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episode10 これより下未修正

2017/5/22 文章修正

 【古石板の岩巨人】を『旋風団』の四人とともに倒しまくった次の日、ラクはまたしても【西:森林エリア】にいた。


森林内や手前の【草原エリア】で残る防具を作るための素材の回収に来たのだ。

残る素材はある程度簡単なものがほとんどで、ラク一人でもなんとか集めれるものばかりだ。

それから数分は周辺で【採取系アイテム】を集め、今からは最後の素材である【猛進牛の角】をとるために草原エリアに移動していた。


「これで最後の素材だけど……よりにもよってあの牛かぁ。あの時のことはあんまり覚えてないけど……たぶん【突進牛】と行動は似てるよね。」


ラクはたまたま近場で草を食べていた【猛進牛】を見つけると、あの時と同じようにインベントリから小石を取り出し、【身体強化:アタック】を使ってその石を投擲とうてきした。

思いっきり投げられた石は若干回転しながら飛んでいき、【猛進牛】の胴体部に命中した。


「モオオオォ!?」


ラクの投擲でわずかによろめいた【猛進牛】、はラクをターゲットにすると、前回と同じように地面を蹴って勢いよく突進をしてきた。


「【身体強化:スピード!!】」


わざわざ言う必要はなくこのスキルを念じるだけでいいのだが、ラクはあえてそういうと【猛進牛】が迫ってくるのをその場でじっと待った。

それから数秒後、牛との距離が数十センチのまで来たギリギリのところで突進をよけると短剣を抜刀し、かわされて隙だらけの【猛進牛】の腹部を切り付けた。


切り付けられた牛はうめき声をわずかに上げるが失速することなく、そのまままっすぐと進んだ先でUターンをし、再びラクに向かって突進してきた。

だがラクは素早く振り返ってた対応、再び避けて今度は首元に一撃。

だがラクは切り付けたあとの移動の際、不注意で草に足を絡め、その場に倒れるように転んでしまった。


「いったぁ……ってやば!」


【身体強化】をして回避しようとしたが間に合わず、ラクは牛に思いっきり腹部を蹴り飛ばされ、草原を3メートルほど転がった。

転がったせいで土が服や体に付着し、口内のはジャリジャリとした食感がした。

ラクはよろよろとと立ち上がり、口に入った土と頬に着いた土を取って剣を構えた。


   HP:79/113


「いまので……だいたい三割かぁ。うーん……やっぱり今のは【スピード】じゃなくて【ディフェンス】にするべきだったかなぁ。――さて、そんなことより昨日の成果、試してみるとしますか」


ラクはウィンドウを表示させ、メニュー項目の中からスキルリストのページを選択。

まだ片手で数えれるほどしかないスキルの中から一つのスキルを選択した。


すると手に持っていた短剣の刀身がうっすらと青い光を帯び始めた。

それから刀身の輝いた短剣を構え、ラクは【猛進牛】に向かって走り出した。

それに呼応するようにラクに向かって走る【猛進牛】。

両者は地面を蹴り、草を踏んでまっすぐと進んでいった。


「ブフォォォォォォ!!」

「一型・はやて!!」


ラクは牛の首筋に狙いを定め、下から上に弧を描くような短剣の振り上げモーションを行った。

それに対する【猛進牛】は角を前に突き出し、ラクの攻撃に恐れることなく直進していった。



ラクの一撃によって【猛進牛】の首筋に赤く発光する細い線が刻まれ、牛はまるで糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ち、数メートル草原を滑ったのち、静止した。


