episode16
ラクはクリュに手を引かれ、クリュが走ってきたルートを歩いていた。
見た感じこの通路の構造も、ラクの走ってきたあの通路とほとんど変わらない。
少しだけカーブが緩やかな場所があったり、急な場所があったりとラクのルートよりも走りにくい構造だった。
これでもこの子は私よりもずっと早かったんだよね……
小さく、華奢な体つきのクリュからは想像しがたいことだが、それが事実である以上聞かずにはいられなかった。
「ねぇクリュちゃん」
「ん?なに? 」
「何か走るときのコツとかあるの? 」
「コツ?ん~……」
「やっぱ楽しまなきゃダメだね。走るときは考えちゃだめだね」
「考えちゃダメ……か。でも道先が見えないとそんなに楽しく走れないんじゃない? 」
「そうでもないよ? 」
「え? 」
「走っていたら風の流れを感じられるからね。風と一緒に走ったら自然とこの先がどうなってるかがわかるんだ」
「へぇ……」
どうやらもともとからそういう能力があるのだろう。
これに関してはどうしようもないと感じるラクだったが、それでもあきらめていないラクは、
「何回負けても絶対勝つからね。覚悟しておいてね」
と笑顔で語りかけた。
才能だろうが能力だろうが関係ない。
私は私にできることをすべてやって勝つ。
あきらめたら勝つことはできなくなるし、前向きじゃないと挑戦もできない。
とにかく勝負から逃げちゃダメだ。
自分自身に語り掛けるようにそう心の中で唱えると、ラクは突然走り出した。
「ラ、ラクさん!? 」
「私先行ってるね。ウォーミングアップはしっかりしないといけないし」
「うぉーみんぐあっぷ?……まあいいや。待ってよ!ボクもそれやる! 」
クリュは勢いよく走りだし、ラクと並走して最初にいた場所へと向かっていった。
〇――〇
【俊走回廊】の入り口に戻ってきたラクとクリュは、再び自分の選んだルートの前で構えた。
クリュはどこからか先ほどと同じ火薬玉を取り出し、着火して後方に投げた。
ゴトッっという音とともにジリジリと導火線の焼ける音が聞こえる。
やがてその音が止むと、ラクは先ほどまでとは一変。
目が鋭く通路の先を見つめ、体はほぼしゃがんだ状態に近いクラウチングスタートの体勢になっていた。
ギリギリまで重心を前に移動させ、【身体強化:スピード】を発動してその時を待った。
クリュも先ほどと同じ体勢になったが、ラクとは対極的といえるほど笑っており、そのめはきらきらと輝いていた。
「ねぇラクさん」
突然クリュが真剣さのこもった声でくちをひらいた。
「なに? 」
「もし私がずっと勝って。ラクさんがあきらめたら聞いてほしいお願いがあるんだ。いいかな? 」
「……わかった。その時はそのお願い、聞いてあげるよ」
「ありがと。――じゃあ行くよ! 」
パァァァァン!!
先ほどよりは軽く、音も小さいが、それでもその音はしっかりと合図の役割を果たし、二人はほぼ同時に通路へと飛び込んでいった。
今回はいつもより短いです。
第4章も折り返し地点?
これからどうなるのか?クリュのお願いとは?
これからもよろしくお願いします!
それではまた次回!
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