第三話:『異能』
「さて、どうしたもんかね」
溜め息を吐く。
あれからすでに二日過ぎたのだが、たった二日で相手のことをよく調べられたことに自分でも驚きだ。
そして、あの場で朝日たちには調べると言ったものの、どう報告するべきか。
不用意に手を出せば、こちらが危ないが、かといって何もしなければ、朝日たちも危ない。
「むー……」
唸りながら考える。
相手がナイフを出してきた理由にも、大体の予想はついているといいながら、後回しにしていたが、そろそろ対策も考えないといけない。
「本当に、どうしたもんかね」
これ以上考えても無意味といわんばかりに、一時的に考えるのを止めた。
☆★☆
さて、この世界には『異能』と呼ばれる能力が存在する。
それは、魔法のようなものであり、魔法ではないもの。
この世界に住むほとんどの人が『異能』を扱え、各々必ず何かしらの能力を持っている。
『異能』にはいくつか種類がある。
物を実体化させて攻撃できる異能を『物理系』。
サイコキネシスなど、魔法のように見える異能を『特殊系』。
術者の周りに、良くも悪くも効果を与える異能を『周辺及び範囲干渉系』。
言葉通り、雨や嵐など自然現象を操る異能を『自然操作系』。
機器など、自然現象以外を操る異能を『操作系』。
そして、特異異能として扱われる上記五つとは別に、日常生活で使用する異能を『生活系』という。
以上、六つが大まかに分けられた異能の種類である。
もちろん、私たちも『異能』を持っている。
私と朝日の特異異能は『特殊系』の異能で、京の特異異能は『操作系』の異能である。
さて、話は一度戻るが、私が唸っていたのは、相手の持つ『特異異能』が原因だったりする。
さっきの説明で当てはめるなら、相手の特異異能は『物理系』であり、朝日に向けて突然ナイフを取り出したのも、特異異能によるものだと、私は仮定している。
基本、特異異能ーーメインで扱う異能は一人につき一つだが、時折一人でいくつもの異能を扱う者がいるのも事実である。
だが、今回の場合、おそらく相手の特異異能は一つなのだろう。
「名前も学年もクラスも異能も分かってるのに、手が出せないなんて」
こちらがあちらの情報を得ているのに、策がないとは。
(いや、完全に無いわけじゃないけど)
そう、無策というわけではない。
私と朝日、京の異能を使うタイミングさえ間違えなければ、何とか出来る……はず。
「とにもかくにも、伝えないとダメだよねぇ」
そう言いながら、天井を見て唸る。
朝日たちにはああ言ったが、この件を解決するには、やはり朝日に囮になってもらわなくてはいけない、という作戦以外思いつかない。
「むー……」
彼女を傷つけない方法は、彼女が傷つくのを未然に防ぐことだが、一度「囮になるな」と言ってしまったので、今更「囮になってくれ」とは言えない。
結局、その日は唸ってばかりだったので、寝てしまった。
そしてーー
「……こう来たか」
私の知らないところで、異変は起きていた。
最後の呟きの主は次回分かります
異能の説明回でしたが、以前の説明であった(鍵奈による)朝日の『敵意の無い物理系に弱い』というのも、朝日が持つ異能に関係しています