第10話
「知らない天井だぁ」
お約束を呟いてみた。
ほんとに知らない天井だけどね。たぶん気絶した私は神殿の私の部屋か医務室みたいなところに運ばれたんだと思う。
何故、自分の部屋がわからないかというと、まだ案内されてなかったから。
神殿入りしてすぐに挨拶にきたからね。
「目が覚めた?気分は悪くない?」
優しそうな女の人の声。
40代くらいの茶色の髪で瞳も焦げ茶色の女の人が部屋へ入ってきた。
「大丈夫です。もう平気です」
にっこり笑顔で答える。
「かわい~。なんてかわいいの」
語尾にハートマークが沢山つきそうだ。
頭をナデナデされる。どう反応すればいいのかな?
「あの~。お姉さんは誰ですか?」
「まぁ、なんてイイコ」
わかります。私の今の年齢なら、あなたはじゅうぶん「おばさんは誰ですか?」で可笑しくないんだけど、元老女だから気持ちはよくわかるよ。
嬉しそうだね。
「可愛いしイイコだし…素晴らしい。ゴホン。私は見習い巫女の教育担当のアコヤ=エメリッヒです。巫女としての指導は神官長様がなさりますが、その他の行儀作法などの指導や同性としての相談役もしています。あなたは5歳だけれど、年齢より大人びているから、わかるかしら?」
そうだよね。これから年頃になっていくのにここは周りが男性ばかりだからね。
わかったとばかりに頷く。
「初めてのことで、倒れるくらいすごく緊張してたのね。」
そういうことになってるのか。そうだよね。まさか5歳児にキスして気絶させました。とか言えるわけないしね。神官長様犯罪者になっちゃうしね。
そういうことにしてたほうがいいよね。
でもトリドート様には釘をしっかり刺さなきゃ。誰かに見られたら、犯罪者だよ。でも神様だしね。人間の倫理観って当てはまるのかな?
それといつまで神官長するのかな?神様ってヒマなの?