表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七鍵~姫と七つの鍵~  作者: 夕闇 夜桜
第二章:一学年二学期・生徒会との接触
28/116

第二十七話:『生徒会役員権限』について


前回、『権限』について、何話か後に説明すると言いましたが、予定を変更して今回説明させてもらいます




 一限目の授業終了と同時に、朝よりも多くの野次馬に押し掛けられた。

 そして、その理由も分かりきっていた。


「本当に生徒会に入るの?」

「止めた方がいいよ? 役員のファンに何されるか分かんないし」


 と、クラスメイトたちから言われた。


 そう、話や野次馬の原因は、生徒会長による私への指名である。


 というか、ファンって何だ。まあ、あれだけ目立つ連中なんだから、中にはそういう人たちがいてもおかしくはないけど。


「そりゃあ、分かってるんだけどね……」


 しかし、もうすでに引き受けてしまった。


「きーちゃん、もしかしなくても引き受けちゃったんだね」


 さすが幼馴染(朝日)、私のことを分かってらっしゃる。

 京は京で呆れた目を向けてきていたし、ちゃっかり来ていた御剣先輩は心配そうにしていた。


「だって、知り合い云々以前に、『生徒会役員権限』使われたんだよ? 断れるわけないでしょうが」


 『生徒会役員権限』。

 呼んで次の如く、生徒会役員が持つ権限であり、それぞれの使用回数は生徒会長が会長のみ(・・・・)使える『役員推薦枠』とその他の二回、副会長と書記、会計と庶務はそれぞれ一回使うことが出来る。

