4・バトルとはロマン、それは間違いない
初めての異世界街での朝。
流石は異世界、朝の定番とも言える鳥の鳴き声一つとってもなんか妙に迫力を感じるぜ。
『つっても、もうお昼に近いがのう』神
―チッ、てかまだ出番あんのかこのクソ野郎…。
まっ、そんな事よりさ。実は俺、いきなり叩き起こされたんだよね宿屋の人に。
つーか鍵掛けてたのに勝手に入って来るなよって話だよまったく…。
まさか異世界転移して初の朝がいきなりコレだなんて、もちろん俺もびっくりだ。
「えっ、もう朝飯の時間なのか?。でも俺、起きてすぐ飯は食えないタイプなんだよね」とか思ってたら、半分寝たままの状態で衛兵たちに外へ連れ出される。
そして衛兵は、街でも一際大きな建物を指差して吠えたのだった。
―いや、「あれを見ろ!」って言われてもなあ。
「えっ、スーパーマン?、いや飛行機か?、違うぜただの鳥じゃんよ!」みたいなボケしか出て来ねえよ、やめてくれ朝っぱらから恥ずかしい。
あー、はいはいマジメにね。
分かってるって。うん、グリさんが乗っかってるね、大きな屋根の上に。
衛兵や宿の人と一緒に見せられた光景。そこには、一際デカい建物の上に鎮座するグリさんの姿が…。
―つーか、妙に迫力のある鳴き声はコイツだったのか…。
どうやらかなりの人間が外に出て来て、みんな鳥を眺めてる。
ただ、その大きな屋根が領主の館らしくてむっちゃ怒られた。
―ま、気持ちは分かる。でもな…。
「それを俺に言われても困るんだよなぁ」
なので、俺もそこはちゃんと反論した。
だって俺とあの鳥はあんま関係無いからだ。
それに、だいたいあの鳥は俺がどうこう出来るモンスターじゃねーしな。
要するにあのグリフォンは、俺が煮て焼かれて朝飯にされようが何とも思わねえだろうし、俺だってあの鳥が焼かれてタレ付けされて美味しく頂かれようが知ったこっちゃねーのだ!。
そう衛兵たちにぶーたれてたら、早速グリさんが俺を見つけて降りて来た。うげっ。
「あ、グリさんおはよーっす」(と揉み手でソッコー手の平返すおれw)
すると自動的に役人、衛兵どもがビビッて俺たちから離れて行く。ふっ、結構なこった。
面倒くさいから、俺はそのままグリさんに乗って街の外に脱出した。
「ふぁ〜、まいったまいった…」
だが街のすぐ近くで一旦降りて、大アクビしてたらグリさんに怒られた。起きるのが遅いってさ…。
なんか朝から怒られてばっかだよ…。
『だからもう朝じゃねーしのう…』
―チッ!。
朝から(※もうお昼です)無理やり起こされて、鬱陶しい騒ぎに巻き込まれっぱなしの俺は、いい加減舌打ちした。
「ったく知らねーよ、どいつもコイツも勝手に人を無理やり起こしやがって。なんでテメエの起きる時間を他人に決められなきゃならないんだよ?、いい加減にしろよな!。
言っとくが、睡眠時間に関してはこれは誰にも邪魔させん、たとえそれがグリさんであろうともな!」
と、そう半ば寝惚けた頭で恐れ知らずにプチキレたら、意外とグリさんすんなり分かってくれた。「え、そう?、それはゴメンな」ってw。
ん?、なになに?。このグリフォン結構押せば通る感じなのかな?。
ま、分かってくれたらそれでいいよ。
で、それで?。
「ところでグリさん、今日はなんの用?」
そう尋ねると、「ヒマだからなんか遊ぼうぜw」と補足で答えが帰って来た。
「……………」
えー、あんたヒマ人なのかな?。
つーかもしかして高位のモンスターって結構ヒマしてるのか?。まあライオンとかそんなイメージあるけどさ…。
でも、それより俺はこれからこの世界で生活考えて行かなきゃならないんですよね。あんま鳥と遊んでるヒマは…、とか言ってると。
「じゃあ手伝ってやるw」と補足が。
―う、う〜ん、手伝うと言われましてもね…。なんか大雑把な事言うなぁ。
ま、手伝うのはいいんだけどさ、そもそもグリさんの背中に乗るってキツいんだよね、俺レベル1だから。(いやレベル関係ねーし)
