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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:一学年二学期・生徒会との接触
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第四十七話:波乱の文化祭⑫(後夜祭開始)


 見下ろせば、暗い観客席に位置するかのように並ぶ全校生徒や先生たちが居り、一方で、私が現在進行形で立つのは光り輝く照明に照らされた壇上。


『やってきました、年に一度の後夜祭! 司会進行は私、放送部所属の三崎遙(みさき はるか)と、生徒会副会長の桜庭鍵奈の二人がお送りします!』


 隣に立つ三崎遙先輩(二年)からのそんな自己紹介により、思いも寄らないーーいや、三崎先輩は分かっていたのだろうがーー歓声の中、後夜祭が開始した。

 そもそも、三崎先輩はこういうことに慣れているのか、または司会が上手いのか。それとも、みんなが彼女の司会に不服でもないのか。特にブーイングなどの不満を訴える様子はない。


『ところで、先輩。私は何故、こんな格好でこの場に居るんでしょう?』


 ちなみに、私は劇終了後に衣装を着替えようとしていたところ、笑顔の(・・・)三崎先輩に捕まり、そのままこの場に連れてこられたのだ。

 なお、私たちの劇を遮ってくれた空き缶の主は、劇終了と同時にちゃんと捕まえた後、食い逃げ犯の時と同様に、先生たちに引き渡したというオチ付き。


『そんなの、この後の男装コンテストの司会を頼みたいからだよ。みんなも、この子に似合ってるのに、活かさないのは勿体ないとは思わなーい?』


 三崎先輩がみんなに振れば、「そうだー」「似合ってるよー!」「王子ー!」なんて声が聞こえてくる。

 ……うん、うん、何かさ。


『……酷いですね、先輩。私、見世物になった覚えはないんですが』

『え、不服だった!?』


 ぎょっとしたようなリアクションをする三崎先輩だけど、目はそんなに驚いてるようにも見えませんよ?


「まあ、双葉瀬君たちからも頼まれた、っていうのもあるけどね」


 そうマイクとの間に手を差し込んで、三崎先輩がこっそりと告げる。

 それよりもーー


たちからも(・・・・・)?」


 『たちから』ではなく、『たちからも』である。

 つか、先輩たち。やっぱり、押しつけるつもりだったのか。

 そして、御剣先輩の言っていたことが当たる可能性が、現在進行形で上昇中だし。


「ま、私が話してみたかっただけというのもあるけど」

「……」


 三崎先輩はにこにこと笑顔で言うが、嫌な笑顔じゃない。


『それでは、最初のコーナーへと参りましょう!』


 三崎先輩がそう言った後、吹奏楽部の音楽や有志による漫才などが披露されていく。


『どう? 高校初めての後夜祭は』

『やっぱり、凄いですね。勢いとか、中学の時とは違うと思います』


 まあ、中学の時とは、いろいろと(・・・・・)違う。


『それでは、次のコーナーへと参りましょう! 男子諸君待たせたな! ミスコン開幕だぁっ!』

「ワァァァァッ!!!!」


 三崎先輩の言葉に、男子たちから歓声が上がる。

 多くの女子たちが冷めた目を向けているが……うん。君たち、他人(ひと)のこと言えないんじゃないかな。


『今からこの場に出てくるのは、立候補者と推薦された方たちです。彼女たちを見て、投票の方お願いいたします。……え、追加?』


 何やら舞台袖から渡された紙を開きつつ、三崎先輩が不思議そうに内容を確認する。

 というか、嫌な予感がする。


『何と、緊急参加というより、緊急推薦と言うべきでしょうか。我らが副会長殿にもミスコンに参加してもらうことになりました!』

「ワァァァァッ!!!!」

『はいぃぃぃぃっ!!!?』


 歓声が上がってるところ悪いが、何だこれは。あれか。昼間に私が拒否したから、仕返しか。


「……そうかそうか。仕返しかぁ」


 だったら、私にも考えがある。


『さ、さて、どういたしますか? 副会長?』

『え、引き受けませんけど?』

「ブーブー!」


 顔をやや引きつらせながらも尋ねる三崎先輩に返せば、観客席からブーイングが飛んでくる。


『おやおや。皆さんはどこか不満()な様子。どうします? 副会長』

『ぐっ……まあ良いでしょう! 受けて立ちます!』


 私がやけっぱちにそう言ったことで、ブーイングから転じて、さらに歓声が上がるのだがーー


(待っててくださいよ。先輩方)


 学園祭終了後に、仁科さんに会えないぐらいの書類仕事を用意しておきますから。



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