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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第四章:二学年一学期・新たなる出会い
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第九十八話:山と海と修学旅行Ⅲ(二日目、夏期球技大会・後半戦ーー午後)


 昼休みが終われば、午後からの試合である。


「よし、調子が戻ってきたぁっ!」


 午前中の感傷的になっていたのが嘘だったかのように、普段通りの調子が戻ってきたらしい。


「ちょっ……だからって、速球サーブするんじゃないわよ!」


 そんな私たちのクラスの対戦相手は和花(のどか)たちのクラスなのだが、私の放ったサーブに和花が叫び、噛みついてきている。


「でもさ、和花相手に手加減しても、意味ないでしょ?」

「馬鹿っ! それは異能同士の場合であって、スポーツ関係はあんたの方に()があるでしょうが!」


 分かっててやるんじゃない! と叫ぶ和花に、彼女のクラスメイトたちは苦笑いしている。

 三人ぐらい顔に見覚えがあることから、去年同じクラスだった子たちだろう。


「桜庭さーん」

「私たちも居るから、手加減してー」

「分かったー」

「扱いの違い!」


 元クラスメイトたちの要望に応えれば、和花はそう叫びつつもボールを拾う。


「にゃろう……。午前中のままだったら、やりやすかったのに……誰だ。あいつを復活させたのは!」


 明確には言えないが、多分、復活のきっかけになったのは御剣先輩です。

 ただ、その先輩が今頃くしゃみしていたら笑えるけど。


「ま、誰でも何でも良いじゃん」

「桜庭さん!」


 仁科さんから来たボールを、私自身に経由させて、前衛に居た面々に回す。


「よし、入った!」


 これで一点差だ。

 これでも、最初は四点差もあって、それが意外だと思ったのかは分からないけど、和花サイドが何とも言えない表情をしていた。

 私、落ち込んでいても平常通り並みの実力が出せる程、感情のコントロールが完璧でなければ、そんな化物でもないんだけど。


「和花ぁ」

「……何」

「ボール、あげる」


 しかめっ面の和花に、私にパスされたボールをアタックで放つーー


「ちょぉおっ!?」


 ーーのだが、焦ったような声を出しながらも、レシーブで上に上げられた。


「……甘いわ、鍵奈(きいな)。今まで、あんたの無茶ぶりに、どれだけ付き合わされたと思ってるの?」


 にんまりとした笑みを浮かべ、そう言う和花に、どうやら私の中にある負けず嫌いへと火が付いたらしい。


「さあね。毎度が必死すぎて、すぐには思い出せないんだわ」

「ああ、そう」


 あ、負けず嫌いに付いた火が、即座に鎮火したらしい。

 和花さんのブリザード、怖い。


「ねぇ、鍵奈」

「何かな?」

「負けてね?」


 静かにーーそれはもう静かに、和花さんは穏やかそうな笑みを浮かべていました。

 何でこう、私の周りには朝日といい、和花といい、静かに怒り、ブリザードを放つ人が居るんだろうか。





 ーーで、どうなったのか。

 和花による割と本気のアタックを放たれ、我がクラスは負けましたよ。

 気付いたらボールはライン内の床を経由して壁付近にあり、見に来ていた人たちも、思わず黙り込むほどだった。

 つか、誰が取れるんだよ、あんなの。


「……」

「無理無理無理! 私でも無理だって!」


 すぐに行動できなかったのが、その証拠だというのに、何でみんな(見ていた人たち含む)揃って(こっち)を見てくるかなぁ。

 私とて、何でも出来るわけ無いのに。


「ご苦労様」


 壁際で休憩していれば、お久しぶりの幼馴染、朝日さんがいらっしゃいました。それも珍しいポニーテールという出で立ちで。


「んー。まあ、負けちゃったけどね」

「いやいや、最後のは誰だって無理だよ。異能を使えば、どうにか出来そうな気もしなくはないけど」


 「でも、次は和花ちゃんたちとかー」と朝日が伸びをしながら言う。

 そう、次は朝日たちのクラスと和花たちのクラスによる対戦。私たちが勝ってれば、朝日たちは私たちと対戦することになったんだろうけど、負けちゃったからねー。


「頑張れ」

「んー、まあ頑張るけどさ。あのボールが来ないことを祈るしかないよ」


 ただ、朝日相手だから、来なさそうとは言わない。確証無いし。


「……ごめんね。きーちゃん」


 朝日が呟くように、そう告げる。


「うん?」

(けい)くんたちの出場球技、隠す必要は無かったけど、ちょっと読みが甘かったかなって」

「どういうこと?」

「京くん経由で聞いたけど、御剣先輩と会ったとき、(うつ)ろな目してたんだって?」


 ……聞いているのは、こちらのはずなんだが。


「否定はしないけどさ。虚ろかどうかは……まあ、御剣先輩にそう見えたなら、そうなんじゃないの?」

「言うと思った。でね。京くんたちの対戦相手が御剣先輩たちのクラスだったみたいで、その時に聞いたみたい」

「あ、そういうことですか」

「で、私にまで話が伝わってきたってわけ。京くんは「桜庭がらしくないから、お前ら、少し様子見てこい」とも言われたみたいだけどねー」


 朝日は何が面白いのか、笑みを浮かべている。


「あと、京くんも風峰くんも、バスケだから」

「あ、そうなんだ」


 試合してるのを見掛けたから、知ってるんだけどね。


「一部の出場球技を教えなかったりしたのも、応援に来させず、休憩に回してもらおうかと思っただけで、他意は無いし」


 まあ、逆効果だったけどねー、と朝日は苦笑い。

 うん、でもね。


「……あーでも、駄目だなぁ。幼馴染なのに、予測できなかった」

「きーちゃん?」

「中学の時も似たような感じで、気を使われたっていうのにさぁ」


 何で忘れていたんだろうか。


「誰かを頼らないで、一人で何とかしようとするのは、きーちゃんの悪い癖だよ」

「本当……」


 悪い癖だ。


「修学旅行でも無理しちゃ駄目だよ? 今ぶっ倒れたら、困る人はたくさん居るんだから」

「そうだねぇ」


 夏休みが近いために、いろんなイベント事が入り込んでくる、このタイミングで倒れるわけにはいかない。


「でもその前に、朝日は和花たちと戦わないと」

「うん。その反応こそ、まさにきーちゃんだよね。それじゃあ、そろそろ言ってくるよ」


 そう言うと、朝日は立ち上がり、ポニーテールを揺らしながら、バレーボールラインへと向かっていく。


「頑張って、二人とも」


 私(たち)は負けてしまったが、どちらにも頑張ってほしいものだ。





 そんな準決勝第二試合である朝日たちと和花たちの試合は、和花たちの勝利となったが、決勝では負けたために準優勝(朝日たちも三位決定戦では負けたので四位)。男子勢も良いところまでは行ったらしく、珍しく悔しがっていた。

 さぁて、球技大会も終わったことだし、明日からは修学旅行である。

 何もないことを願うばかりだ。



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