エフゼロ-レストゼロワン
初めてこういう世界観のものを出す気がしますが、実は俺の脳内の八割はこういう物語なんです。
俺の脳内へ、いらっしゃい。
「おいこら起きろ木偶の坊独活の大木」
「歴史上の偉人っぽい名前で呼ばないでくんない!?」
「木偶の坊独活の大木なんつー名前の偉人は居ない」
「知ってるよ馬鹿!日本海溝に沈めるぞ!」
「できるもんならやってみろ逆にお前を沈める」
「クッソ本当にうるさいな!」
「昼寝してるお前が悪いんだ私に非はない」
「あぁはいはい仕事中に寝た俺が悪いですよ!普通に起きろだけでもいいじゃねぇか」
「私は仕事仲間を甘やかさない主義でな」
「起こすだけでも甘やかさない感じにはなるからそれでもいいんだよ!」
「起きるだけと起きて更に木偶の坊独活の大木と名づけられるの、どちらが嫌か?」
「もちろん後者だ」
「私は仕事仲間を甘やかさない主義。つまりはそういうことだ」
「てめぇの価値観はネジが飛んでやがる」
「弁償を要求する」
「何にだ!?何のだ!?ネジのか!?」
「つまりそういうことだ」
「つまりの使い方が雑なんだよ!てかてめぇのネジ弁償するくらいなら寝てた時間分弁償するわ!」
「一時間半だな」
「は?」
「一時間半。今回の仕事に換算すると・・・六千円」
「・・・いやあのさ。マジでそういうのやめてくんない?」
「そういうのってなんだ」
「金が絡むとマジになるのだよ!何でそういう計算だけ速いの!?」
「そういう育ちなんだ」
「どこのお坊ちゃんもそういう計算が速くなる勉強はしてねぇだろ」
「まぁ私は特殊なんでな」
「単純に現実離れしてるだけだろ。お前の雰囲気が」
「私の雰囲気は関係ないだろ」
「いいや関係あるね。ていうかお前は雰囲気だけじゃなくなんか色々おかしいもん」
「どこがだ」
「例えば脳内回路」
「どこも故障してないだろうが」
「そもそも作られる時点でなんかもう色々違うんだよお前は!」
「私の発育環境まで馬鹿にするか」
「いや馬鹿にはしてないけど、結果的にはお前が普通じゃないってことをな」
「理解はしているが認めているかといわれればそれはノーだ!」
「ほんっとうに面倒クセェなお前!!なんでこんな奴とコンビなの俺!?」
今あなたがこの文書を読んでいるという事は、きっと成功したのだろう。
どうせあなたも自覚しているはずだ。自分が男か女であるか、自分が人か獣であるか・・・それぐらい単純なことだ。
あなたには知っておいてほしい。あなたがこれからどのように生きればいいのか。その対処法がここには記されている。
あなたが今どこに居るのかはわからないが、"いつ"かはわかる。
あなたが生まれる五年前。世界が救われる三年前。
決して世界を救うために過去に飛ばされたわけではない。あいつは言っていた。ただ単純に、現在と言う時の流れからあなたを逃がしたいんだ、と。
あなたが今まで通り過ごせば、三年後、世界は救われるだろう。
そこで、しっかりと覚えるんだ。二人の英雄の名前を。
飛田錐雄と、その相棒、フォレストの名前を。
「・・・一つも店がない」
「どうしてくれるんだ錐雄」
「いや俺に聞かれても知るわけねぇだろ」
「その絞った後の雑巾の水分量ほどの脳みそでよく考えろ」
「それちょっと湿ってるぐらいでほぼ水分じゃねぇじゃねぇか!・・・"居る"のか?」
「ああ。数体の気配を感じる。どうやら歓迎はされていないな」
「ただ、敵かどうかはわからない」
「そういうことだ。錐雄、とりあえず変異武神だ」
「・・・物騒な世の中になったよな。変異武神・・・眼銃」
カサッ
「ごめんな!大仰な武器で驚かせたかもしれない!俺らはきっと仲間だ!トーキョーからの遠征だ!あんたらを救いに来た!」
「トーキョー!」
「よかった!敵じゃなかった!」
「シッ!まだ出ちゃだめ!」
