ラク、大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫。すこし肌寒いけどこれぐらいならまだ我慢できるよ。」
そういったラクだが、心配したダリアは何かを思いついたのか、腰のポーチから小粒の赤い木の実を一つ取り出すと、ラクの口に入れた。
「んぐ。ダリア、これなに?」
口に入れられた木の実を舌の上で転がしながらダリアに木の実のことを聞いた。
「それは【コーテルの実】です。食べると体がぽかぽかしてしばらくの間寒さを感じなくなるんですよ。」
「そうなんだ。コリコリして少し辛いね。」
コリコリという触感とすこし唐辛子に似た辛さがあったが、かんでいるうちに体が温まってきた。
そして視界のHPバーの下に【状態:寒さ耐性30分】と表示された。
「あ、ほんとだ。寒くなくなったよ。ありがとう。」
「どういたしまして。ではこれは差し上げます。」
そういうとダリアはポーチから【コーテルの実】がたくさん入っている袋をラクに手渡した。
「え?いいの?」
「はい。もう一つこれと同じ量が入っている袋がありますので受け取ってください。私としても受け取って下さると助かります。」
「そういうことなら・・・・遠慮なくもらおうかな。ありがとう。」
ラクはダリアから受け取った袋を腰のポーチにしまった。
「さて、これからどうしようか。やみくもに探してもしょうがないし。」
「そうですね・・・・。ちょっと静かにしてもらってもよろしいでしょうか?」
「え?うん。構わないけど。」
そういうとラクは黙り、ダリアは目を閉じて耳を澄ませて、聞くことに集中した。
風で木々が揺れる音、小鳥型のMOBの鳴き声、動物型のMOBの鳴き声、多種多様な音の中からダリアはある音を聞き取った。
目を開け、その音が聞こえたを方向を指で指した。
「たぶんあっちだと思います。僅かですが犬のような鳴き声がいくつか聞こえました。ついて来てください。」
「わ、わかった。」
茂みや木々の間を抜けて奥に進んでいくダリアをラクは慌てて追いかけて行った、
すると、数分歩いた先に15メートルほどの高さの崖があった。
そしてその崖のふもとには先の薄暗い深そうな横穴があり、それを守りように5匹の【ハンターウルフ】が居座っていた。
「どうやらここで間違いないようですね。」
「あの場所からここにいる【ハンターウルフ】の声が聞こえたの?」
「はい。かすかではありましたが。」
狼に聞こえないように二人は少し離れた場所でひそひそと話していた。
ラクはダリアのすさまじい聴覚に驚いていた。
先ほどまでいた場所からここまでは直線距離で500メートル以上あった。
さらに様々な音の中から狼の鳴き声を聞き取ったのだ。
常識外れなダリアの聴覚にラクは目を大きく開いて驚いた。
「どうかされましたか?」
「あ、いや、なんでもない。これからだけど私があの狼を引き付けるからその間に一匹ずつ倒していってもらってもいい?」
「それは構いませんが・・・そうなるとラクが攻撃役をやった方がいいのでは?素早く動けることですし。」
「いや、私よりダリアのほうが実力はあるし、それにこっちも引きつけつつ攻撃するつもりだから。」
「なるほど。・・・・わかりました。しかし本当は弓があればよいのですが・・・・」
もともとダリアは相当な実力の持ち主だが短剣が本職ではない。本職は弓使いだ。
短剣は弓では不利な近接戦闘や散る敵に不利な場合用に鍛えたものである。
本来なら弓で遠距離射撃といきたいところだが、ラクが見つけ、ダリアに返した【天弓ダリア】は弦が切れ、修理しないと使い物にならない状態である。
「あ、それなら問題ないよ。」
ラクはそういうと、メニューを開き、インベントリから第一の街で買った【木の弓】を取り出した。
そして実体化した弓をラクはダリアに差し出した。
「木の弓だから使いづらいかもしれないけど良ければ使って。」
「これを・・・・よろしいのですか?」
