第十六話:林間学校二日目、臨海学校一日目
目の前にある光景を見て、私はーーいや、私たちは、昨日車内で話していた今年の二年生のことをバカにしたり、笑っていられないことを思い知った。
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さて、林間学校二日目の朝である。
先程ーー起床時にちょっとした騒動(?)があったけど、今ではそれも片付き、私たちは施設の食堂で朝食を食べている。
朝食はごはん系(味噌汁や目玉焼きor焼き魚付き)かパン系(ヨーグルトやプリンなどのデザート付き)の二種類から選べ、私は今回ごはん系(で目玉焼き)にした。
途中で京たちに会ったけど、ぐったりとした京を木戸君を始めとした同室の面々が引っ張ってきていた。
「桜庭、引っ張ってきたぞ」
「うん、見れば分かる。わざわざごめんね」
彼らに朝から労力を使わせたことを謝る。
あと、見ていて思ったけど、京が警察に連行される犯人みたいだ。……言わないけど。
「いや、気にするな」
「でもなぁ……」
何か納得できない……そうだ。
「じゃあ、これは借りということにしておいて」
本来、私がやらないといけないことを木戸君たちに任せたのは事実であり、等価交換ではないが、彼らはわざわざ私の頼みを聞いてくれたのだ。無理が無ければ、彼らの要求を聞いてもいいだろう。
「いいのか?」
「無理な要求以外は、ね」
「よし、なら、俺とデーー」
「木戸っちは、物事を少し考えてから、言おうか?」
許可した早々から借りを使おうとする木戸君に、真衣が朝から何を言う気だふざけんな、と言わんばかりに横から口を挟む。
「それに、早く取りに行かないと、選択肢が選択する前に無くなるよ?」
つまり、残ったものを食べることになる、ということですね? 真衣さん。
「げっ、それは困る」
そのまま朝食を取りに行く男子たち。
「鍵奈も。あいつら、何を言い出すのか分からないんだから」
「ん、心配してくれてありがとう」
そう言えば、早く食べちゃおうよ、と真衣は手を動かす。
そんな真衣を、霞が微笑みながら見ていたけど、どうしたんだろう?
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ザァー……ザァー……と、波が行き来を繰り返す。
「……」
それを呆然としながらも見る私たち一年。
現在、私たちは海にいる。
林間学校なのに、何故、海なのか。それはこっちが聞きたい。出発前の揉め事は一体、何だったのか。
上級生たちに耳を傾ければ、
「あー、こうなったか」
「ほら、一年生。林間学校なのに海に来たから、戸惑っちゃってる」
そんな会話が聞こえてきた。
何だ? もしかして、去年やその前もあったのか? 確かに、当時鍵依姉がぐったりしてたのは覚えているけど……って、まあ今は気にしていてもキリがないので、結局は慣れなのだと、そう納得しておく。
ちなみに、補足するとここに来るまで、途中は歩きだった。ええ、持ってきた荷物を全て持って、頑張って歩きましたよ。
さらに補足するなら、昼はカレーとバーベキューとのこと。この人数な上に食べ盛りが大勢いるのだ。器材、足りるのか……?
「それでは、解散!」
それを聞いた全員が一斉に散らばる(といっても、荷物を次の宿に置きに行くのが大半だが)。
「私たち、どうする?」
「そうだね……」
とはいえ、私たちも荷物を置いた後は、球技大会の用意とこれまた自分たちで昼食を用意しなくてはいけない。
……ヤバい、昨日の出来事と疲労が一瞬にして蘇ってきた。
「とりあえず、私たちも荷物置きに行きますか」
「だね」
だが、そんなのは後回し、と言わんばかりに私たちも宿に荷物を置きに行くのだった。
ただーー
「重そうだし、俺が持ってやろう」
「え、いや、別にそんなに重くはないので……」
「遠慮することはないよ」
荷物を宿に置きに行く途中で、一人の女子生徒が数人の男子生徒たちに囲まれているのが目に入った。
特に険悪な雰囲気ではないので、助けなかったけど……彼女、大丈夫だったのかな……?