「・・・あぁ、いい判断だ。まだトーキョーの証拠を出してないもんな。昔だったらフォレスト自身が証明になったものを・・・ほれ」
「トーキョー通行証・・・」
「ほ、本物だ!俺らは救われるぞ!」
「よし、町民は全員で何人だ?とりあえず出てきてくれないと」
ガサッ・・・
「おぉ結構居るな。気配消すの上手いな。今まで数度襲われたか?」
「はい・・・三度、襲われました」
「三度でこれだけ生きてるとは・・・中々だ」
「こ、この町は!そもそもここら辺じゃ一番の人口を誇っていました!こんなことになる前は、ここの二十倍は」
ドガン
「あっ・・・たっ・・・」
「・・・きゃぁぁぁあああああ!!!!!!!!!」
「あんた、何を!」
「俺はただ、機械喰を撃っただけだ」
「な、どうして!」
「ごめんな。あの青年はもうこっちで保護してんだ」
「・・・!?」
(おい)
「わかってる・・・あの青年は数日前にトーキョーへ来て救護依頼を出した。だから俺らが居るんだけどよ。ほら、同じ顔の人間って世界に三人しか居ないじゃん?そんなのが同じ町にいるはず・・・ねぇ?」
「こいつは双子じゃ!!」
「町長っぽい人よぉ。俺らがただ青年から依頼を受けただけだと思うなよ?情報ぐらい集めてんだよ」
「はっ・・・はぁ・・・」
「あんた」
「はっ・・・!?お、俺は機械喰じゃない!」
「わーってる。あんただけだよ。この町で機械喰じゃないの」
「え・・・?」
ギギ・・・ギ、ギギッ・・・
「え、ま・・・待って・・・皆・・・!?」
「あんた以外は、もう喰われてる」
ズガガガガガガガガガガガガガガッッッ
ッカラン・・・カランカランカラン・・・
「よし、一掃!」
「は・・・っはぁ・・・はぁ・・・!」
「じゃ、行くぞ。トーキョーに」
「う、うぁぁぁぁぁぁああああッッ!!!」
「いや俺を怖がる前に機械喰だろ・・・フォレスト!変異武神!捕獲銃!」
パヒュンッ
「ガッ!!」
「ごめん、手荒な真似したけど、俺らはあんたを助けに来たんだ。君の友人の依頼で」
「あ・・・あいつ、が・・・」
「そう、恐らくは君の言うあいつだ。じゃ、行くぞ。変異武神、退解」
「町民は何人ぐらいだった?」
「ざっと三十人かな」
「てことは二万は下らないな」
「計算速いな!?いや、今回は容赦してやれよ。持ち物全部捨てて友人一人のためにトーキョーまで来たんだぞ。メロスかよって話だ」
「たしかにメロスは金を持ってないな」
「失礼だけどなそれ。まぁメロスもお前も政治がわからんって感じだから一緒だな」
「馬鹿にするな。これでも一般的な人間よりは知能は高い」
「虎穴にいらずんば虎子を得ず」
「外国語には対応していなくてな」
「もういい、喋るな・・・大丈夫か?」
「は、はい・・・さっきはすみませんでした」
「俺のほうこそ手荒な真似してすまなかった!疲れたら乗っていいからな!フォレストに!」
「私は一切許してないぞ」
「五千円」
「いつでも来い」
「俺のポケットマネーだ。疲れたらいつでも乗れよ」
「は、はぁ・・・」
「ところで五千円と言うのは一回五千円か?それとも一分五千円か?」
「合計五千円だ」
「何度担ぎなおしても値段は上がらないだと?詐欺師かお前」
「うるせぇ金にうるさいロボ拾った俺のほうが詐欺されてるみたいなもんなんだ文句言うんじゃねぇ」
飛田錐雄は非常に優れた武神技師であった。
昔から数十体もの武神を作り上げ、それは非常に丈夫で従順であった。
しかしそれは、錐雄の思うようには使われない。人間の悲しい性か、国はそれを争いに使い始めた。
なにも武神技師は錐雄だけではなかった。しかし、錐雄に及ぶ技師が一人もいなかったことが、唯一の不運。
彼の武神は他国へ流出し、数々の戦争を招いた。
それは日本列島本島を全て巻き込むほどの大戦争であったそうだ。
その戦火を生き抜いたのが、その時代で言う王都、トーキョーだ。
あなたは見慣れないかもしれないな。邪都、刀鏡で育ったのだから。