すると、「お前の乗り易い様にしていいゾw」とグリさんから返事が…。
なんかグリさん、あんた本当に付き合い良いな…。てか、もしかしてそれほどヒマなのかな?。
まあ、そこまで言うならって事で、もう一度街に戻ってそれ用のお店、雑貨店を案内して貰う事にした。俺たちを遠巻きに監視してた衛兵をガッシリ捕まえて。
んで、革のベルトを買った。
そしてそれをグリさんの首に巻き、その片端を俺のベルトに結ぶ。ただだけのお仕事だ。
でもこれだけで俺がしがみつく労力が大幅に省かれるってもんだぜ、イェ〜イ。
それからついでに寒いので、俺の上着も買っておこう。だって今の俺の格好は、ジーパンにTシャツだけだからね。そら寒いはずだよw。
と、そこで道具店の店主が、グリさんの羽を少し分けて欲しいと言って来た。グリフォンの羽は貴重で需要も高いとの事。
ま、別に俺にはどうでもいい事なので、グリさんに聞いてみたらあっさりOKが出た。羽の一枚や二枚どおって事無いらしい。
グリさんがゴソゴソと羽をまさぐる。
一応、一番大きくて立派な奴なと言うと、流石にグリさんも顔をしかめる(そんな気配が)。
ちなみに道具店の店主が言うには、グリフォンの羽は風切羽とか言う所が一番価値が高いらしい。
どうもグリフォンの羽は装飾品として人気があるだけではなく、魔法の触媒にも使われると言うのだ。
と言う事で、羽2本が10万TH(TH=通貨単位)で売れた。日本円で言うとそのまま約10万円だ。
―ええ?、1本5万てマジか!?。
つーか、これだけで食って行けるじゃん!。あんまりやったらグリさん相当ハゲそうだけど。
驚きながらグリさんにサンキューって言ったら無視された、ツンデレだなグリさんw。
しかもグリさんは要らないらしいので、お金は俺がありがたく貰っておくww。
結局、ベルトと上着が計1万ちょいだったので、逆に儲けちゃったぜ!。
ちなみに俺はお金を持っている。むろんこちらの世界向けの通貨だ。
これは例の神様から事前に巻きあげ…、いや頂いたものであるw。日本円にしておよそ50万円くらいだって言ってた。
その後、俺とグリさんはとりあえず街を出た。
そしたら早速これからどうする?、とか聞いて来るから(あんたいつも丸投げやな)、とりあえず適当な方向へ飛ぶ事にした(つか、お前こそ常に適当だろ、とグリ)。
ズッキューーーーン!
と、グリさんが最高速でぶっ飛ばす。
これまでに無い全速力だ。
―って、おい!。
いくら補助具で連結してるからって、そんなにトバしたら結局ハードモードに変わりないじゃん!。
しかしグリさんは俺の事など構わず、巨大な森林を越え、雨雲の横を掠めてぶっ飛んだ。
そして広大な湖を見つけると、低空飛行して水面を衝撃波で弾き飛ばす!。
―おーーー、でも慣れたらこれ結構楽しいわっ!。
「イーーーッヤッホーーーw!」
俺たちは、いつの間にか大声で叫んでいた!。
しばらく爆走した後、ようやく俺たちは切り立った崖の上で休憩していた。
―ふぅ、体が冷えたなぁ。つーか腹も減った…。
と、その時だ。
突然グリさんがビクッと身じろぎした。
そして焦った様子でその巨体を小さく縮めるグリさん。
それは豪快なグリさんにしては珍しい反応だった。気になったのでグリさんの鋭い視線の先を見ると、そこに天空を漂う何かがあった。
―う〜ん、なんか居る…?。
まあ、間違いなく何かは居るんだが、正直俺にはそれが単なる点にしか見えない。
ただ、恐らくグリさんにはしっかり見えているのだろう(鷹の目っぽいし)。それにこの距離で一応俺でも視認出来るくらいだから、実物はかなりデカいはずだ。
―もしかしてドラゴンとか何かかな?。
流石のグリさんもドラゴン系には敵わないだろ?。そう思って見上げると、突然虚勢を張って胸を反らすグリさん。
「あ、あのねぇ…」
他人の補足を覗き見るのは結構プライバシーの侵害っぽいからあまり見ない様にしようと思うんだけど、これは見ないでも分かる。グリさん現在かなりの挙動不審だし、絶対にビビってるよね?。
