episode6 「ダリア」
【第一の街:アマドコロ】
少し時間をさかのぼり、『アマドコロ』では、アキレアがやってきていた。
「ねえセロ。ラクちゃんどこに行ったか知ってる?」
「ラク?ラクなら東の森林だが・・・・・どうした?」
「んんー少し困ったことになったんだよね。」
カウンター越しにそういったアキレアは、腕を組み、眉間にしわを寄せて悩んでいた。
「てかなんで私にラクの居場所を聞くんだ?連絡すればいいだろう?」
「そうもいかないのよ。カデンが連絡するなーっていうから。」
「なんでだ?」
「・・・・・明後日くるアップデー情報見た?」
「ああ、見たよ。いろいろ面白そうなことができるようになるよな。あれがどうかしたか?」
「あの中にあったクエストって覚えてる?」
「クエスト?ああ、確か・・・・・・なんとかクエストだったよな。かなり無茶苦茶な発想の。」
「そう。それの最初の対象が東にいるプレイヤーらしいのよ。」
「・・・確か条件があったよな?どんなものだったか覚えてるか?」
「もちろん。東にある第二の街に到達済みプレイヤー。それが条件だよ。」
「・・・・・なるほど。そういうことか。それでどうするんだ?」
「どうにかラクちゃんが第二の街に到着するのを遅らせたいの。そうしないと巻き込まれちゃう。今の実力じゃかわいそうだよ、」
アキレアが言いたいこと、セロシアが理解したことは、つまりこういうことだ。
次回のアップデートで運用されるあるクエストの最初の参加対象は東の第二の街に到達したプレイヤー。
その中から選ばれたプレイヤーだけが参加できるというものだ。
具体的なクエスト内容はわからないが、かなり特殊で難易度の高いクエストらしく、そんなものにいきなりラクを参加させるとどうなるかわからない。
アキレアはそれを心配していたのだ。
セロシアは少し考え、インベントリの中に入っているアイテムを確認し、カウンターの奥のアイテム保管庫を確認して戻ってきた。
そして近くにあった紙に三つのアイテム名、個数を書いてアキレアの前に置いた。
「このアイテムを東の森林エリアで集めてもらうってのはどうだ?」
「ビーズフィッシュを至急って結構すぐ終わりそうじゃない?」
アイテムの数か少ないが、要求する数が数だけに、すぐに終わってしまうのではないか。
アキレアはそこが不安だった。
「いや、方法を教えなければある程度は時間稼ぎできるだろ。」
「ならヒナツたちにも聞かれても教えないように言っておかないとね。」
「あそこは大丈夫だろ。結構確立低いし、少ししたら中効薬草も追加で至急持ってきてくれって頼むつもりだから。」
「・・・・・・それなら大丈夫そうね。よし!それでいこう。」
目の前で右手を前に出し、親指を立ててグッドサインをするアキレアを眺めながら、セロシアはカップに入った紅茶を飲んでいた。
「・・・・・・・なぁ一つ聞きたいんだが。」
「ん?なに?」
「ラクをログインさせないっていう手はなかったのか?」
「無理みたいだよ。カデンもそれは考えたみたいだけどそもそも自分がインするのにどうやってインするのを防ぐんだー!って悩んでた。」
「なるほど。カデンらしいな。」
その後、二人は運用されるクエストについての話で数時間盛り上がったそうだ。
【東:森林エリア 湖セーフティゾーン】
時間は現在に戻る。
「ん・・・・あれ?・・・私いつのまにか寝ちゃってた?」
椋りと起き上がって、目をこすりながら時間を確認した。
それほど長く眠っていたわけではなく、10分ほど眠っていたようだった。
「ふあぁぁぁぁぁ・・・・・」
大きなあくびをし、腕を上げて体を伸ばして目をこすった。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「おはよう・・・・結構ぐっすり眠れたみたい・・・・ん?」
ラクは声にした後ろに振り返ると、そこには小屋で眠っているはずの緑色のフードを深くかぶった金髪の女性がしゃがんでにっこりと微笑んでいた。
寝ていた時はわからなかったが、目はぱっちりと開いた大きな目で、目の色は明るい緑色で宝石のような目をしていた。
ラクは一瞬、だれなのかわからなかったが、服を見てだれなのか把握した。
二人はゆっくりとたちあがった。
女性の身長はラクとほぼ同じぐらいだった。
「えっと・・・・あなたも起きたのですね。」
「はい。ここまで運んでくださり、ありがとうございました。私はダリアと申します。以後お見知りおきを。」
「え?あ、ラ、ラクです。こちらこそ。ってダリア・・・・どこかで・・・あ!」