錐雄の相棒フォレストは、捨てられた武神、野良武神だった。
性能としては低く、使い物にならないとされ、国そのものに捨てられてしまった。
エネルギーもなくなり、存命あと僅か、というところで、錐雄に発見されたのが救いだった。
錐雄は驚くほどの手際でフォレストに応急処置を施した。
それからフォレストの故障部分を直し、更にはカスタマイズし、本人が作ったかのような精度まで出来上がった。
それからと言うもの、フォレストは錐雄の相棒として、活動を始めた。
その時、すでに日本の安全地帯はトーキョーだけ。
戦争が終わり、日本全国の人間を救うハンターが生まれ始めていた。
人間を脅かすのは、機械を喰らい、人を喰らう機械喰という変異動物たち。
これらは意志を持たず人に化ける。化けることで人間の思考を借りて意志の疎通を図る事ができる。
そうやって機械喰は、人を騙り人を喰ってきた。
機械喰に勝てるのは武神のみ。
ハンターの存在は次第に重宝されていった。
「これ、謝礼です」
「三万円・・・一万円の得だな」
「いらねぇのに」
「いえ、お礼させてください。こいつが助かっただけでも、俺は生きる気力になります」
「あぁ、そう!じゃ、ありがたくいただくぜ!じゃあな!機械喰に喰われて死ぬなよ!」
「じょ、冗談に聞こえないですよ!ありがとうございました!」
・・・
・・・
・・・
「さて、次はどこに行こうか」
「サガなんかどうだ」
「サガか・・・あれ、飛行艙はもう使えるんだっけか?」
「あぁ、三時間ぐらいなら普通に大丈夫だ」
「三時間か・・・あのさ、ここどこだと思う?」
「トーキョーだな」
「サガどこだっけ?」
「キューシューだな」
「よし、お前のその要らん雑学だけは混入してないデータベースをよぉぉぉく探せ。サガまで三時間でいけると思うか?」
「・・・なるほど」
「わかったろ?俺らが普通に活動できるのは本島だけだ。ホッカイドーやシコク、キューシューに行くにはそもそも陸続きじゃないときつい。そもそもあの離島があの大戦争に巻き込まれたのかも謎だ。もしかしたら昔みたいにまだ車とか走ってる可能性だってある」
「じゃあ、チバなんてどうだ」
「チバ、ねぇ・・・」
錐雄がハンターになって数ヶ月、もともと武神の扱いには慣れていたせいか、普通のハンターよりよっぽど頼られていた。
三年後世界を護る者にしてはいささか武具が足りないが、それでも成長したんだ。
先ほど書いたな。
これからどのように生きればいいのか。その対処法がここには記されている。と。
それはもうすぐ出会うだろう二人・・・いや、一人と一体に聞けばわかる。
きっと今頃、チバへ行く依頼を探しに君の隣ぐらいまで――――
――――ドンッ
「でっ・・・あ、大丈夫か!?」
「ん、大丈夫か」
「あぁ、いえ・・・ご心配なさらず・・・」
「ほれ、手」
「あ、ありがとうございます・・・あなた達は」
「俺はハンター兼武神技師の飛田錐雄、で、こいつが俺の相棒の守銭奴」
「フォレストだ。よろしくな」
「なんだよ間違ってねぇだろ」
「初対面なのに変なこと言うな馬鹿が」
「馬鹿って言うのは知識が一方向に偏ってる人のことを言うんだよ!お前だフォレスト!」
「私は人じゃない」
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あのっ」
「ん、なんだ」
「これ・・・見覚え、ありませんか?」
「ん?どれどれ、何かのマーク・・・・・・!?!?」
「おいお前、そのマークどこで知った」
「あんた、ただ者じゃねぇな・・・?」
・・・
・・・
・・・
「未来からきた?」
「はい。正確には五年後」
「五年後・・・誰によってだ?」
「・・・父親の武神です」
「ちょっと待った。五年後、そう言ったな?」
「はい」
「フォレスト」
「なんだ」
「前、グンマに行った時、百発百中の占い師居たよな?」
