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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:一学年二学期・生徒会との接触
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第四十九話:波乱の文化祭⑭(思い出すのは)


今回は京、鍵奈視点




「きーちゃん、どうするんだろうね」


 先程とあまり変わらない、(帽子は無いが)王子姿の鍵奈が立つ舞台を見ながら、朝日が呟く。


「さあな。それに、異能を使うにしても、あいつの場合は難しいだろ」

「まぁねぇ」


 そもそも、あいつはこういうのは苦手な方だから、今頃は脳内フル回転で考えているのだろう。


「男装コンテストなら、迷わなかったんだろうけどね」


 それには思わず同意してしまう。

 王子姿を見慣れているせいかもしれないが、あいつが物語のお姫様のようにドレスを着たとしても、鍵奈の第一行動は守護と戦闘になるから、せっかくのドレスも無駄になってしまうのだろう。


ちゃんとした場所(・・・・・・・・)に出れば、『本物のお姫様(・・・・・・)』なのにな)


 それでも、王子や騎士であることを選ぶのだ。あいつは。

 似合う似合わないは別にしたとしても、鍵奈の場合は守られるより守る方が(さま)になるし、後方支援も向かない。得意分野は、前衛と中衛なのだから。


「みんな、ドレスなんだから、着れば良かったのに。あれじゃ、逆に目立つでしょうに」


 咲良崎が言う。


「無理だよ。きーちゃんは動きにくいとか言って、絶対に着ないから」

「二人の前でも?」

本家兼実家(あっち)でのパーティー関係ぐらいでしか見たことないよ。もちろん、中学の文化祭とかは論外だけど」


 事情だけは知っているのか、朝日の言葉に咲良崎は顔を逸らした。


「嫌なこと思い出させたのだとしたら、悪かったわ」

「別にいい。もう、過ぎたことだしな」


 そう。もう過ぎたことだ。今更、蒸し返したりしても意味がない。

 『高校入学』というのが、いろいろと切り替えるのに、ちょうど良かった。


『ーーごめっ、ん、なさ、いっ……』


 あいつがーー鍵奈が、珍しく泣きながら自身を責め続ける原因となった『あの事件』についても。


 だから、軽口たたけるようになった今では、俺も朝日も安心はしている。

 まあ、半年以上、一年未満なのに、『副会長』なんてやる羽目になったせいで、それ(・・)を筆頭としたあいつのストレス(やその原因)については触れないで()いてやるが。

 けれどーー『あの時』と同じように、一年は巡るわけで。

 刻一刻と少しずつ、冬が近づいて来ようとしていたのだけは分かっていた。


「あ、きーちゃんの番だ」


 順番も気づけば鍵奈に回ってきていたらしい。

 朝日の声に、鍵奈の方に目を向ける。

 さて、どんなアピールをしてくるのかね。あいつは。


   ☆★☆   


 ーー大丈夫。


 そう暗示させるかのように、中学よりはマシだとも言い聞かせる。

 私の前にいた子ーー仙堂舞南(せんどう まいな)ちゃんが、今はアピールしている。

 彼女は魔女の衣装だったのだが、私の印象からすると、呼び方は『さん』よりも『ちゃん』の方が似合うような子である。

 私と話していた時にもそうだったが、同学年が相手でも丁寧に話すのは、ずっと変わらないらしい。


「頑張ってください」


 アピールを終えた舞南ちゃんが、こっそりと声を掛けてくる。

 それに、小さく頷いて、一歩前に出る。

 ()()ぎず、遣りなさ過ぎず。イメージはそんなアピール。

 本来なら、勝ちに来ている人も居るから、本気でやった方がいいんだろうけど、私が本気出すと少し面倒くさいことになるからね。

 だからーー


「“幻想(ファンタジー・)世界(ワールド)”ーー“氷雪”“桜花”展開」


 空間で攻めることにした。

 雪降る中に桜の木が存在し、桜の花が開いている。

 奇妙にも見えるはずの光景だが、私の持つ本来の(・・・)能力を使った結果である。

 完全なる幻影だが、他の人たちを見ると、ほぅとしている人たちも居ることから、効果はあったのだろう。

 ちなみに、この“幻想世界”に私の姿はどこにもなかったりする。


「そろそろ、現実に戻ろうか」


 いきなり“幻想世界”を解除したせいで、一気に現実に戻ったのだろう。客席が騒がしくなる。

 本来なら、徐々に現実に戻すことも出来たけど、時間がないし、男装コンテストもある以上、魔力を消費したくなかったのだ。


『はっ……! 私は何を……こほん。これにて、出場者のアピールは全て終了。みなさん、投票をお願いします!』


 さすが司会進行役というべきか、呆然としていた三崎先輩がいち早く復活し、みんなに投票を促す。

 どこからか、少し不満げな視線もあるが無視する。

 その後、学校祭の実行委員たちに促され、舞台袖に引っ込むのだがーー


「副会長。もしかして、やっちゃったんじゃない?」


 舞南ちゃん。分かっていても、それだけは言わないでくれ。



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