突然大きな声を出したラクに、ダリアは体をびくっとさせ、フードを深くかぶって顔を隠し、少しおびえた目でラクを見ていた。
ラクは右手でメニュー画面からインベントリを開き、その中からあの弓を取り出した。
【天弓ダリア】
バリケード内の湖の底に沈んでいた、弦の切れて修復しないと使い物にならない弓だ。
実体化した弓を両手で持ち、ラクはそれをダリアの前に差し出した。
「あの、この弓ってダリアさんのものですか?名前が同じなのでもしかしてっと思ったんですけど・・・。」
その弓を見てダリアは目を大きく見開き、ラクとその弓を交互に見ていた。
「この弓は・・・・・・確かに私のものです。でも・・・どうしてあなたが?」
なぜなくしたはずの弓をこの目の前の少女が持っているのか。
ダリアはそれが気になった。
「森林の中にあるこことは別の湖の底に布に巻かれて沈んでいたんです。それを潜ったときにたまたま発見して持っていたんです。これはお返ししますね。」
そういうとラクは弓をダリアの前にぐっと突き出した。
いまだ動揺しているダリアはすこし困った顔で弓を見つめると、顔を上げて再びラクの顔を見た。
「本当によろしいのですか?これを発見したのはラク様でいまはラク様のものです。私がこの弓を譲っていただいていいものなのか・・・・」
妙に礼儀正しいダリアはどんな形にしても、一度手放したこの弓を受け取るのは申し訳ないと思っていた。
「いや、ですけどこれはもともとダリアさんのものです。それに私は弓を使えないので。正しく使える本来の持ち主が持っていた方がいいかと思うのですが・・・・」
「いえ、そういうわけには・・・・」
次第に緑色の瞳から流れ始めた涙が、この弓がどれほどダリアにとって大切なものなのかを物語っているようだった。
ラクはこのことに一歩も譲る気はない。
その強い意志を目に宿し、じっと彼女のことを見つめ続けた。
「・・・・・・・・ほ・・本当に・・・・・よろしいのですか?」
「はい。どうぞ。」
その言葉を聞いてダリアは、瞳から流れていた涙を拭き、すこし震えている手でその弓、【天弓ダリア】を受け取った。
そしてその弓をぎゅうっ強く抱き、涙を流してその場に座り込んだ。
「ありがとう・・・・ございます・・・」
それから5分ほど、ダリアは弓を抱えて泣いていた。
その後、ダリアがようやく泣き止み、涙を拭いて心を落ち着かせた。
泣いたことによって目を少し赤くし、ラクを見上げる形で話し始めた。
「はぁ・・・・すみませんでした。あのような恥ずかしい姿をお見せして・・・」
「気にしないでください。それよりその弓とても大切なものなのですか?」
ラクはこれまでのダリアの行動から、とても大切なものであると感じていた。
それを確かめるように、なるべく自然な形で本人に聞いた。
「はい。これは両親が私のために作ってくれた、ただ一つの私の宝物なのです。ここに来るまでになくしてしまって・・・・もう見つからないと思っていたのでどうすればいいのか・・・・」
再び泣きそうになっているダリアを慰めるように、そっと自分の手をダリアの手の上に重ねた。
それから再びダリアが落ち着くまで、ラクはそのままの状態でいた。
それから少ししてダリアが完全に落ち着き、はじめと同じ笑顔を作ることができるようになった。
それを確認したラクはそっと立ち上がり、ダリアに手を差し伸べた。
「ここでは何なのでアデンさんの小屋に戻りませんか?」
「アデンさん?それはどなたですか?」
「さっきまでダリアさんがいたあの小屋の持ち主です。名前を聞かなかったのですか?」
「はい。目覚めたときにあなたが湖にいるからお礼を言ってくるといい?っといわれましたので。」
「そうなんですか。じゃあお礼も兼ねていきましょうか。」
「そうですね。行きましょうか。」
ダリアはその手を掴んで立ち上がると、二人は話しながら小屋に歩いて行った。
ダリアの顔からはすでに緊張、不安などの感情が完全に消え、今は楽しそうに時に笑いながら歩いて行った。
【ラクの活動記録】
あの金髪の女性が目を覚ました。とても礼儀正しくて最初は動揺したけど、弓を返した後はとても楽しい話ができてよかった。結局フードは取ってくれなかったけどいつかあの人の素顔を見てみたいなぁ。
【入手したもの】
なし
ダリアちゃんと【天弓ダリア】。
同じ名前の女性と弓が再開しましたね。
何者なのか。どうしてなくしたのか。これからどうするのか。などなど、
これからわかっていくと思うので引き続き第二章をお楽しみください。
それではまた次回!!




