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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第一章:一学年一学期・桜庭鍵奈とゆかいな仲間たち
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第八話:錠前時の姫君


今回は三人称




 桜庭鍵奈という少女は、少し油断しているとすぐに無茶をする。

 それが、どのような結果になろうとーー言われたことは、与えられた任務は完遂しようとする。

 少しでも親と姉が、親族が、友人が、仲間が関わるのなら、死の淵に立とうが何だろうが、完遂しようとする。


「はぁ、全く。あの子のすぐに無茶する癖、どうにかならないのかしら?」


 連絡を受けた自身の携帯を見て、女性は溜め息を吐く。


「それは無理だろ」


 側にいた青年は女性の言葉にそう返す。

 実はこの二人、主従関係なのだが、婚約者でもあるので、二人きりの時や他人の目が無いときは、今のように関係を無視した話し方をしている。


「あら、あっさりと否定してくれるのね」

「仕方ないだろ。あいつの無茶は二年前から(・・・・・)だ」


 それを聞き、女性は俯く。

 鍵奈が無茶をする原因がフラッシュバックするたびに、彼女は罪悪感と悲しみに(さいな)まれる。

 だがそれも、高校入学という出来事で一時的に薄れているようだが、時期が来れば、また思い出してしまうのだろう。


「それよりも、問題はこっちだ」


 青年により、一枚の紙が女性へ差し出される。

 差し出された(その)紙に書かれていたのは、鍵奈たち三人と彼女らの先輩である御剣織夜の四人が起こした騒動。


「少しばかり忙しくなるわね」

「ああ」


 紙に目を通せば、尚更そう思う。

 鍵奈にはああ言ったが、これでも広がらないようにするのは大変なのだ。


「あとは、彼の家にも連絡は入れておくべきよね」


 はぁ、と女性は溜め息を吐く。


「問題は山積みかぁ」


 ぐったりと椅子の背もたれに凭れ掛かる女性に、青年は微笑みながらいつの間に淹れたのか、コーヒーを女性に差し出す。


「まあ、頑張ってやってもいいんじゃないか?」


 幼馴染のために頑張った彼女のために。


 さて、宮森朝日は錠前時(じょうぜんじ)の姫候補であり、宮森の姫候補である。


 今では、絶大な権力を持つ錠前時家。

 どちらかといえば有名な方に入るこの一族は、芸能や政治など各ジャンルでそれぞれ活躍している。

 そんな彼らの中でも異彩を放つのは、『錠前時の姫』と呼ばれる女性の異能者たちである。

 『姫』の持つ異能はそれぞれ独特であり、錠前時の今後を左右することもあるのだが、そんな『姫』となる者たちの候補者が『姫候補』と呼ばれる者たちである。『姫候補』になるには指名されることが多いが、指名され、『姫候補』となった場合は名字+姫という肩書きが与えられ(朝日なら『宮森の姫』)、『姫』となれば錠前時+姫という肩書きが与えられる。

 『姫候補』は錠前時の今後を左右することもある『姫』となる者たちとは言ったが、自身の主を『姫』とするために、それぞれの部下や手下たちが知らないうちに暗躍することもある。

 特殊な異能を持つ者としては、鍵奈や朝日、京も例外ではないが、三人の場合は事情が事情な上に、関係も幼馴染以外では少し特殊な関係のため、朝日の『姫候補』というのも上記の説明とはやや異なってはいる。

 先程暗躍する者たちがいると言ったが、その筆頭と言えるのが、『姫』の護衛を担当する『鍵錠(きじょう)』と呼ばれるボディーガード(のようなもの)たちである。基本的に護衛対象である『姫』の側を離れることは無いのだが、もちろん中には特例も存在している。


 もう一度言おう。宮森朝日は錠前時の姫候補であり、宮森の姫候補である。


 そんな彼女を守った鍵奈と京が罰せられることは無いだろうが、無茶をしたことについては咎められるだろう。


「そういえば、あの計画は上手く行ってる?」

「ああ。まあ、元々持っていたからな。そんなに掛からないだろ」


 ふと思い出した女性に、責められそうだがな、と付け加えて返す青年。


「反省してくれたらありがたいんだけど、貴方まで一緒に無茶しようとしないでよ?」


 念のため、青年に釘を刺す女性。

 彼にまで一緒に行動されては、何のために与えた任務か分からない。


「まあどうせ、行くのは俺だけじゃないんだし、本来の役目はあちらさんだ」

「丸投げはしてあげないでよ? 可哀想だから」


 鍵奈に付き合わされると、大抵の面々は無茶をする。

 しかも、この前の『御剣織夜』という鍵奈ら三人の先輩についての情報の問い合わせもそうだ。本人は人海戦術だと言っていたが、断じて違う。

 女性は青年の淹れたコーヒーを口にしながら、これからやるべきことを頭の中で整理する。

 そして、コーヒーを飲み終わると、女性は椅子から立ち上がる。


「さて、お仕事を始めますか」


 そう告げて、青年とともに部屋を出た。



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