第8話
「こんな所でなにしてるんですか?」
神殿入りして、これから指導者兼上司となる神官長に挨拶に来ていた。
神官長は史上最年少で神官長となった人でこちらの神殿に赴任してきたばかりだそうで、「若くてイケメン」だそうだ。
先輩巫女達が恨めしそうな顔で教えてくれた。どうでもいいけどね。
神官長の部屋へとノックをする。すると側仕えの若い神官さんがドアを開けてくれた。
「失礼します。今度見習い巫女として入りました。ステラ=エスペランサと言います。よろしくお願いします。」
神官長様は窓の方を見ていたため、こちらには背を向けていたが、私の挨拶に背を向けたまま、神官さんにお茶を淹れてくるように行った。
神官さんが出て行くと、ゆっくりとこちらを振り向いた。
で、冒頭のセリフが私の口から出てくるのだ。
「こんな所でなにしてるんですか?…トリドート様」
そう。トリドート様なのだ。髪と瞳の色は変わってるし、神気も完璧に隠されているけど、ただ者じゃないオーラがバシバシ溢れてます。大神官様あたりにはバレバレだと思います。
私の言葉にイタズラが成功した子供もみたいな表情をして
「よくわかったな。ユカ…いやステラ。さすが我と対の女神殿である。いや愛の力であるかな?」
「何を言ってるんですか?それより質問に答えてください。なんでいるんですか?」
「そなたに会いたかったからに決まっているだろう。ここで我が巫女見習いではなく女神として教育しようと思ってだな。けっしてステラが可愛いから変な虫が付かないように、婚約者として牽制しようとしてではない」
相変わらず心の声が口から出てますが…。で、いつ私はあなた様の婚約者になったのでしょうか?
「婚約者? だれが?」
「我が(我の対の)女神として転生してほしいとプロポーズした時、了承したではないか?」
その言葉を聞き、思わず、
「その()内のセリフは聞いてなーい。」
大声を出してしまった。