「あぁ。だが今日のことはなにも」
「違う。今日のことじゃない。三年後のことだ」
「三年後・・・世界滅亡か?」
「そう。あの占い師、今までも日本だけじゃなく行った場所全てで予言を的中させてる」
「世界滅亡も当たるってことか?」
「あぁ。恐らくな。俺はそれを防ぐって目標もあって旅してる」
「初耳だぞ」
「今初めて口にした」
「ならしょうがない。それで?」
「この子は五年後から来たって言ってる。つまりだ、彼女に聞けば世界滅亡が本当か、そして誰がそれを救ったかがわかる」
「なるほど。聞いてみるしかないな」
「いや待て。その前に、だ。五年後、よくわかった。じゃあ次、このマークだ」
「私をここに送った武神が言っていたんです。彼にこれを見せれば話ができる、と」
「なるほど・・・君の父親は俺の、もしくはフォレストに関係している人間か・・・」
「・・・」
「とりあえず、信じる。俺らになんの用だ?」
「この世界で、生き抜く術を教えてください」
「生き抜く術?」
「はい。五年後、世界滅亡の危機から二年後、日本は最悪の状態です」
「・・・!!世界滅亡が、起こったのか・・・」
「最悪の状態とは?」
「はい、今の王都トーキョーは、邪都刀鏡を名乗り、武神を一斉操作する変異武神操王を作り出しました」
「操王・・・!!」
「私はそれによる世界制圧を危惧した武神によって過去へ送られたんです」
「なる、ほ・・・ど」
「私はハンターではありません。そもそも私の時代にはハンターという存在自体がなくなりつつあります」
「まぁいいことだな」
「ですが、邪都刀鏡が動き出した今、ハンターという存在は必要です」
「・・・」
「ですから、これはあくまで推測ですが、過去のハンターに術を習い、五年後まで生き延びてハンターと言う存在を存命させるために私は過去へ送られてきたんじゃないかと思うんです」
「だとしたら、父親が自分で行けばいい。娘に行かせるなんて無責任にも程がある」
「無理なんです」
「・・・どういうこと?」
「父親は、邪都へ連れ去られました。武神技師の腕を買われて」
「・・・」
「父親の武神は他のアーマードとは違い、ハンターなしで変異武神することが可能な特殊な武神でした。だから、父親が居ない状態でなんとか過去へこれたのです」
「錐雄。一つ思ったんだが」
「俺じゃない。この子の親は俺じゃないよ。だってフォレストは自分だけで変異武神することはできないし、時間跳躍の武具なんて持ってない。一瞬俺も疑ったけど、違う」
「・・・」
「君、名前は?」
「槌、です」
「オーケー槌。あんたの依頼承った」
「え?」
「この時代の生き抜き方を教えてやる。そして、あんたの元の時代、綺麗な状態にして返してやる。未来の尻拭いだ」
もうきっとこの文書はどこかに放り出されているね。
だからここであえて言おう。
世界滅亡の危機を救うのも、私に自律式変異武神を組み込んだのも、全部若き日の錐雄によって育てられた君なんだ。
君は思うだろう。まだ成人していない父親と旅をするのは複雑だと。
でもきっとすぐにわかる。君の父親がどれだけ純粋に武神を愛しているかを。
そして将来、私の相棒は邪都へ連れ去られる。
もうこの未来は捨てていい。父と子、二人が幸せならば、武神たる私は、壊れ果ててもいい。
私の名前をずっと伏せていたね。君は私のマークを見て、『ヨツバ』と呼んでくれた。その名前も嬉しいかもしれない。
私の名前は、F0-rest01・・・通称、「フォレスト」
カランコロンカラン...
あぁ、読み終わりましたか。
ここは出口です。俺の脳内の道のね。
でも、まだまだ道はある。あなたは俺の脳内の内の一本の道を歩かされたに過ぎないんです。
もっと道を提供したい。だから俺は、言葉を吐き出し続けるんです。
後精読ありがとうございました。三年後、世界が滅亡しませんように。