一の五(一の余)
ある村人の証言
四人の旅の御方が馬で村に来られたのは十日ほど前のことでさ。
全身きらきらした鎧の人。ばかでかい剣を持った、これまたばかでかい人。目つきの鋭い弓の人。人の良さそうなローブの人。どの方もこのあたりじゃ見かけない感じで。どう考えてもワケありの食いつめ者が流れてきたんとは違うんで、あっしらも失礼のないようにと気を使いやした。もちろん別の意味ではワケありだろうなと思いやした。
こんな田舎は何の娯楽もないんで、初めて見るような人らに子供らは大はしゃぎでさ。それでも嫌がらずにいっしょに遊んでくれて、特にばかでかい人は大人気で。あんな力持ちででかい人はあっしも初めてで。南のほうにどでかいやつらがいると聞きやすが、それですかね?
あっしら大人にはローブの人がありがたかったでさ。生まれて初めて神のみわざを、ご威光を、この身で知ることができやした。あっしは木を切りすぎたせいかもうずいぶん長いこと肘がおかしかったんですが、このとおりちゃんと動くように。これが神の力かと、これが本物の神官さんかと。できればあんな方をひとり、このあたりに置いてもらうわけには……すいやせん、出すぎたことを。
結局こんなはずれまで何の用があんのかと思ったら、山のカミさんのことを詳しく聞いてきて――こりゃ失礼しました――山のケモノのことを知りたがって、ああ、それかと。
こんないい人らに酷い目に遭ってほしくないんで、森の奥のほうへ行かんかったら大丈夫だよとお伝えしやした。分かってることはたいしてないんで、それぐらいしか言えないんでさ。森の奥からその先の山々は広いですけんど、一帯が縄張りなもんで、とにかく近づくなと。近づかんかったら悪させんと。子供のころからそれだけはよう聞かされてますんで。
それでもその人らは出ていかれやした。丸一日経っても戻らんかったら森に探しに来てくれと。こりゃやべぇなと思いやした。この人ら絶対に奥まで行く気だわと。案の定、帰ってこんので仕方なく村の男たち総出で行きやした。
そりゃ怖いですけんど、もらうもんももらってたんで。木に傷をつけて目印にしてあったんで跡をたどるんは楽でさ。森を進んで、滅多に行かんあたりから奥に入るとだんだん空気が変わってきやした。信じられないほど静かで、冷たくて。あっしもそんなところまで入るんは初めてで、連れていった犬はぎゃんぎゃん吠えまくるわ、他のもんも帰りたがるわ、大変でさ。
さらに進むと変なにおいがしてきやした。生臭いにおいと、焦げくさいにおいが。これはダメだ、これはやばいと思ってたところ、すぐ見つかりやした。
胸がへこんだ弓の人。脳天を割られたばかでかい人。木の根元にボロボロの神官さん。最後に酷いありさまの女が……これが鎧の人だったのかと驚きやした。体中、のたくる古傷と生傷だらけで。
息があるのかないのか分かりやせんが、もうこの場にはいられないと急いで全員連れ帰りやした。女の人はうちの女房に任せやしたが、あまりの姿に泣いちまって。もう股が裂けてるような状態で。
あっしらの手には負えないなと、どうしようか迷ってるうちに皆さま方が到着されやした。
もう誰も森の奥には近づけやさせやせん。子供たちにも行かせやしやせん。これだけは守っていきやす。