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七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:一学年二学期・生徒会との接触
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第二十八話:生徒会役員選挙(本番直前の舞台裏)


今回は鍵奈視点、三人称




「私、選挙演説があるなんて聞いてないんですが」

「うん、君が聞いてこなかったから、こっちも言わなかっただけだし」


 自業自得だね、と語尾に星マークが付くような言い方とともに、いやに良い笑顔で岩垣先輩からそう言われた。


 さて、今私たちがいるのは、講堂の舞台袖である。

 何故そんな所にいるのかを問われれば、生徒会役員候補者たちによる選挙演説のためである。

 いや、生徒会役員候補者たちによる、選挙演説自体があるのは知ってましたよ?

 でもね。推薦枠にも演説があることについては、事前に教えてほしかった。

 ……あ、少しイラッとしてきた。


「そうですけどぉ、そうですけどぉ!!」


 一体、どうしろって言うんだ!? こちとら(なん)にも、挨拶文すら考えてねぇんだよ!

 確かに聞かなかった私にも非はあるし、仮に挨拶文があったとしても、今の私の場合は名前以外の挨拶なんて、何も無いよ!

 何コレ、何この無理ゲー。


「大丈夫だって。桜庭のカリスマ性なら」

「うっわ、それ中学の時も言われた言葉! 絶対無理。やっぱり引き受けるんじゃなかった!!」


 私にカリスマ性が本当にあると思っているのか、この人は。


「なぁ、お前らーー」

「大丈夫だって。だから落ち着け」

「何が大丈夫なんですか! 挨拶すら決まってないのに人前に出ろとか何その拷問!」


 役員は引き受けたけど、こっちは中学の時のせいであまり集団を相手にしたくない上に、目立つ行動は避けたいんだよ!


「いい加減に落ち着け」


 スパーンと何かで頭を(はた)かれた。


「あれ、有栖川(アリス)先輩?」

「ようやく落ち着いたか……」


 溜め息混じりに言う有栖川先輩。

 岩垣先輩は、というと、頭がくらくらしているのか、ゆらゆらと揺れていた。


「まあ、何だ。苦手かもしれんが、焦らずに少しずつやればいい。隣には推薦者であるこいつも立つし、何かあればフォローしてもらえ」


 岩垣先輩を指しながら、有栖川先輩が言う。


(そうだ。そうだよね)


 隣、というか近くには岩垣先輩もいる。

 それに、今更引き下がれない。


「……ありがとうございます、有栖川先輩」

「うん?」


 ようやく揺れが治まってきたのか、何かあった? と聞きたげな岩垣先輩に、首を横に振る。


「いえ、ただ外面(そとづら)モードで行けば問題ないかと」

「うん、以前それで反感凄かったし、友達に変なイメージ持たれても、こっちは責任負わないからね?」

「分かってます」


 というか……


「さっきから先輩、辛辣ですね。やっぱり私、引き返しましょうか」

「それはマジ止めて。学校いるのにドタキャンとかマジ笑えないから」

「しませんよ。というか冗談です」


 冗談で言ってみれば、真面目に止めてきたので、冗談だと打ち明けてみる。


「……あのさ。桜庭って、冗談と本気の時の顔の違いが分からないときあるから、時折困るんだけど」


 切実に言われた。


「さすがに、それはどうにもならないので……」

「分かってるよ」


 本気で受け取るな、と岩垣先輩に言われた。

 はい、すみません。


「あと、派手なパフォーマンスなんて、考えなくていいからな?」

「しませんよ。私は先輩方の期待を裏切るような真似だけは、するつもりありませんから」


 その後、本番が始まり、私たちは舞台へと上がった。


(いざ、勝負ーー)


   ☆★☆   


「何というか、予想通りというか。会長らしいよね」


 現生徒会書記、双葉瀬奈月は、にこにこと笑みを浮かべていた。

 現在、面々がいるのは講堂の舞台袖であり、鍵奈たちがいる場所とは逆に位置し、双方からは互いの姿が見えるようになっている。


「何で(うらら)じゃなくて、あんな奴をーー」

「それは言っちゃ駄目だって。それに、僕たちにとっての仁科ちゃんのように、会長にとってのあの子は特別なんだよ。きっと」


 信じられなさそうな二年生であり現会計、八神真琴(やがみ まこと)の言葉に、双葉瀬が自分たちのいる場所とは反対となる舞台袖ーー鍵奈たちがいる方を一瞥し、そうフォローする。


「それに、仕事できるし」

「……」

「……」


 それについては、現副会長である一ノ瀬律も八神とともに黙り込む。

 というか、二人としては触れてほしくもなかったのだが、彼女のしたことは、否定しようにも否定できないのだ。


「それにしても、有栖川(アリス)先輩まであっち側なのは意外だ」

「でも、仁科ちゃんの元には、ほとんど来てなかったよね」


 一ノ瀬と双葉瀬は、鍵奈と岩垣の対応に頭を抱えている有栖川へと目を向ける。

 彼女を選びながらも、それでも贔屓しそうにない岩垣はともかく、有栖川の場合は一ノ瀬たちから見ても意外だった。


「でもまあ、きっと女子たちが認めないだろうから、結局はこのままだろうがな」


 どこか自信満々の八神に、双葉瀬はそれはどうかな? とでも言いたげにしながらも、一ノ瀬とともにライトの当たる演壇のある場所へと出て行くのだった。



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