 使用できるのは生徒会役員である会長、副会長、書記、会計、庶務として選ばれたときからであり、それぞれに『権限』が与えられる。

 そして、『権限』の使用方法は本人に委ねられ、無茶な内容でなければ執行される。

 その上、生徒会長は自身の持つ『役員推薦枠』を使い、私を指名したように『役員指名』も可能となる(だが、指名されて就いた役員()は権限が使えない)。


「にしても、よく知ってたな。『生徒会役員権限』なんて」

「そこについては姉さんから説明されたからね。先輩には上級生から当たれって言ったけど、消去法で私になったって、返された」


 京の問いにそう返す。

 『権限』については、鍵依姉(本人)から直接聞いたから、嘘は言ってないはずだ。


『鍵奈ぁ~、理央が怖いよ~。『権限』振りかざそうとしてくるんだよ?』


 と愚痴っぽいことを聞かされ、


『理央? 『権限』?』


 と首を傾げれば、鍵依姉が教えてくれた。

 理央というのは鍵依姉が会長をしていたときの副会長(同学年)で、今でも連絡を取るほどの関係らしい。ちなみに男。

 『権限』については、先程の説明通りに説明された。

 それを聞いたとき、半分聞き流していたとはいえ、面倒くさいシステム、と思ったのは事実だ。


「でもまあ、そっかぁ。『権限』が執行されてるなら、私たちが何を言っても無理、ってなるのか」


 クラスメイトの女子が納得したように頷く。


「でも、一番の問題は……」

「ファン、か」


 ファンたちの間に、どういうルールがあるのかは分からないが、その中に過激派というのがいるなら厄介だ。


「過激派がいるとすれば、厄介なことになるわね」

「厄介なことになるんじゃなくて、なるのよ」


 和花の言葉に、私はそう返す。

 男の中に女が一人とか、自分に自信があるか、仁科さんみたいに異能が原因じゃない限り、良い気分ではないし、見てる方も良い気はしない。


「煽りに煽っといて、いじめとか最悪なパターンに発展した場合、状況次第では助けられない場合もあるからな?」

「安心しなさい。大事になる前に潰すから」

「冗談に聞こえないから、怖いんだよ。お前は」


 京が私とやや間を空けて言えば、


「まあ、マジになったきーちゃんに勝てる人なんて、そんなにいないからねぇ」


 朝日もそう言ってきた。

 そんなときだった。


「桜庭……さんはいるかしら?」


 どこか偉そうな、それらしい雰囲気を持つ来訪者に、私は首を傾げる。

 はっきり言って、知らない人だが、ファンの一人だろうか? それに、同学年でも見覚えが無いから、上級生なのだろう。


「あ、あの人。きーちゃんの名前が読めないパターンの人だ」

「というか、読める人の方が少ないわよ」


 読み仮名を打つか、自己紹介しない限り、一度で読まれる確率は少ない。

 そうこうしているうちに、来訪者がこっちへ来た。


「貴女が桜庭……」

「鍵奈です。鍵に奈と書いて、『きいな』って読むんです」


 とりあえず、恥をかかせる前にこちらから名乗る。

 それを聞いて、相手は一度咳払いすると、改めまして、と言い直してくる。


「こほん、桜庭鍵奈さん。単刀直入に尋ねるわ。貴女、生徒会役員になるつもり?」

「はい、生徒会長命令なので」


 間髪入れずにそう返す。

 だが、相手はそれが気に入らなかったらしい。


「だからってーー」

「登校早々に生徒会室に行って、話を聞きましたので」

「あ。だから、きーちゃん。いつもより遅かったんだ」


 相手を遮って告げた私の言葉に、朝日が納得したように頷く。


「で、理由聞いた上で、引き受けました」


 笑顔で言えば、相手は不機嫌そうな顔をする。


「それと私、先輩の名前を知らない上に、名乗ってもらってもいないので、自己紹介をお願いしてよろしいですか?」


 事実、名乗ってもらってないため、目の前のこの人(先輩)がどういう人なのかが分からない。

 ちなみに、今言ったことに対して、『こっちが名乗ったんだから、そっちも名乗れ』という空気も発してみた。


「っ、香宮真凛(かみや まりん)よ」


 空気に圧されたのか、渋々そう名乗る香宮先輩。

 って、香宮……?


「香宮って、あの香宮?」

「知ってるの?」


 首を傾げて尋ねる和花に、面々が顔を向ける。


「ああ、ちょっとね……」


 和花の知り合いということは、どうせ錠前時関係なのだろう。

 私の知り合いにも、似たような名字の人もいるし。


「私は私の名前よりも、貴女が役員を引き受けたことについて、聞きたいのだけど?」

「名前よりって……引き受けた件については、そのまんま言葉通り、引き受けましたけど?」


 だからっ、と同じことを言いそうな香宮先輩が全てを言う前に、私は告げる。


「それに、生徒会長の持つ『役員推薦枠』まで使われたら、文句は言えませんから」


 岩垣先輩が使ったのは『権限』であり、『役員推薦枠』を使ったわけじゃないから、私が断ろうと思えば、断れたのだ。

 でも、岩垣先輩は生徒会長としての『役員推薦枠』を私には使わなかった。恨まれる覚悟までして、『権限』執行だけで抑えたのだ。

 もしかしたら、単に先輩が忘れてただけかもしれないが、『役員推薦枠』を使わないことで、その隙を逃げ道として用意しておいてくれたのかもしれないし、私が引き受けないことを前提にしながらも、最終手段的なものとして使おうとしていたのかもしれない。


(それでも使おうとする気配を、少なくとも私は感じなかった)


 まるで『役員推薦枠』を使わずとも、私が引き受けることを知っていたかのように。


(……って、あれ? まさか()められた?)


 朝は時間の少なさに微妙に焦っていたから、あっさりと返事しちゃったけど……うわぁ、もしかして、やっちゃったのか? ヤバい。やっちゃった可能性が……うわぁ。


「っ、」


 けど、今の言い方からすれば、『役員推薦枠』を使われたと勘違いされても仕方ないのだろう。

 香宮先輩は悔しそうな顔をすると、「私は認めないんだからっ!」と言いながら、教室から出て行った。


「きーちゃん、『役員推薦枠』使われたの?」

「ん? 使われてないよ? 使われたのは『権限』だけだし」

「紛らわしい言い方をするなよ……」


 朝日の問いに答えれば、京が呆れた目を向けてくる。


「ごめんごめん。でも、中学の時(まえ)よりは酷いことにはならないと思って、引き受けたわけだし」


 そう言えば、朝日と京は顔を見合わせ、溜め息を吐いた。


「そういう問題じゃないと思うけど?」

「朝日以上にお人好しだもんな、お前」


 心配そうな朝日に対し、京の呆れた目は変わらない。


「まあ、いざとなったら、私たちがサポートすれば問題ないでしょ」

「あっさり、そんなこと言うなよ……」


 和花の言葉に、京は頭まで抱えてしまった。


「で、本音は?」

「ん?」

「あんたのことだから、何らかの条件でも出したんじゃないの?」

「出してないよ。というか、私のこと一体何だと思ってんのよ……」


 和花の言葉に思わずそう返す。

 それに、毎回毎回そんなことはしないし、状況次第だ。


「でも、何らかの目的があって、引き受けたわけでしょ?」

「まさか、役員たちと知り合いたいとか?」

「いや、それはないから」


 和花に被せるように、聞いてきたクラスメイトにありえないから、とほぼ無表情で返す。

 というか、関わりたくない。


「あ、そうなんだ……」


 さすがに、私が本気で近寄りたくないと思っていることが伝わったらしい。


「まあ、やられたらやられた分、倍にして仕返しするつもりではいるけどね」


 うふふ、と笑みを浮かべれば、話していた面々と微妙に間を空けられた。


「うん。分かりやすい反応、ありがとう」

「あんたが笑うと、どうも悪い予感しかしないのよ」


 ……それは、どっちの意味で言ってるのだろうか?

 とにもかくにも、『副会長』という椅子を引き受けた以上は、職務を全うするつもりだ。


(そしてーー中学と同じことは、二度と起こさない)


 選んでくれた岩垣先輩(たち)のためにもーー……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