「え、ビビってないって?。
ふ~ん、それじゃあいっちょ確認してみようじゃん?」
流石にこんなに遠くからだと、鑑定どころか生き物かどうかも分からない。だから近くまで寄って、とりあえずあれが何なのかはっきり確認したい。ま、たぶん生き物なんだろうとは思うが。
案の定ビビって及び腰なグリさんを宥めすかしつつ、俺たちは未確認飛行物体のいる方向へと向かった。
情けない事に、グリさんかなりビビって地上スレスレを飛ぶ始末。
そしてしばらくするとようやく俺にも見えて来た。やっぱドラゴンだ。
正確にはワイバーンだな、計3匹いる。
「それにしてもデケェなこれは、こんなの3匹もいたら無敵だろ…」
ワイバーンの体長は、グリさんの約3倍くらい。
ただし、まだこの距離でも鑑定の効果範囲には届かない。なので俺はグリさんに指示し、ワイバーンの進行方向へと先回りさせる。
そして適当な木陰に隠れ、ワイバーンが通り過ぎるのを待った。
ジッと待つこと数分、少しズレたものの、俺たちのほぼ上空をワイバーンが腹を見せて通過する。
―よーし、それじゃあ鑑定!。
で、鑑定結果がこれだ。(※一番強い個体を抽出)
エギンガムワイバーン、32才
クラス、ハンター
レベル94
HP1159
MP39
スキル、空中浮遊 ブレス
補足、現在獲物を物色中。
おおっ、惜しい!。あともう少しでレベル100越え。でもHPは1000越えてるぜ!。
レベル的には、俺の隣で震えるグリさんの2倍弱か。
まあでも、こんな「レベル」なんてモノはあまりアテにはならないだろう。何しろただでさえうさん臭い奴が作った上に、リアルな対象を実際に数値化するなんて、現実的にはちょっとあり得ないからだ。
ま、あくまでも一つの指標として参考程度で見ておこう。
ゲームならいざ知らず、現実的には相性なんてその時々の体調や環境で簡単にひっくり返ってもおかしくはない。
しかも一撃必殺の攻撃手段なんかがあれば、ステータス差などもはや関係ない。だってゲームみたいに真正面から交互に攻撃を与え合うとか、リアルな戦闘でそんな事はほぼ起きないからだ。
それよりリアルではむしろ一方的な奇襲で始まる方が多いし、奇策やラッキーパンチで決着する事も少なくないと思う。
要するにどんな強者であっても気を抜くとあっさり死ぬ、それがリアルバトルと言う奴なのだ!。(※もちろん知ったかですが何か?)
なので、たとえレベル1の俺でも、グリさんと力を合わせればあのワイバーンを倒す事も不可能では無いと思うのだ!!!。(※完全に暴走気味ですが何か?)
「よしっ。つー訳でグリさん、俺たち二人であのワイバーンをぶっ殺そうぜ?!」
(エッ………!)グリ
地道に経験値上げて行くのも嫌いじゃないが、あえていきなり強敵を撃破して経験値大量ゲットもまたロマン!。
『こいつゲームと勘違いしとるな。そもそも経験値積んでレベル上げとか、そんなシステムこの世界にないぞ…』神
―くっくっく、滾るぜ!。(←話を聞けよ)
「って、ところでグリさん…。
とっくにワイバーンは何処か行っちゃったよ。もうプルプルとかいいからさ、早く街に帰って飯食おうぜ!?」
ここでふと、俺が現実に帰ってグリさんを振り向くと、まぁだグリさんはビビって震えてやがったのだった。
―まったく、これだから野生動物って奴は…。実力差に敏感なのも考えものだな。
だいたい何をプルプルと可愛い子ぶってんだろコイツ?。ちょっぴりモフモフだからってそんなキャラじゃなかっただろオメエわよ…。
ビビってなかなか動こうとしないグリさんを無理やり動かし、どうにか俺たちは街に帰ったのだった。
そしてやっと街に到着したのだが、なんか嫌な予感がしたのでちゃんと釘を刺しておく事にした。
「グリさん明日もちゃんと来いよ!、ここで集合な?」
グリ助の奴、なんかイヤそーな顔してたw。