だが牛もただではやれてはいなかった。

ラクは右肩をえぐるような牛の角の攻撃でダメージを食らい、そのせいで手に持っていた短剣が零れ落ちて地面に突き刺さった。


ラクはすっと体勢を立て直し、自身の右肩を慰めるようにそっと撫でたあと、念のため自分のHPを確認した。


  HP:45/113


「いててて……半分以上持ってからたかぁ。攻撃と回避の両立にはまだまだ時間がかかりそうだし、工夫が必要だなぁ。練習しないと」


それからいつの間にか消えた【猛進牛】の代わりに、この戦闘でのドロップアイテムが急にウィンドウに現れ、表示された。

しかもどうやら運がよかったようで、目当てのアイテムが一発で必要数手に入れることができた。


「やった。全部そろったじゃん。さっそくセロシアさんのところにいこっと」


嬉しそうな表情でウィンドウを閉じ、ラクは第一の街の『アマドコロ』を目指して走り出した。



〇――〇


 『アマドコロ』に到着し中に入ると、そこにはカウンターを挟んで会話をしているセロシアとカデンがいた。

二人はカウンターの上に置かれたアイテムを見つめてなにやら商談をしているようだった。

だが二人は空いた扉の音に反応してほぼ同時にその方向を見た。


「あれ?カデンだ」

「ん?よう。結構頑張ってるみたいだな」

「結構ってどういう意味よ」

「気にするなって。こっちの話だ」


「きたな。素材は全部そろったのか?」

「はい。この通り」


ラクはウィンドウからインベントリを開き、必要なアイテムをすべて選択してセロシアに送った。

その一覧をセロシアはカウンター上においてあった紙にメモしていき、必要数がちゃんとあるものにはどんどん丸を書いていった。


「――うんばっちりだな。これで装備を作る用意は整ったけど、なにか要望ある?」

「要望?」

「そう。例えば見た目が忍者みたいな感じとかスカートで短いほうがいいとか、露出低めとか。性能で火力重視とか、防御重視とか、とにかくなんでも。性能はある程度尖らせることができるけど、デザインは完全にオーダーメイドできるよ」