「うん。そのために用意したものだし。」
これはダリアに【天弓ダリア】を返し、作戦を三人で決めたときに、ちゃんと使える弓があったらもしかして・・・・と思い、念のため買っておいたものだ。
ダリアはそれを受け取り、構えると、矢を射る態勢で弦を引き、感触を確かめた。
ビイィィィィンという音とともに揺れる弦を止まるまで見て確かめたダリアは改めてラクのほうを向いた。
「少々ずれはあるかもしれませんが、これなら問題なく射ることができます。でも、ほんとうによろしいのですか?」
「大丈夫だよ。目的地に着いたら処分してくれていいし、あの弓が修復できたら使うこともないでしょ。」
「い、いえ、大切に使わせていただきます。」
そういうとダリアは緑色の矢筒をどこからともなく取り出し、中に矢を十数本入れて腰に付けた。
「あ、矢はあったんだ。」
「はい。弓は壊れてしまいましたが、矢はたくさんあります。」
「そうなんだ。じゃあ持ち場に着こうか。」
「わかりました。では私は少し離れたあの木から狙撃しますね。」
といってダリアが指さした木は崖沿いに生えた7メートルほどの木で、周りの木より頭一つ出ている木だった。
そしてダリアは音を立てることなくその木に向かって移動した。
「どうやったら音をたてないで移動できるんだろう・・・・」
とつぶやきながらラクは、念のため装備画面の武器スロットの、片手剣の横の空きスロットに両手剣をセットした。
そしてメニューを閉じ、腰の鞘から短剣を引き抜くと、タイミングを見計らって飛び出した。
ガサガサと音を立て、茂みから飛び出したラクは、一番近くにいた【ハンターウルフ】の切りかかった。
「やぁぁぁぁ!」
わざと大きな声で、切りかかったおかげですべての【ハンターウルフ】のターゲットをとることに成功した。
だが、ラクが切ろうとした【ハンターウルフ】か軽々と避け、後ろに跳んで間合いを取った。
着地したラクは剣を持ち直し、【ハンターウルフ】の群れのほうを見た。
すると、【ハンターウルフ】はラクの初撃をよけたものの後ろから左右に飛び出して同時にラクに襲い掛かった。
「うわ、そんな連携攻撃してくるの!?っつう!」
僅かに爪で腕をひっかっかれてれてしまったが、ラクは痛みをこらえて後ろに飛び、立ち止まった二匹の向かって走り、同時に攻撃した。
「二式:連歌!」
剣を左から右に向かって横に振り、そのひと振りで攻撃を当てれば当てるほど威力に上がっていく技だ。
よって、ラクから向かって右側にいる【ハンターウルフ】のほうがダメージがわずかに大きく、
「キャイン」
と高い声を出してのけぞった。
しかしもう一匹はのけぞるほどのダメージを受けておらず、少しひるんだものの、ラクに襲い掛かった。
「しまった!」
回避が間に合わず、そのまま【ハンターウルフ】に押し倒されたラクは、噛みつこうとするのを狼の上あごと下あごをそれぞれ掴んで抵抗した。
しかし顔前まで押され、生暖かい吐息がラクの顔にかかった。
「ううぅ。そろそろやばいかも・・・・」
徐々に近づく【ハンターウルフ】の口に恐怖を抱きつつあったが、ラクがその口に噛みつかれることはなかった。
「キャウ」
という声とともに左に飛んで行ったのだ。
跳び、転がってその狼は3メートル先で止まり、光の粒子になって消えた。
その場に残ったのは、一本の矢だけだった。
ラクが襲われている間に、何とか狙撃位置に着いたダリアが射ったものだ。
「ナイスショット。」
と小声でいい、ラクは「連歌」で切ったもう一匹のもとまで走り、攻撃をさせる間もなく切りつけた。
「一式:颯!」
切り付けられたその狼も吹き飛び、止まった先で光の粒子になって消えていった。
「さて、どんどんかかってこい!!」
矢の跳んできた方向を見ている狼の注目を集め、ラクは剣を構えた。
さあ、新しい短剣技が登場し、ラク、ダリアVSハンターウルフの群れの戦いが始まりました。
これからどのような展開になるのか、必見です!
それではまた次回!




