7. 魔王の誓い
*7. 魔王の誓い
王は石像が元の位置に安置されるのを確認すると、近衛兵たちを引き連れて自室へと戻っていった。
一人、石化の魔法を完成させるためにサンディを地下室に残して。より正確には、魔法が暴走すると大変だから気が散らないように帰れ、とサンディが追い出したのだが。
「ふー、やっと行ったか」
石像の真似をしてずっと同じ体勢でいたせいですっかり固まってしまった体をほぐしながら、デュオが言った。
「これからどうするの?」
「どう、っていわれてもな。向こう千年安心宣言しちゃったんだから、このままあの部屋に通うのは無理、そういう話だったじゃないか」
「そんなことはわかってる。そうじゃなくて、あなたはどうするつもりなのか、ってこと」
さっきから、サンディが目を合わせてくれない。
「淋しいか、やっぱり」
「っそんなわけ、あるわよ!ええ、そうよ淋しいわよ!!悪い!?」
久々に正面から覗き込んだサンディの瞳には涙が浮かんでいる。
「いや、悪くないよ、もちろん。俺も同じだし」
そう言ってはみたものの。
「…会いにくるのは、無理よね」
「そうだな、俺は身元不明の不審者なわけだし?」
わざとふざけてみたりしても。
「茶化さないの」
あまり意味は無かった。
デュオは、ずっと考えていたことを伝えることにした。
「戻ってくる。何年かかっても、きっとお前のもとに戻ってくるさ。俺には、お前しか居ないんだからな」
「どうだか」
何がお気に召さなかったのか、ぷいっ、とサンディがそっぽを向いた。
「むむむ、疑うのか?ならば誓いを立てよう。われらが部族に伝わる、由緒正しい誓いだ」
そう言って、腰のナイフを取り出した。そのナイフを、ゆっくりと自分の角に押し当てる。
「ちょ、ちょっと、何する気よ!!」
サンディが止める間もなく、あらかじめサンディが作戦のためにかけておいた切断の魔法の効果もあって、デュオの片方の角がカラン、と石の床に落ちる。
その角を拾い上げて、サンディに握らせた。
「お互いの角を切り取って、互いに持ち合うんだ。それが、永遠の誓いになる。でも、お前の角は一本しかないから、俺の角だけ持っててくれればいい」
サンディは無意識に手が血の気を失って白くなるほど、託された角を握りしめていた。
「…絶対よ。約束だからね。絶対、戻ってこないと、呪い殺すからね!」
「約束する。お前のほうこそ、その角無くすなよ!街を三回滅ぼすぐらいの俺の怨念が篭ってるんだからな!」
「はいはい。わかってるわよ」
こうして、二人は別れた。
サンディは二度と地下室に踏み入ることは無かったし、城を出た魔王の足取りを知る者はいない。
魔王との別れから三年後、成人したサンディは父王のあとを継ぎ王位を継承した。




