火の鳥覚醒編4
くそ、俺は弱い。
もしも俺がちゃんと魔法を使えたら、あのときに俺も追撃が出来ていたはずだ。そのときに勝負は決まっていたはずなんだ。
それなのに俺のせいで。
くそ、俺に魔法が。力があれば涼も委員長も傷つく事はなかったのに。
何で俺はこんなに非力なんだよ!
俺は自分に力がないのを恨んだ。
もう少し力が強ければ俺はあのおっさんに勝てただろうに。
俺はここ死ぬんだな。
そう、覚悟を決めた時だった。
何か暖かいものを感じた。その正体はすぐに分かった。
俺の目の前に大きな炎を纏った鳥がいるのだ。
俺はこの鳥について知っている。
伝説の火の鳥、フエニックス。
死んでも灰の中から蘇る不死の鳥。何でそんなのがここにいるんだ。
「我が宿主よ、あなたは今まで私の声を聞くとが出来ませんでした。しかし、今は違います。今あなたは毒サソリに体を貫かれて生と死の狭間にいます。だから、生と死を超越した私の声がようやく聞けるようになったのです」
何だかよく分からないけど、ようは俺が死にかかっているから目の前のフエニックスと話ができているみたいだな。
「それでフエニックス様が何の御用なんですか?俺は見ての通り死にそうなんですけど」
「えぇ、分かっています。だから、今汝に問います。あなたは力を手にいれたら何に使いますか?」
俺は唐突なフエニックスの質問に戸惑いながらも思った事を答えた。
「何かのために………………………、何かを守るために使います」
「まぁ、合格ですかね。よろしい。あなたなら私の力を正しい使い方をしてくれそうですね。私の力をあなたに使えるようにしましょう。さぁ、私の名を呼ぶのです。あなたはすでに分かっているでしょう。私の名を」
フエニックスがそう言うと自然と俺の頭のなかには1つの単語が頭をよぎった。もしかして、これがフエニックスの名前なのか!
「さぁ、俺に力を貸してくれ。ホムラ」
倒れている俺の上に大きな炎を纏ったホムラが飛んでいた。そして、俺に向かって炎の塊のようなものを吹いてきたのだ。
俺の体を炎が包み込んでいた。
暖かくて、あらゆるものを浄化するような綺麗な炎だった。
俺の傷はどんどんふさがっていき、体の中に回っていた毒も浄化されていた。
「ホムラ。委員長と涼も頼む。」
ホムラは俺の命令通りに委員長と涼の傷と毒も癒してくれたのだ。
「バカな!!ありえない!!フエニックスだと、その神獣を宿しているのはアイツだけのはすだ!何故貴様が!!」
おっさんの問いにホムラはどこか寂しそうな声で言った。
「初代の主は私を何かを破壊することにだけ使った。他にも宿主となった人間達も何かを破壊することを考えていた。だから、私は初代の後は宿主には力を与えなかった。しかし、この男は違った。純粋に何かを守る事を考えていた。だから、力を貸すのです。人間の本性は死に際によく分かりますからね!さぁ、終わらせましょう。この不毛な戦いを!」
そう言うとホムラは敵のサソリとおっさんを焼き付くした。
おっさんもサソリもフエニックスの前では歯が立たないようだ。
いや、そう言うのはちょっと違うかな。おっさんとサソリを浄化していると言った方が正確な表現かな。
おっさんとサソリを幸せそうな顔をしながら倒れたのだった。
おっさんの名前はカーリー・ダンプティー。
かなり有名な魔法使いだったらしい。
おっさんはそのあとに警察に捕まった。そして俺たちも事情聴取を受けた。
まぁ、そんなに時間はかからなかった。フエニックスの浄化の力で心まで浄化されたのかおっさんはやり直したいと言っていた。
今度はちゃんとした場で危機感を持つように促すつもりだと言っていた。頑張ってほしい。
「主、早く起きてください!」
寮の自分の部屋で休日を有意義に過ごすために朝まで寝ようと思っていた俺はある人に叩き起こされたのだ。
それは小さな鳩のような大きさのホムラだ。
「我が主!そろそろ怪我も直ったのですから今からは毎朝特訓をしてもらいますよ。何せあなたには私の力を使いこなせるようになってもらわないといけませんからね!」
フムラは元気に笑って嘴で器用にジャージを持ってきた。
「さぁ、主。今からランニングです!そうですね。最初は40キロから始めますか!」
「死んでしまうわ!!」
「死にませんよ!フエニックスですから!」
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