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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:一学年二学期・生徒会との接触
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第三十話:久しぶりに


 問題としていた生徒会役員選挙から一週間が経った。


 ダダダダダ。


「桜庭、電卓はもう少し静かに押しなよ。壊れるよ?」


 元役員なのにも関わらず、手伝いに来てくれている岩垣先輩から、そう注意される。


「すみません。今日中に何とか終わらせたいので」


 どこをどう(いじ)っていたのか、合わないところがいくつか発覚し、その確認をするために、以前の関係書類を見直ししている最中である。


「つか、本当に他の役員たち、いないんだな」


 そう言うのは、私と同じ一年生でありながら、前会計である八神先輩の役員権限により選ばれた現会計、獅子堂薫(ししどう かおる)君である。


「そうだよ。だから、受験生であるはずの岩垣先輩たちまで手伝いに来てくれてるの」


 ちなみに、現会長である一ノ瀬先輩を筆頭とした役員たちは、相も変わらず仁科さんの元にいる。

 これでも、一週間は持った方なのだが、唸りながら仕事をやられるこっちとしては、ストレスの要因でしかなかった。


「呼びに行ってきた方がいいんじゃないのか?」

「もし呼びに行くんだったら、それ全部終わらせてからにして。ただでさえ人手が足りないのに、君まで捕まったら、私よりも先輩たちが過労死しかねないから」


 計算が必要なものはある程度終了したし、確認作業も終わりが見えてきたから、副会長として処理しなくてはならない書類にも目を通し始める。

 なお、会長が処理しなくてはならない書類は岩垣先輩が、元庶務である有栖川先輩には書類分けと書記の書類系を頼んである。


「にしても、だ。先輩たちが行くってことは、仁科ってそんなに可愛いのか?」

「それ、ほとんど関係ないから。あれはあの子の持つ異能が原因なだけ」


 おそらく、彼女の内面を見ている人は、少ないだろう。

 まあ関わろうとすること自体、諦めている私が言うことじゃないけど。


「とりあえず、あの面々を呼びに行くなら、桜庭しかいないだろうな。仁科の件を考えれば、だが」

「私、みんなの前で文化祭と体育祭を盛り上げるって、約束したんですけど?」


 だが、そんなのお構いなしに、岩垣先輩は言う。


「桜庭なら、問題ないだろ」


 それに対し、溜まり続けていたストレスの影響か、私も思わず叫んでしまった。


「っ、無責任!」


   ☆★☆   


「あ~……」


 やった。やってしまった。


『とりあえず、お前は少し休んでこい』


 と有栖川先輩に言われ、生徒会室を出てきたのだが(追い出されたとも言う)、若干、無理やり休憩をもぎ取った感がある。

 うん、本来ならもう役員ではない岩垣先輩たちが休憩するべきなんだけどね。


「大丈夫か?」

「あれ、どうしたの?」

「通りかかったら見えたからな」


 いきなり声を掛けられたので、誰かと思えば、風峰君でした。


「そっか。もう帰ったかと思ってたんだけど、まだいたんだね」

「ああ。それに最近、宮森たちとも話してないだろ」

「仕方ないよ。忙しくて話せなくなることは覚悟してたし」


 そもそも、これは誰かさんたちが仕事しないせいだ。

 これも、信頼を取り戻す小さな小さな機会なのに、あの人たちは無為にした。せっかく、みんながくれた機会(チャンス)なのに。


「風峰君、いつでもいいからさ。朝日たちに伝言、頼まれてくれない?」


 隣に座った風峰君からは視線だけ向けられたけど、それを肯定と受け取ろう。


「近いうちに話を聞いてくれ、って」


 いくら同じ苦労(・・・・)をしているとはいえ、さすがにキツいものはキツいのだ。

 どこかで吐き出さないと、本当に駄目になりそうだから。


「だから、伝言。お願いします」


 頭下げたら、溜め息が聞こえた。


「その程度なら、自分で言えよ」

「いや、だって、クラスの出し物の準備もあるでしょ?」


 だから、そのついででもと思い、頼んだのだが。


「とにかく、だ。それぐらい自分で伝えろ。そして、そのついでに話をしてこい」


 確かに、間に風峰君を挟むよりは早いんだろうけどさ。


「……うん、そうだね。まあいいんだけどさ」

「何だよ」


 風峰君が不思議そうな顔をしたけど、言うのは止めた。


「そろそろ戻るよ。大変だろうし」

「そうか」


 それじゃあ、と分かれようとすればーー……


「何か手伝うことがあれば言えよ? 出きる範囲で手伝ってやるから」


 そう言われて一瞬驚いたけど、「ありがとう」と笑顔付きで返しておいた。

 疲れたような笑顔にならないように気をつけてはいたけど、何も返してこないってことは大丈夫だったのか、気を使ってくれたのかどうかまでは分からない。

 そしてーー





「普段から、ああやって笑ってればいいのにな」


 私と分かれた後の風峰君が、どこかに目を向けながらそう言っていたなんて、私は知らない。



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