「なるほど……」



「ならノンスリーブにしてほしいのと、半ズボンで。なるべく動きやすい服装でお願いします」

「了解。ということはスピード重視……か。しっかし即答とは驚いた」

「そうですか?」

「ああ、いろんな意味で珍しいな」

「へぇ……」


ラクは最終的にスピード重視のカウンター戦法という戦闘スタイルにした。

現実では足を怪我して思いっきり走ることができなくなったが、この世界では思いっきり走れる。


せっかくだし思う存分走ってやろうじゃない。


「それにしてもなかなかハードなスタイルにしたな。――まあラクのリアル知ってれば納得できるけど……」

「せっかくだしね」


「――それで、さっきの以外で要望ある?」

「いえ。さっきの要望以外はすべてセロシアさんに任せます」

「お、よかったなセロシア。責任重大だ」

「全くだよ。けどやりがいはあるね。――完成までに2日ほど時間かかるからそれまではなにかし待ってて」

「わかりました」


「それと、対人戦がしたくなった時はヒナツにでも連絡するといいぞ。昨日ラクがログアウトした後、俺にラクと一緒にいたいって必要以上に迫ってきたし」

「へ、へぇ」


「それじゃあそろそろログアウトします。防具よろしくお願いします」

「まかせろ!期待以上のものにするよ」


ラクはメニューからログアウトボタンを押し、この世界を後にした。



〇――〇


 それから次に宿梨やどりがログインしたのは、二日後の土曜日の昼過ぎだった。

午前中は家事当番で忙しく、ログインできていなかったのだ。


ロードが完了し、ラクは動けるようになってすぐに西の森林エリアに向かった。


いまは少しでもうまく動けるようになりたい。

いち早くいろんなところに行きたい。


そして防具が完成した暁には、東にあるという【第二の街】を目指しながら冒険をする。


そんな思いでプレイしていたら、いつの間にか二日も立っていた。


そして【草原エリア】の中間あたりで待ち望んでいたセロシアからのチャットが来た。


『ラク完成したぞ。ラク専用の防具が!早速店に来てくれ!』


ラクはそれを読むと、そっとウィンドウを閉じ、【身体強化:スピード】を使って【第一の街】に向かって走っていった。



〇――〇


 街中を息を切らしながら『アマドコロ』を目指して走っていると、転移柱広場の付近ででヒナツと出くわした。


「そんなに急いでどうしたの?」

「え?あ、ヒナツさん。ハァ……ハァ……いつから隣に……?」

「さっきそこの広場でお姉ちゃんが走ってるの見つけた。だから追いかけてきた。」

「な……なるほど……」

「でどうしたの?」

「ハァ……ハァ……セ、セロシアさんから…連絡……防具ができたって……あったから、森から走って戻ってきたん……です」

「お姉ちゃんの防具……。私も見ていい?」

ヒナツは首をかしげてかわいらしく聞いてきた。

「いいですよ。なら休憩するのもかねて歩いていきま……」

「その必要はない」

「――え?」

「私がお姉ちゃんを抱いて走るから大丈夫」

「ちょっと……なにいって……。ひゃぁぁぁぁぁ!!!!」


そういうとヒナツは、ラクをお姫様抱っこをしながら、【身体強化】を使ってものすごいスピードで『アマドコロ』に向かって走っていった。

それから2分後には『アマドコロ』に到着したが、ラクは若干酔ってしまい【混乱】を受けていた。



「……ごめん」

「い、いや、らいじょうぶです」


「お、来た来た。ってどうした!?」


【混乱】をうけてふらふらになり、ヒナツに支えられているという予想外の光景に、セロシアはガタッっと椅子から立ち上がって近寄ってきた。


「私が原因。お姉ちゃん運んだらこうなった」

「おいおい、すこしは手加減して走ってやれよ。レベル違いすぎて許容オーバーからの混乱受けてるじゃないか」

「ごめん」


それからはラクの【混乱】が治るまで店内のソファに寝かせ、ふたりは奥の部屋でお茶を飲んで待っていた。


数分後、ラクは受けていた【混乱】が解除され、二人がいる部屋にやってきた。


「お待たせ。もう大丈夫ですよ」

「そうか、じゃあラクも元気になったことだしお披露目といこうか」


セロシアは部屋の中にあった布の掛けられているものの前に歩いて行った。


「もしかしてそれ?」

「正解。この布の下にラクの装備がある。では見てくれ!」


バッという音とともにセロシアが布をめくると、そこには一組の装備が飾られていた。


袖のない黒いシャツの上から白色がベースで黒い枠の黄色いラインが肩や服の裾にあり、長さが肋骨の下あたりまでしかないベスト、同じデザインのホットパンツ、腰に小物を入れれるポーチのついたベルト、そしてひじの隠れる長さの、服と同じデザインの白い手袋、足には金属板がつけられて入り、脛の隠れるほどの長さのブーツがあった。

ブーツは黒色の生地でできている。


「これが……私の装備?」


ラクは目の前にあるこれから自分の身に着ける装備に見とれていた。


「テーマは光。短剣でスピード重視ならぴったりだと思う。極力軽めにしたけど腕と足の防具は必要だと思ったからつけさせてもらった」


「まさかここまでのものがあの素材からできるなんて思わなかった。けどいいですねこれ」

「気に入ってくれたみたいでなにより。その装備の名前は【アサルトラベラー】。これからいろんなプレイをするラクにピッタリだろ?早速着て私たちに見せてくれよ。向こうの部屋で着替えてきて。」

「うん。すぐに着替えてくる」


ラクはそういうと、新しい装備一式をもって指定された部屋に走っていった。


ちなみに装備変更するときは現実同様脱がなければならないのでカデンの前で着替えるわけにはいかないのだ。


「そういえばヒナツ。気が付いたか?」

「なにを?」

「ラクの装備。ヒナツのものと対照的だということ。」


実はヒナツの装備【黒衣一閃こくいいっせん】はセロシアが作ったものだ。

【アサルトラベラー】がこのデザインになったのはいくつか理由がある。その中のひとつに、ヒナツがラクのことを慕っているのを見たセロシアが、ヒナツはどう反応するんだろうっと思い、対照的なデザインにしたというものがある。

もちろんそのことは伏せて教えた。そしてヒナツの反応はというと・・・・。


「対照的。お姉ちゃんと同じ服……」


顔を赤くしてそんなことを言っていた。


なんでだ……



それから少し後、ラクがあたらしい装備を着て部屋に戻ってきた。


「ど、どうかな」


ラクのいる方を振り返った二人は、しばらく黙ってみていると、また後ろに振り返ってひそひそと話し出した。


「ヒナツ。私もしかしてとんでもないことをした?」

「むしろ完璧」

「でもあれ絶対やばいって」

「その時は私が守るから問題ない」

話が終わった様子の二人は再びラクのほうを向いた。


「なにかいやな単語が聞こえた気がするんでけど……」

「いや、全然そんなことは言ってない」

「すごい似合ってる」

「そうですか?ありがとうございます」


それから装備のお披露目会的なものは30分ほど続いた。

セロシアのこだわりポイントやヒナツの暴走などいろいろなことを説明された。

そしていまはゆったりとお茶を飲んでいた。


「ところでセロシア。早速出発してもいいですか?」

「出発?どこに?」

「前言ってた東にある【第二の街】」

「第二の街って……ああ。準備はできたか?最低限の回復アイテムは持って行った方がいいぞ」

「それなら大丈夫です。ここに来る前に全部そろえておきましたので」


「わかった行っておいで」

「ありがとうございます。じゃあ行ってきます」


ラクはカップに残っていた紅茶を飲み干し、走って『アマドコロ』を出て行った。


「これでラクもようやくいろいろな場所に行けるな」


そうカデンはつぶやくと、テーブルに置かれていたクッキーをつまんで口に放りこんだ。


セロシアとヒナツは。ラクのこれから経験するであろうことを想像し、くすっと笑ってお茶を飲むのだった。


これで第一章ほぼプロローグはおしまいです。

次回からは文末にもあるように、第二章を投稿していきます。

どんなものがラクを待っているのでしょうか。どんなものを見つけるのでしょうか。

お楽しみに!

それと二章以降の投稿時間ですが、一章のものと二章にもののデータを見比べたうえで変更するので、決まったら報告いたします!

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