第十七話:夏期球技大会 in 林間・臨海学校
さて、荷物を置いた後は、全員体操着に着替えて、体育館のような場所に集合である。
球技大会というぐらいだから、気になるその種目だが、それも出発前に決めてあり、女子はバレーボールとテニスの二種類、男子はバスケットボールとサッカーの二種類で計四種類。
私と朝日はバレーだけど、真衣と霞はテニスを選んでおり、今はコートの方にいるはずだ。
「そろそろ真衣ちゃんたちの方に行く?」
「そうだね」
トーナメント式なバレーだけど、私たちの試合はまだだし、時間的に真衣たちの試合が始まりそうなので、応援に行くことにした。
「あ、ちょうど始まるみたい」
「先攻は相手の子か」
コートに着けば、相手の子がサーブを打ち、試合が始まった。
さて、試合は順調に進んでいるのだが、そんな中で思うのが、二年生は修学旅行前なのに体力使っていいのか、という疑問だが、どうやら問題ないらしく、隣のコートで二年生らしき先輩方が楽しんでいた。
あと、途中途中で聞こえてくる黄色い歓声は聞こえない振りをして、真衣が勝つように応援しようか。
☆★☆
真衣たちの試合が終わりそうになるも、私たちの試合が始まる時間が近いので、場所を移る。
「あーあ、最後まで見たかったなぁ」
「仕方ないよ。私たちがいなかったら、試合できないし」
とは言うものの、「分かってる。分かってるけど……」と、やはり朝日はご不満らしい。
「それなら、互いの勝利報告のために、頑張ろうよ」
「そうだね」
さあ、今度は私たちの番だ。
「ねぇ、一回確認するけど、一セット何点先取で勝利だっけ?」
互いに試合に集中しすぎたせいで、どう見ても何点かオーバーしている点数表。
おかげで地味に注目を集めていた。
くそっ、デュースが適用されてるせいで、また二点差を付けなくてはいけなくなったし……。
「と、とにもかくにも、あと一点だ」
頷くチームメイトたち。
「次のサーブ、誰? ……って、私か」
皆さん、その「なん、だと……」と言いたげな顔は何でしょう。
普通にローテーションから行けば、次にサーブを打つのは私だって、見てれば分かるよね?
「げっ、サーブ打つの桜庭か」
「うわぁ……」
おい、そこの男子生徒、聞こえてるぞ。
というか、私の打つボールに、どんなイメージを持ってるんだ。
「きーちゃん、ノー剛速球ね」
朝日がそう言ってくるけど、もちろん分かってますよ。
軽く息を吐き、一度ボールをバウンドさせて、サーブを打てば、ボールはネットを越えて、相手チームへと向かっていく。
そこからラリーは何度続いたのだろう。
「負けちゃったね」
「でも、あれは仕方ないから、誰も責められない」
何とも微妙な位置にボールが落ち掛け、結局誰も拾えず、相手チームに加点という判定が下った。
「まさか、あの後負けるなんて思わないよね。普通」
「で、でも二点差だから」
朝日が必死にフォローしたり、慰めたりしてくれたので、何とか立ち直ったけど、やはり負けるっていうのは悔しい。
なお、相手チームこと三年生の先輩方は、この後決勝戦に出るのだが、この時の私たちまだ知らない。
☆★☆
さて、昼食製作第二ラウンドである。
しかも献立は、みんな大好きカレーライスとバーベキューである。
「げっ、飯が微妙に減った」
「マジか」
「何やってんだよー」
何てこったい。昼食がカレーライスな上に、ライスの量が微妙に足りないのか。
「カレーはー?」
「あと少し煮込めば完成ー」
しかも、カレーライスのカレーは完成間近。
「……何これ」
「きーちゃん、現実逃避してないでヘルプぅぅ!!」
引っくり返しても引っくり返しても、食べる奴らが多すぎて、追いつかないらしい。
「ん、りょーかい」
と思っていたら、京と御剣先輩もいた。
いる理由を聞けば、大変そうな所を手伝えという、担任からのお達しが出て、そこで見て回っていれば、朝日と京がバーベキュー相手に四苦八苦しているのを見つけた、ということらしい。
「何というか、ご苦労様です」
とりあえず、労っておく。
「あと、ご飯の一部が駄目になったらしいから」
「はぁっ!?」
ご飯の件を伝えれば、そう返される。
うん、その反応が普通だよね。
「だから、うちのクラスのご飯は微妙に少なめ。あ、真衣と霞、木戸君たちは、少なくなったご飯の穴埋めのために、カレー側を手伝ってるから」
「木下たちはともかく、何それ、理不尽じゃね?」
京の気持ちは分からないでもないが、こればかりは仕方ない。
「その代わり、私がこっちを手伝うから、機嫌直す」
それを聞いた京が「俺は子供じゃねーよ」と言ってきたので、「はいはい、分かってますよー」と適当に返せば、疑いの眼差しを向けられた。
「それじゃ、きーちゃんも来たことだし、焼けるだけ焼いちゃいますか」
朝日がトングをカチリ、と鳴らしてそう告げた。
カレーの匂いと肉の焼ける匂いが、その場を漂う。
私たちの林間及び臨海学校はまだ終わらない。




