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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:一学年二学期・生徒会との接触
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第五十一話:波乱の文化祭⑯(『男装コンテスト』)


今回は鍵奈、朝日視点




 さすが『騎士』というべきだろうか。


 『男装コンテスト』を開始するにあたり、全女子生徒を代表して、三崎先輩が相手役をすることになったのだがーー……


「この私に、君を守らせてはもらえないだろうか?」

「ーーッツ!?」


 あの『騎士』さんが笑みを浮かべて一言言うと、黄色い歓声が上がり、言われた当人である三崎先輩は真っ赤になりながらも、進行担当のプライドか、倒れるまではいかなかった。

 ちなみに、『騎士』さんの言った台詞は、姫と騎士系のラノベの台詞でもある。


「もう、何か勝てる気がしない」

「同感です」


 『ミスコン』以上に出来レースのような気がする。この『男装コンテスト』は。


「君なら、もしかしたら対抗できるんじゃないの?」

「無理ですよ。この場の空気を一新するのって、意外と難しいんですから」


 私の隣にいた先輩にそう返す。

 しかも、『場』に影響を与える異能によるものなら、難易度は少しばかり上がる。


「このまま行けば、『騎士』(あの人)の圧勝ですよね」

「だろうね」


 騒いでいる女子生徒の中に好きな人が居る男子生徒は、悔しいのではないのだろうか。

 分かっているとはいえ、相手がキャーキャー言っているのが『女』だなんて。


「圧勝されると分かっているはいえ、何とか票を分散させたいところですね」

「そうだね。まあ、本命は彼女、対抗が君、大穴が私を含めた他の出場者、と言ったところじゃないのかな。少なくとも、事前調査だとそんな感じだったし」

「事前調査について、詳しく聞いておきたいところですが、それは後にしますよ」


 今は本番中ですし。


「そうしてくれると助かる」


 そんな私たちがこそこそ話している間にも、『男装コンテスト』は着々と進んでいく。

 私は、といえば、とりあえず思いついた策の順番を何度も脳内で確認する。

 『騎士』が異能で場を占めるのなら、こちらも異能で対抗しよう。


 ーー黒歴史が一つ増えることになるだろうけど。


 私の精神が犠牲になるが、それでも、『騎士』(この人)に票を持って行かれないようにするためには、やるしかないのだ。

 ちなみに、場を支配する異能なら、私も使えますしね。


   ☆★☆   


「鍵奈の奴、自分から黒歴史を作りに行ったか」

「というより、黒歴史の再来、ってところじゃないかなぁ。あれは後で唸るよ」


 和花たちは首を傾げているけど、中学が一緒だった私たちには分かる。

 きーちゃんが、劇の王子役になった理由。

 私たちが煽ったのもあるが、私が個人的にもう一度見たかったからである。

 何だかんだでお人好しなきーちゃんのことだから、普通に頼めば考えてくれるのだろうが、何せ中学でのことがあるから、そのせいで戸惑うことも分かっていた。


 そんなあの子が、自分から黒歴史を引っ張り出してきた。


「姫、気晴らしも兼ねて私と踊りませんか?」

「え? あ、あの、その……」


 司会の先輩ーー三崎先輩に、きーちゃんは手を差し出して尋ねる。

 こんなの、始まりにしか過ぎない。

 これから始まるのは、『場』の支配。

 『騎士』の先輩が引いた『場』を壊し、書き換える。


「えっと……それじゃ、お願いしようかな」


 出場者を平等に扱おうとして引き受けたんだろうけど、もう遅い。


「どうやら、気づいたみたいだな。あの『騎士』の人」


 『場』が壊れていくことが分かったのだろう。


「きーちゃん、男性側の動きも覚えていたからね。相手が慣れてなくとも、リードする程度には余裕だよね」


 くるくると壇上で踊る一組の男女(見た目だけ)。

 踊り終わると、異能の影響で夢心地なのか、ぽやんとした状態のまま、三崎先輩が司会者席にまで戻る。


「……相手が朝日だったら、効果が跳ね上がっていたんだろうけどな」

「京くん?」


 何を言っているんだというつもりで言い返してみれば、こちらを見ていた京くんと目が合う。


「……」

「……」

「見つめ合ってないで、さっさと投票する」


 しばらく見つめ合っていたら、どこかイラついた様子で和花が言ってくる。

 どうやら、きーちゃん以降の人の出番が終わっているらしく、それだけの時間、見つめ合っていたらしい。


「っ、ああ、うん」

「ああ」


 (やま)しいことがあるわけじゃないのに、互いにすぐ視線を逸らし、誤魔化すようにして慌てて投票する。

 そして、回収されていくのを見て、ほっと息を吐く。


「とりあえず、後は結果だけか」

「だねー」


 ふと気になって、風峰くんに目を向けてみれば、先程まできーちゃんたちがいた壇上を見つめていた。

 何か気になることでもあったのかな?



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