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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:一学年二学期・生徒会との接触
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第六十四話:生徒会役員たちのクリスマス(予定)


「もうすぐクリスマスだねぇ」

「だな」


 あれ? もしかして、こっちでもですか?


「仁科ちゃん、クリスマスはどうするのかなぁ……」


 双葉瀬先輩の呟きに、一ノ瀬先輩たちがピクリと反応する。

 そういや、最近は仕事三昧で、彼女の影響も落ち着いてきたみたいだけど、それ以前だと、生徒会(ここ)の面々って、仁科さんの取り巻きと化してたっけ。


「……何ですか?」


 横から視線を感じたから、そちらに視線で返せば、にこにこと笑みを浮かべながら、向けてきた張本人が尋ねてくる。


「桜ちゃんは何か予定あるの?」

「いえ、今のところはありません」


 いつもの面々でどうするのかは話し合ったけど、そういえば、集まる約束すらしてませんからねぇ。

 ええ、今のところは(・・・・・・)、ですが。


「そっかぁ」

「寂しい奴だな」

「そっくりそのままお返ししますよ」


 ははっ、嫌味はそのままお返ししますよ、一ノ瀬先輩。


「それはつまり、俺に喧嘩を売ってるのか?」

「いえいえ。ただ、寂しい人だと思われたくないのなら、仁科さんぐらい、あっさり誘って、一緒に過ごす許可を得てみてくださいよ」


 こいつ、と言いたげに見てきても、私は前言撤回はしません。

 まあ、目の前にある書類の山に対して、そんな余裕があれば、というのもあるけど。


「かなりの無茶を言ってくれるな。桜庭」

「好きなら、さっさと動くべきでしょ。他の人に取られても、文句は言えないと思うけど?」


 獅子堂君にそう返す。

 仮に仁科さんが生徒会役員以外を選んだとしても、それを私のせいにされても困る。

 それは、動かなかった人たちの責任だ。


「何か、かなりの説得力を感じるんだけど?」

「気のせいです」


 私の場合、そういう知り合いが居て、間近で見ていたから、そう判断し、言ったまでだ。

 断じて、経験則的なものではない。


「本当に?」

「私の相手をする前に、さっさと仕事終わらせて、仁科さんのところへ行ったらどうです?」


 もう、やだ。面倒くさいよ、この人たち。


「まあ、そうなんだけど……」


 返してきたのは双葉瀬先輩だけど、三人揃って目を逸らしたよ。


「あと、私。明日は来られませんので。先に言っておきます」

「え、男?」

「何でそうなるんですか。違います」

「バイトだよねー」

「違います」


 いや、バイトには変わりないんだろうけども、微妙に違うから。


「え、やっぱり男……」

「あんまりしつこい上に詮索するのなら、仕事を増やしますよ?」

「……ゴメンナサイ」


 素直だなぁ。謝るのが早い。

 やっぱり、目の前の書類の山だけじゃなく、あれからそんなに経ってないせいもあるのか、仕事量については逆らえないらしい。


「とにもかくにも、私は明日、来られないので、三人で頑張ってください。あと、必要となるであろうものに関しては、掲示板に一覧を貼っておくので、使う際には確認しておいてください」


 最近は、生徒会室に、ずっと居るから大丈夫だとは思うが、基本的に使っていたのは私だからね。


「明日は無理でも、明後日は大丈夫なんだよな?」

「大丈夫だけど」


 来れない明日の分を、今日一部繰り上げ、明後日は溜まった分をペースアップで捌く予定ではいる。


「だから、出来るだけ処理してるじゃん」


 そう返せば、生徒会室のドアが開く。


「桜庭さん、書類持ってきたんだけど……」

「はい、書類追加ー」


 さっさと内容確認して、『早急』『緊急』『期限指定』などの種類別のボックスに分けると、途中だった書類の続きに戻る。


「んー……獅子堂君。大変なのは分かるけど、これの計算確認して貰える?」


 書類を渡す。


「何回やっても合わないから、そっちでも合うか合わないかの確証が欲しいんだけど」

「合わなかったら?」

「その場合は、こっちでどうにかするよ」

「分かった」


 そのまま書類を預ける。

 さて、と。


「……もう五時半ですね」


 チャイムが鳴ってたような気もするが、気づかなかった。


「うわぁ。外、真っ暗だ」

「もう冬だから、暗くなるのも早いんですよね」


 さすがに、これ以上帰るのが遅くなると困るので、片付けと帰るための準備に入る。


「最終下校時刻も過ぎたから、今日はもう帰るぞ」

「分かりました」


 返事をしながら、コートを羽織って、マフラーも巻いていく。

 最近になって一気に冷えたから、油断できない。


「外も外で、それなりに冷えてるなぁ」


 双葉瀬先輩が少し寒そうに言う。


「では、一ノ瀬先輩。鍵の返却、お願いします」

「ああ」


 先輩の返事を聞いて、駐輪場に向かう。

 バイトのシフトが入ってなくて良かった。入ってたら完全に遅刻だし、サボりだ。


「桜庭」

「ん?」


 自転車を出していたら、獅子堂君がやってきた。


「途中まで一緒に行く」

「……いや、君。電車でしょ。私、見ての通り、自転車なんだけど」


 駅から出て来るところ見たことあるから、てっきり電車通学かと思っていたんだけど。


「確かに俺は電車通学だが、一駅や二駅ずれても問題ない」


 いや、大ありだろ。一駅だけでも、かなりの距離があるぞ。


「私が気になるから、駅までは一緒に行くけどさ」


 そこから先は無しで。


「……別に、駅までじゃなくても良いんだが」

「この前、不審者が出たって言ってたんだけど」

「うわぁぁぁぁ!!」


 びっくりしたぁ。


「いきなり出てこないでくださいよ。びっくりしたじゃないですか」

「ああ、ごめん」

「それで、ご用件は?」

()いて言えば、薫と一緒、かな」


 それは、つまりーー


「駅まで一緒、ってことですか」

「それは、間違ってないんだけどね。さっき言った通り、不審者が居るらしいから、送っていこうかって」

「あ、それは必要無いです」


 朝日たちが居たら、私の相手をすることになる不審者が可哀想だ、とか言ったかもしれない。


「もし、遭遇しても、返り討ちにするつもりですから」


 朝まで氷漬けとか、どーよ。いや、無いか。


「それでは、明日会えましたら、会いましょう」


 休み時間とかにね。


「ちょっ……!」


 そのまま、自転車に乗って、その場を離れる。

 気持ちは嬉しかったけど、さすがに今バレるわけにはいかないから。


「……あ、しまった。買い出し用の手として、借りれば良かった」


 やっちゃったなぁ、と私が思うまで、あと数分。



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