幕間 ~夢がたり~
「ユカ愛している。私の妃となってくれないか?」
それは、待ち望んだ言葉。初めて愛した人に思いが通じて両想いとなった瞬間。
「私も愛しているわ。ジョアニー王子、あなたのために、日本も家族も友人も捨てるわ。」
私は初めての恋が成就したことに浮かれていた。
しばらくは幸せだった。世界の危機を救った勇者が、国の世継ぎの王子と結婚する。世界中の人達から祝福された花嫁の私はその時一番輝いていたと思う。そして物語はハッピーエンドで終わるはずであった。
どこから狂って行ったのか…私は途中で変わってしまったとばかり思っていた。でも最初からだったんだね。
それを問いただせば、
「王妃にとは言ってはいない。そなたの名声と人気と魔力の高い血が欲しかっただけだ。」
と由緒正しい血筋の公爵家令嬢を正妃に迎えた王子が言った。
そうして初めての恋に裏切られた私は、壊れそうな、ほとんど壊れてた心を抱えた中で男の子を産み落とした。
そしてそれを助けてくれたのはトイドール様だった。
目が覚める。あたりはまだ暗い。
「この夢、かなり久しぶりに見たな。」
ひとりごちる。日本に戻ってからはかなり頻繁に見ていたけど…そのうち見なくなった。
もう何百年も前のこど。召喚されるのは時系列がバラバラだったから、もうあの王子は居ない。その後の召喚でも会うことはなかった。あの国は滅びてないからユカの子孫はいるかもね。ついつい口元に苦笑いが浮かぶ。
今だったら、子供を連れて戻ってたけど、あの頃の私には育てるなんて無理だった。だからトイドール様は私だけを日本に戻した。
あの子のことは気になってるけど…。