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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第一章:一学年一学期・桜庭鍵奈とゆかいな仲間たち
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第四話:異変と覚悟


今回は鍵奈、京視点




「きーちゃん……」

「朝日? どうしたの?」


 微妙に元気が無いように見えたので、尋ねてみる。


「あの、ね」


 中々切り出さない朝日に首を傾げる。

 そういえば、京がいない。


「それって、京がいないのとは関係あるの?」

「それ、は……」


 今の問いは二通りに取ることができる。

 朝日の護衛としていないのか、それとも単に朝日が一人でいたのか、ということだ。


「まあ、どちらにしろ、私も一緒にいるから」

「う、うん」


 少し元気になったように見えたが、多分、朝日が言いたかったこととは違うのだろう。

 それでも、朝日の近くには誰かがいた方がいい、と少しでも人目がある教室にいさせることにした。

 これは少しでも、朝日への危険を減らすためなのだが、何か上手く行っていない気がするのは気のせいか。






「きーちゃん。あのね、実はね、視線を感じるんだ」


 そう打ち明けられたのは、昼休みに入ってからだった。

 京は京で学校に来ているものの、朝日の近くには来ない。

 お前、護衛を受けておきながら、まだ三日しか過ぎてないぞ。


「そう。こっちも色々と調べたから、報告もあったんだけど……」

「え、もう誰か分かったの?」


 切り替え早いなー……。

 まあ、自分でも思っていたことだから、「私もびっくりした」と付け加えながら頷いておく。


「それで、誰だったの!?」

「二年の先輩」


 朝日が顔を近づけてきたので、そう答える。


「で、後はまあ、対処だけなんだけど……」


 朝日にバレないように京に目を向ける。

 何があったのかは知らないが、これでは作戦を練り直す必要がありそうだ。

 本人に直接聞いた方が早い気もするけど、何だかなー。

 少し京に目を向けていれば、向こうが気づいたので、


(三日目でサボったな)


 と睨みを利かせながら視線を送る。

 ただ、うっせぇ、と言いたそうな目を返され、逸らされた。


(あー、これは本当に何かあったな)


 予想できるのは、相手から何らかの接触(アクション)があったということ。


(京の場合、ちょっとした挑発だとあまり効果はない。つまりーー)


 朝日も関わるような何か(・・)をされた、ということだ。

 軽く頭を振り、その考えを横に退ける。


「とにもかくにも、京があれだと話にならない」


 それを聞いた朝日が俯く。

 それに対し、思わず舌打ちしたくなったが何とか耐えて、京にメールを送る。


『何があった?』


 メールに気づいたらしい京が返信してくる。


『どうしてそう思う』


 様子があからさまに分かりやすいからだよ。幼馴染を嘗めんな。


『どうせ朝日関係で何かあったんでしょ』


 送信すれば、京がこちらを一瞥してきた。何だ。


『違う』


 かなりの間を置いての返事だったが、今のやり取りから推測すれば、朝日関係なのは間違いないだろう。

 でも、私に話さないのは何でだ? 朝日に話すと思っているのか?


『ふーん。なら、今日から私が朝日の護衛に回るから』


 そう送れば、京は目を見開いたかのように携帯画面を見た後、こちらを睨んできた。


 この件には関わるのはやめろ。


 そう言うかのように。


(ああ、そうか)


 それで理解した。

 京は忠告されたんだ。

 怪我をしたくなければ、私と京がこの件から退()け、と。

 そのことに思わず笑みが浮かんだ。


「面白いじゃん」


 手出し出来るものならしてみろ。こっちは全力で防いでやる。

 京に送信してやる。


『私は退かないから。朝日が困っているなら助けるし、京も困っているなら助ける。心配するのは分かるけど、これは朝日のためにも解決すべきことだよ』


 そう送り、携帯をしまう。

 後は京次第だ。


   ☆★☆   


『私は退かないから。朝日が困っているなら助けるし、京も困っているなら助ける。心配するのは分かるけど、これは朝日のためにも解決すべきことだよ』


 忠告が無駄になった。

 勘の良い鍵奈だからこそ気づくと思って返信していたのだが、あのバカは分かっていながら忠告を無視しやがった。


「ふざけんなよっ……」


 小声で言いながら、返信しようとするが、鍵奈は携帯をしまっており、仮に送ったとしても、もう携帯は開かないだろう。

 先程の内容通り、鍵奈は朝日や俺が困っているなら、何が何でも助けようとする。

 だが、それは時と場合により、危険な刃となる。

 以前、似たような経験をしたはずなのに、何故あいつはすぐに無茶をするのだろうか?


 今回の場合、事の発端は昨日の朝だった。

 昇降口で靴を履き替えるために靴箱の扉を開ければ、一通の手紙が入っていた。

 内容は分かりやすく、


『怪我をしたくなければ、彼女から離れろ』


 彼女というのは、言うまでもなく朝日のことだ。

 その時は挑発か脅しだと思い、相手にしていなかったのだが、今朝にはその考えが変わった。


『もう一度言う。彼女から離れろ。冗談ではない。もう一人にも伝えておけ』


 もう一人(・・・・)。おそらく鍵奈のことだ。

 あいつの性格を知る奴なら、確実に何かすると判断できる。

 もちろん、俺もそうだ。

 頭が良く、状況把握が早いくせに、危険な方を選ぶから周囲にいる俺たちはひやひやする。

 それでも、問題を持ってきた朝日もそうだが、俺としては鍵奈も心配なのだ。

 一番は幼馴染だから、という点が大きいが、すぐに無茶をする彼女自身が心配というのもある。朝日も似たようなことを言っていたのを聞いた覚えがある。


 そのための、メールと視線だったのに、鍵奈は無視した。

 あいつは自分が女だという自覚があるのか? という今更な質問が浮かぶが、そんなのはもうどうでもいい。


(あいつが敢えて朝日の側にいるというのなら、俺も最後まで、この件が片付くまで、付き合ってやろうじゃねーか)


 そう決めて、二人の方を見ると、何やら話していたのだが、どうやら話の内容は別の話題に移ったらしい。

 朝日は気づいてないらしいが、鍵奈は気づいているのかいないのかは分からない。


 ーー全てはお前に掛かってるんだぞ、鍵奈。


 そして、視線を逸らすと、席を立った。




二人をサポートすると決めた、何だかんだで甘い京



なお、鍵奈が分かったように、朝日も京が何かされたということには気づいていました



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