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双角の魔王  作者: 幌雨
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0. そして、千年後

*0. そして、千年後


 アイビーは静寂なホールの中をヒールを鳴らしながらゆっくりと進む。

 壇上に上がり振り返ると、老若男女さまざまな人々が自分を見ている。

 一礼に合わせて、静寂だったホールいっぱいに拍手が満ちる。


 拍手が落ち着くのを待ってから、彼女は静かな声で語り始めた。





 ご存じのとおり、我々人類には、以前、角がありました。


 今では触らなければわからないほどに退化して小さくなってしまいましたが、いまでもわずかに角の痕跡は残っています。


 その中に、まれに二本の角の痕跡を持って生まれてくる人がいます。

 そう、ご存じの、そして私が専門とする、双角病です。


 双角病は、もっとも古いものでは約千年前の文献にその存在が示されています。

 遺伝性の病気で、親族に双角病の人がいる家庭ではおよそ五パーセントの確率で発症することが判っています。


 この二本の角も現代ではほとんど退化しており、問題になることはありません。

 確かに双角病患者はそうでないものに比べて体が小さくなりがちですが、この病気との関連性はよくわかっていません。


 ではなぜ、私がこの病気を研究していると思いますか?


 それは、双角病の治療のためではありません。

 この病気が、どこから来たのか、ということを知るためです。

 なぜなら、私も双角病だからです。


 つまり、双角病を知ることは、私のルーツを知ることなのです。



 近年の遺伝子学の発達で、様々なことが判ってきました。


 かつてこの世界には、私たちの直系の祖先のほかに、もうひとつの人類が生活していました。


 彼らは、その額に二つの角を持っていたそうです。


 おとぎ話だと思われていたもうひとつの人類、双角の民ですが、七十年前に発掘された遺跡から彼らの骨が出土しました。


 それにより、我々は様々な知識を得ることができました。

 私にとって何よりも重要なのは、双角病の患者に特異な遺伝子のパターンが、双角の民の遺伝子のパターンとよく似ていることです。

 つまり、私たち双角病患者は、現生人類の祖先と、彼ら双角の民の子孫である、と考えることができます。

 隔世的な遺伝によって、彼らの二本の角の遺伝子が発現するとき、この病となって表れるのです。



 しかし、この説には大きな疑問が残っていました。遺跡から出土する人類の骨などを分析すると、千年より昔はこの遺伝子をもつ人間がいなかったこともわかってきたのです。

 これは、千年前には、とうに双角の民は絶滅していたことを表しています。



 この病気は、いつから存在したのでしょう?

 初めに言った通り、この病気の最初の記録はおおよそ千年前のものです。遺伝子学の観点からも、それはある程度確かだと考えられています。


 千年より前にその病がなかったとしたら、いったい千年前に何が起こったのか?単なる偶然の、遺伝子の突然変異?



 二千年前の文献をひも解いてみましょう。


 おとぎ話につきものの、魔術や魔法といったものが当たり前に出てくる時代です。


 その時代、出会った二つの人類は、互いにいさかいを起こし、戦いに発展した、とあります。

 そして、現生人類の祖先たる一角の人類によって、双角の人類は駆逐されました。


 その文献にはこんな記述がありました。

 一角人類の戦士は、双角の王を石に変えて千年の眠りにつかせた、と。


 ならば、千年の眠りから覚めた王を待ち構えていた運命は?


 今日私がお話しするのは、小難しい学術的な話ではなくて、もっとロマンティックな仮説です。



 さぁ、歴史の旅を始めましょう――







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